6月下旬のデーゲームながらも気温は20.1℃。会場となった札幌厚別公園競技場特有の風が吹いていたこともあって、涼しさを通り越して若干の肌寒さも感じさせた。試合開始時、メインスタンドにある記者席へと上がる際に筆者はウインドブレーカーを着込んだほどだ。周囲にも薄手のコートを来た記者が何人もいた。「試合をするには非常に良いコンディションだった」と札幌の都倉賢も振り返っている。
そうした好条件も手伝って、試合は90分を通してスピード感のある展開が繰り広げられた。中盤の守備が互いに若干ルーズだったことも手伝って、スムーズに縦にボールが動いていく。非常に躍動感のあるゲームだったと評していいだろう。そして、互いがアグレッシブに相手ゴールへと迫るそのスピード感を生み出していたのは天候だけではない。富山は8連敗中。札幌はここ10試合で僅か1勝にとどまっている中でのホームゲームという危機感が、双方の足を積極的に前へと向かわせたのではないだろうか。
そしていきなり試合を総括してしまえば、最終スコアこそ2−1でホームの札幌が上回ったものの、内容面では、特に後半などはアウェイの富山が圧倒していた。
前半はほぼ互角の展開。シュート数こそ札幌が大きく上回ったが、どちらかが絶対的な主導権を得るでもなく、どっちつかずの攻防が続いたまま時計の針は進んでいった。そうしたなかで29分、富山が試合開始時から露呈していたGKとDFラインとの連係の悪さをついて札幌の荒野拓馬がシュートを蹴り込むと、35分には砂川誠が見事な直接FKを叩き込んで追加点を挙げてみせた。
「1失点目もそうでしたが、相手が背後を狙ってきているものに対して、防いだところがアクシデントになって相手にころがってしまって失点してしまっているのが今シーズン」。富山の安間貴義監督がそう振り返ったように、悪くない試合を進めながらも、試合展開と関係のないミスやアクシデントなどから失点をして試合を落としているのが今シーズンの富山なようだ。この試合もそうした展開になりかけていた。
だが、そうして突入した後半は前述したように富山が圧倒する。キックオフからしばらくは2点のリードを得ている札幌が攻守ともに余裕を持ってプレーをしていたのだが、10分ほど経過をすると簡単にボールを奪われたり、富山のパス回しに翻弄されるようになる。52分にエースの内村圭宏を投入しているものの攻め手がまったくなく、リードをしているにも関わらず縦に急いでしまう場面も目につくようになる。
象徴的なのは64分頃のプレーだろう。センターサークル付近で札幌の河合竜二がフリーでボールを持って右サイドへとパスを蹴るのだが、これが大きくラインを割ってしまう。2点のリードがあり、中盤で完全にフリーな状況。落ち着いてボールを保持してもいい場面にも関わらず、急いでキックをしてミスとなったのである。後半開始直後にあった余裕は、この時点では完全になくなっていたと見ていいだろう。富山に一方的に攻め込まれている状況は、本来であればまったく問題のない立場にある札幌イレブンの心理を大きく揺さぶっていたようだ。そして70分、オフサイドにしていれば済んでいた場面でパウロンが対応を誤りPK献上。富山が1点差に詰め寄った。
1点差に迫ったことで富山はより一層勢いづく。札幌もなんとかリズムを取り戻そうとパスをつなごうとするが、やはり精神的に余裕がない状況ではプレー選択もどこか強引になるし、ミスも出る。結果、アバウトなキックを蹴るばかりでやはり攻め手はない。富山にパスをつながれ、札幌は自陣にほぼクギづけにされる展開に陥っていたのである。いつ同点ゴールが生まれても不思議ではない状況だった。
だが、ここで札幌は粘りを見せた。試合終盤は河合をバイタルエリアに置く4−1−4−1のような布陣に変更。前節は同じ2−1の場面でゲームプランが不明瞭になり、後半アディショナルタイムに同点弾を浴びてしまっただけに、その反省からかここでは明確にプランを示した格好だ。「あのシステム変更でやることがハッキリした」と小山内貴哉はベンチワークがチームの意思統一をサポートしたことを明かしている。変わらず富山は猛攻を仕掛けてきたが、プランが定まった札幌は最後に冷静さを取り戻し、それを見事に跳ね返してみせたのだ。この結果、札幌は4試合ぶりの白星、富山は9連敗となっている。
サッカーがメンタル面の影響がプレーに非常によく表れるスポーツであること、そして、あらためて先制点の持つ優位性を再確認させられた試合と言えるだろう。どれだけ圧倒されようとも、結局は前半に奪った得点がモノをいったわけだし、もっと言ってしまえば後半に富山が勢いよく攻めたのもビハインドを追う立場になったからとも言える。そうしたことを考えると、やはり今後のリーグを展望するにあたっては、先制点を取るための攻撃的意識を持つチームあるいは、先制点を与えない守備的意識を持つチームといったように、プレースタイルや指揮官の戦術的意図の明確なチームこそが上位進出の可能性を高めていくのではないだろうか。
以上
2014.06.22 Reported by 斉藤宏則
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