立ち上がりから押し込んだ山形が先制したのは6分。混戦からいったんは廣瀬浩二の足がゴールラインギリギリでかき出したが、ボールはフリーで待つ當間建文の目の前に落ちてきた。「別にふつうに押し込んでもよかったんだろうけど、とりあえず、頭ごと行ったほうがいいのかなと思って」としっかりと体重を乗せ前傾で放ったヘディングが確実にゴールネットをとらえた。西河翔吾の負傷離脱で急遽めぐってきた10試合ぶりの出場機会。その相手が、昨年まで2シーズン在籍した栃木だった。古巣ゴールに突き刺した先制点はそれだけでは終わらず、大量6得点の呼び水となった。燻り続けていた山形の攻撃が、ついに弾けた。
5試合ぶりに勝利した前節と同じメンバーで、栃木は4-1-4-1のシステムを編んだが、前節とは変わり、終始圧し込まれる展開となった。1ボランチ・岡根直哉の両脇のスペースを狙われることは十分に警戒していたが、それでも埋めきれなかった理由を近藤祐介はこう語る。「ロングパスを蹴って、せっかく取ったボールをまた相手ボールにする場面が前半特に多いし、球際も負けてたし、それだけ負けてたらあの結果は必然かなと思います」。ラインが浅い山形のディフェンス裏を狙うのはセオリーだが、そのボールの精度を欠き、セカンドボールも拾えない。2列目の選手が前がかった状態でボールを失えば、残されるのは中盤の広いスペース。また、切り替わった瞬間に山形の1トップ・中島裕希が裏を狙って駆け引きを始めるため、栃木のディフェンスラインはさらに下げさせられることになった。「岡根の隣あたりでスペースがたくさんありましたし、彼がボールサイドに寄ってくれば逆サイドの真ん中あたりが空くという感じでした」(秋葉勝)。山形の連動した攻撃に晒され続けた栃木のブロックは33分、流れのなかからも決壊する。
清水健太の負傷を受け、この試合で移籍後初先発となったGK兼田亜季重からのロングフィードを中島がフリックオンできれいに流すと、ボールはディエゴの足元へ。ドゥドゥのアプローチをかわす間にブロックを作られたが、浮いたポジションにいた比嘉厚平へスルーパスを送ると、GK鈴木智幸と交錯した際のこぼれ球が再びディエゴのもとへ。いったんは体勢を崩しながら左足でしっかりと枠をとらえた。最近の試合では再三決定機に絡みながら決めきれずにいたディエゴに待望のゴールが生まれたことで山形の勢いはさらに持続。38分に宮阪政樹が狙った直接フリーキックは惜しくも枠をそれたが、41分には秋葉のねじ込むようなくさびとキープする比嘉がパス交換を続け、最後は比嘉が今季2得点目。前半で3-0と大勢は決した。
ハーフタイムに栃木は、負傷したドゥドゥをチャ ヨンファンに、重松健太郎を大久保哲哉にスイッチ。前半はほとんど機能しなかった瀬沼優司に加え、前線に190cmのターゲットを1枚増やすと、前を向く時間は多少は増えたものの、パスが合わずに簡単にボールを失うシーンも多く、山形のゴールに迫れずにいた。そうしたなかで飛び出したのは、またもディエゴのゴール。64分、クイックリスタートから山田拓巳のサイドからのくさびが秋葉経由で比嘉へ。比嘉がインサイドでていねいに落とすと、ディエゴが左足でゴール左隅を狙い見事ゲット。「15分で1点ずつ返していこうと言って全員で前から行ったんですけど、その次の1点を相手に取られたので、さらに難しくなったというか、気持ちの面でもチームとして難しい状況になりました」(岡根)と栃木にとってはダメージの大きい失点となった。
ディエゴはさらに85分のカウンターの場面、途中出場のキム ボムヨンのやわらかいクロスをヘッドで合わせてハットトリックを達成。これで山形は5-0。直後のフリーキックでは赤井秀行に決められクリーンシートこそ逃したが、89分のコーナーキックではキムがトレードマークのアフロのヘッドで飛び込んで6点目。キムのJ初ゴールで山形怒濤のゴールショーは幕を閉じた。
今シーズン、複数得点が3度しかない山形と、これまで複数失点は3度のみ、3失点以上を喫していない栃木。その流れに沿ってみれば、6-1のスコアは戦前には予想できなかったものだろう。次の試合が難しいのは、敗れた栃木ばかりではない。ようやく得点感覚を取り戻しつつあるディエゴは「僕のハットトリックよりは、チームが勝ったということが一番うれしい」と語り、「毎回監督に言われていますが、J1に行きたいチームは連勝しなければいけないので、そこはすごく意識しています」といまだ達成できていない連勝に目を向けた。コーナーキックからのアシストをようやく実現できた宮阪も、「今日これだけ点が取れたことで、次の試合は難しくなると思います。『前回、あれだけ取れたのに』と勝手に思ってしまうところがあると嫌な流れになってしまうので、しっかりと、1-0でもいいので勝てればいいと思います」と結果にこだわる姿勢を示した。
6点の重みをそれぞれに消化しながら、次の試合へ向けた1週間はもう始まっている。
以上
2014.06.08 Reported by 佐藤円
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