「うーん、難しいですね。どちらの面もあり半分、半分」。勝点３を逃したのか、それとも勝点１を得たのかを問われた秋葉忠宏監督はこう答えた。今季２度目の連勝を狙ってゲームに臨んだ群馬だったが、熊本の粘り強い戦いの前に攻撃力が半減。ロビーニョのヘッド弾で早い時間帯に先制したものの、直後に追いつかれて１−１のドロー。勝点１という戦果は得たが、消化不良の内容となった。

３−５−２のシステムを敷く群馬は好調ロビーニョのパートナーとしてドリブラー宮崎泰右をチョイス。スピード感溢れる２トップで熊本撃破を試みる。対する熊本は、１トップ巻誠一郎の後ろに齊藤和樹を配置する４−２−３−１。巻のポストプレーを軸に２列目の３人が流動的に動いて群馬に圧力を加える。ピッチ上にやや強い風が行き交うコンデションとなったが、両チームとも勝利のシナリオを描いてゲームに入った。

先制点は開始８分だった。熊本のパスをハーフライン付近でカットした群馬は、小林竜樹がボールを運ぶと左サイドを走る宮崎へ。「マークが緩かったので余裕があった」（宮崎）。スピードに乗ったドリブルで左サイドをえぐった宮崎が、ゴール前へと送り込んだクロスを合わせたのはロビーニョだった。フリーでゴール前へ入ってきた群馬の新エースは、豪快なヘッドでゴールネットを揺らして２戦連続弾。ファーストチャンスを得点に結びつけた群馬が主導権を握るかに思われた。
だが甘くはなかった。熊本の攻撃を組織的に囲い込めない群馬は、不安定な守備を露呈。得点から５分後の13分、自陣左サイドで澤田崇にボールを奪われると、そのままバイタルへと切り込まれる。そして澤田が左足で放っていったミドルが、黄誠秀に足に当たってゴールへと吸い込まれた。群馬にとっては不運な失点となったが、マークが緩んだもの事実。クォン・ハンジンは「自分を含めてみんながあともう一歩寄せていれば失点は防げていた」と悔やんだ。

１−１となってからはゲームの流れは熊本が握っていた。澤田、齊藤、橋本拳人らが機動力を駆使して攻撃にアクセントを加えて、群馬ゴールを脅かしていく。群馬は悪いリズムをGK内藤圭佑の好セーブ、守備陣の体を張ったブロックで耐えてチャンスをうかがう。70分前には裏へと抜けた宮崎がGK畑実と１対１となるが、決めきれず。それ以降はチャンスらしいチャンスを作れずに１−１のままゲームを終えた。

熊本は今季９度目のドローとなった。逆転まで持ち込めなかったものの、敵地での失点直後にゴールを奪いゲームを盛り返してみせた。ゴールを決めた澤田、群馬の起点を潰し続けた橋本、中盤でテクニックをみせた中山雄登ら若い選手たちの機敏な動きが印象に残った。巻は「90分を通じてゲームの主導権はうちが握っていたと思うが、１ゴールしか取れなかったことは課題」と納得しなかったが、敵地での勝点１は悪くない結果だ。
群馬は、勝点３が奪えないもどかしさと、勝点１を拾った安堵感が同居していた。ホームで早い時間帯に先制しながらも勝利につなげられなかったのはチームが成熟していない証。悪い流れながらも勝点１をすくったことは評価できるが、90分トータルでのエンターテインメント性に欠けるゲームだった。緩急のない単調なパス、工夫の足りないクロスなど攻撃面の改善の余地はある。群馬は次節から上位陣との対戦が続く（6/21vs松本＠松本、6/28vs大分＠正田スタ、7/5vs湘南＠ 正田スタ）。この勝点１に満足していたら下位脱出は果たせない。

以上

2014.06.15 Reported by 伊藤寿学