栃木のアウェイ２連戦の結果は、あまりにも好対照だった。前々節の北九州には完勝したが、前節の山形にはクラブワーストとなる６失点で大敗。前者には４―１―４―１のシステム上の優位性を発揮できたが、後者には１ボランチの脇を執拗に突かれて崩壊を招いた。

屈辱的な６失点は容易に受け入れられるモノではない。しかし、いつまでもショックを引きずってもいられない。分析も反省も修正も必要だが、それと同時に割り切ることもまた重要だ。そうでなければ、「１試合分の勝点を失うだけでなく、後々まで響く」（小野寺達也）危険性がある。今節の大分戦を挽回できる機会だと捉え、「気を引き締め直して、『あの試合から変わった』と言ってもらえるようにしたい」（小野寺）。

瀕死の重体から蘇生するには、「自分達次第」と話す山形辰徳は、「悪いイメージは忘れ、自分たちの一番いいイメージを持って臨みたい」と言葉を続けた。開幕戦から阪倉トチギはアグレッシブさを前面に押し出し、ここまで勝点を稼いできた。下を向き、その強みを失えば、自ずと勝機は遠のく。自分たちの原点を見つめ直すために、指揮官は今週の練習で攻守の切り替えを意識させるメニューを組んだ。コンパクトな陣形を保ち、球際で強く行き、奪ったボールを追い越し素早くゴールに迫る。山形に忘れてきたモノを思い出せるか。まずは、それがカギになるはずだ。

２連勝中の大分は、いずれの試合も「ウノゼロ（１―０）」で勝利を収めている。決定機こそ相手を下回ったが、数少ないチャンスをものにして勝ち切っている。押し込まれても耐え切れる伝統的守備力と、一瞬の隙を逃さない抜け目のなさには注意が求められる。１点が致命傷となるだけに、栃木はボールの失い方、失う場所には気を配るべきで、焦れずに戦わなければならない。大胆かつ慎重に。これが、今節のキーワードになるだろう。

２試合続けてクリーンシートを達成している大分だが、得点力不足に喘いでいる。課題が顕在化しているものの、栃木から６点を奪った山形も前節まではゴール欠乏症だっただけに、劇的に症状が改善する可能性を秘めている。若い攻撃陣が爆発するにはダブルボランチの伊藤大介と末吉隼也がハンドルを握って全体を操作し、そこに木村祐志が変化を付けられるかがポイントになりそうだ。中盤の３人がイニシアチブを握れれば、右サイドバックにコンバートされた西弘則の攻撃参加も助長できる。今季初の３連勝を成し遂げるために、複数得点を挙げたい。

雨が降ったり、止んだりと、栃木県の天気は不安定。そこに梅雨の時期特有のじっとりとした空気がまとわりつき、不快指数は増すばかりだ。沈みがちな気持ちに、前節の敗戦はさらに拍車をかけた。山形戦から気分の重い日々が続くが、天気予報で大分戦当日から晴れマークが並んでいるのは朗報だ。快晴の空の下、快勝する栃木の姿を目にしたいと願う人々が、大勢スタジアムに足を運ぶことだろう。

６月のホームゲームは１試合のみ。西澤代志也はその大分戦を、「応援に来てくれた人のために、勝ちを収めないといけない試合」と位置付ける。山形に６発浴びせられた悔しさが、どれだけのモノだったのか。選手たちがピッチで表現できる場は、この試合しかない。ファン・サポーターの期待を胸に、自らの自信と誇り、そして信頼を取り戻す。好調な大分を相手に、戦いの幕が切って落とされる。

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2014.06.13 Reported by 大塚秀毅