2位・磐田をホームに迎えての一戦。岐阜はここ数試合でハマっていた【4-3-2-1】のクリスマスツリー型の布陣で臨んだ。
1トップのナザリトの後方に、高地系治と難波宏明を並べ、左から太田圭輔、宮沢正史、ヘニキの3ボランチ。高地と太田、ヘニキと難波の距離を近づけ、宮沢をアンカーに落とし、左の三都主アレサンドロ、右の益山司の両サイドバックが常に高い位置をキープできるようにした。
それに対し、磐田は前田遼一の1トップに、1.5列目に左からポポ、松井大輔、山崎亮平を並べ、この4人が岐阜のギャップに立つことで、攻撃の起点を作り出す狙いを持った。さらに岐阜が左の三都主よりも、右の益山のほうが頻繁に高い位置を取ることを見越した磐田は、益山が上がってできる左サイドのスペースを狙っていた。ポポがワイドに張り、前方のスペースにいつでも飛び出せるような態勢を作り、左サイドバックの宮崎智彦も中央をケアしながらもヘニキの裏のスペースを常に狙って、サイドでの数的優位を頻繁に作り出していた。

この狙いがハマった。10分にはボランチの小林祐希のスルーパスに抜け出したポポが、GK川口能活と1対1に。放ったシュートはGK川口のファインブロックに阻まれるが、続く15分にはポポがDF木谷公亮の縦パスをインターセプトするとそのままドリブルで運び、左サイドの松井へパス。松井はワンタッチで中に体を向けると、一気にボールサイドに食いついた岐阜の守備陣の隙を見逃さなかった。バイタルエリア右中央のスペースに飛び込んだ山崎に、絶妙なスルーパスを送り、山崎が中央のスペースに走り込んだ前田へダイレクトで落とす。このパスで山崎に食いついたGK川口の裏を完全にかき、前田は楽々と無人のゴールに蹴り込んで磐田が先制に成功する。
さらに25分、小林のパスを受けた松井がドリブルで右サイドを突破し、ニアにグラウンダーのボールを送り込む。これを前田がダイレクトで押し込んで、磐田が0−2とリードを奪う。

思うようにリズムが作れぬまま、2失点を喫した岐阜。前半の岐阜にとって脅威となったのが宮崎の存在だった。彼が攻守のバランスを取りながら、抜群のポジショニングを披露。出足の鋭いインターセプトや、サイドのスペースへの持ち出しは、岐阜の狙いを阻み、大きな障害となった。
後半、岐阜はナザリトに代えて井上平を、難波に代えて美尾敦を投入。【4-3-2-1】から、ヘニキと宮沢のダブルボランチ、左に高地、右に太田、前線に美尾と井上を縦関係の2トップに置いた【4-4-2】にシフトチェンジ。再三突かれていた岐阜の右サイドをケアする形にして、磐田の強力な攻撃を封じる形に変えてきた。

すると磐田は今度は右サイドを活性化させ始める。前半は抑え気味だった右サイドバックの駒野友一のオーバーラップの頻度が上がり始め、さらに右の山崎が積極的に中に入ることで高地を中央に釣り出し、より駒野がオーバーラップしやすい環境を作り出した。
55分、その狙い通り、駒野が右サイドを突破し、中央にセンタリング。GK川口がパンチングしたこぼれ球をポポが豪快に蹴り込んで、試合を決定づける3点目。岐阜は完全に勝機を失ってしまったが、1点を返さんとばかりに高い位置からのプレスと前への意識をなくさなかった。だが、結果として、これがさらに磐田に決定機を与えてしまった。
磐田は70分に松井に代えて、ケガから復帰したばかりの山田大記を投入すると、さらに攻撃が活性化。87分にはその山田がダメ押しの4点目を奪い、試合は0−4という磐田の圧勝で幕を閉じた。

この日、長良川競技場にはクラブ史上最多となる15,138人もの観衆が詰めかけた。しかし、この大観衆の前で、磐田の強さを見せつけられる形となってしまった。
だが、岐阜は最後まで攻撃的な姿勢を貫いた。失点し弱気になるのではなく、システム変更をして、さらに前線に枚数を掛けて、リスクを負ったサッカーを展開した。個の能力、組織力で上回る磐田相手に、攻撃サッカーで挑むのだから、ある程度の失点はやむなしとも捉えられる。0−4という敗戦は、それだけ見るとネガティブだが、ラモス瑠偉監督のどんな相手でも仕掛けるという姿勢を持ち続けることができたことはポジティブに捉えたい。岐阜は次節もホームで長崎を迎え撃つ。この試合も磐田戦に続いての「15000人集客プロジェクト」を実施する。2連敗しないように、しっかりと気持ちを切り替えて臨んでもらいたい。

以上

2014.06.15 Reported by 安藤隆人