目が離せない試合が続いているプラジルワールドカップ。ギリシャと引き分けた日本の第3戦も気になるのだが、中断なく行われているJ2も今シーズンは例年以上に混戦になっていて目が離せない。熊本はリーグ最多の9引き分けと、勢い良く勝点が積み上がらず現在14位。しかしJ1昇格プレーオフ圏の6位大分との勝点差はまだ5で、シーズン中盤に入り少しずつ差が開きつつあるものの、上位陣の背中が遠く霞んでいるわけではない。勝点差2の11位・京都を3週間ぶりのホームに迎える今節、勝点3を手にして浮上への弾みをつけたい。
さて、その京都は今週水曜の18日、就任1年目のバドゥ監督と契約を解除、後任の監督代行として森下仁志コーチが暫定的に指揮を執る人事を発表した。ここまでの戦いぶりを見ると、開幕戦こそ北九州を下して白星スタートを切ったが続く2節福岡戦に敗れ、3〜9節では7試合負けなしで勝点を積み上げたもののホームでなかなか勝てず、11〜13節で3連勝したかと思えば14節からは逆に3連敗(うち14節の水戸戦では5失点)。完封したゲームも6試合ある一方、18試合中半分にあたる9試合で先制を許すなど試合ごとに波があり、守備面で問題を抱えていることがうかがえる。ただ、熊本も昨年、シーズン途中に監督が代わってからチームの雰囲気が変わっていったように、そうした事態は選手達のメンタルにも小さくない影響を及ぼすもの。発表から中3日で迎える試合とあって大きな修正を施すのは難しいにしても、元日本代表の大黒将志や山瀬功治、工藤浩平と、もともと能力の高い選手達が揃っているチーム。この監督交代を機に再び結束が高まり、基本的な約束事を確認することで攻守両面の連携が改善されることも、あるいは先発をアレンジして若い選手を起用してくることも考えられるだろう。京都にとっては、先制を許さないよう守備を意識しながらも、高いボール支配率からフィニッシュに持ち込む、つまり攻撃をやりきることがポイントになりそうだ。
対する熊本は、前節の群馬戦、前々節の北九州戦と2試合続けて前半に先制を許す展開になった。いずれも早いうちに追いついたが、決して試合への入りが悪いわけではないにも関わらず、ちょっとした隙を突かれる形で失点してしまっている。この点に関して篠原弘次郎は「もっと寄せられた」と振り返り、「ボールに行くという姿勢が少しルーズになっているので、人をしっかりつかまえて、人に対してアプローチにいくことを1人1人が意識しないといけない」と話し、チームとしてもその点は今週のトレーニングで重点を置いていた。なかでも、絶妙な動き出しで背後へ抜ける動きを繰り返す大黒は、リフレクションやこぼれ球への反応にもすぐれているだけに十分な警戒が必要。ただ、それを怖がって全体のラインが下がる事態になれば逆に中盤に自由を与え、京都のペースに引きずり込まれてしまうことになりかねない。前節について巻誠一郎は「FWとボランチの間にスペースができてしまった」と話しているが、小野剛監督も「時間とスペースを与えないことが大事」と言うように、コンパクトな陣形を保って京都の中盤、前線への供給源をしっかり抑えることが、この試合における熊本の大きなミッションとなる。「サイドに人数をかけてくるので、ボランチが引き出されないように、サイドバックとサイドハーフでうまく挟んで奪いきる」(橋本拳人)ことも、流れをつかむ上では欠かせない。
もう1つのポイントは、やはりチャンスを確実にゴールに結ぶこと。イメージとタイミングの共有によって、「ゴール前にボールが入ってくる回数は増えている」(巻)のは確か。継続的に取り組んでいるシュートパターンのトレーニングで様々なバリエーションが蓄積され、紅白戦やミニゲームを見てもフィニッシュ精度は高まっているが、その成果をしっかりと示さなくてはならない。
対京都の戦績を振り返ると、熊本は2011年の後期から5連敗中と結果では圧倒されている。だがそれは既に過去のこと。自分たちの持ち味と強みを表現して、次の1歩につなげることができるか、ここまでの成長が試される一戦だ。
以上
2014.06.20 Reported by 井芹貴志
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