背水の陣で挑んだ富山が、首位を独走する湘南を最後まで苦しめた。富山の安間貴義監督は最下位に低迷する状況を踏まえ、「(今日も含めて)前期の残り5試合で3勝を目標に掲げ、私が監督を続けるべきかどうかを見極めてほしい」と自ら願い出ていた。そんな裏事情を知らなかった観客にも富山の選手たちの勝利にかける情熱はプレーを通して伝わっただろう。
富山は今週のトレーニングで負傷者がでて、今季初めてとなる3バックを採用。湘南と同じ3−4−2−1のフォーメーションで臨んだ。開始直後にパスミスから決定機をつくられたが、湘南FW岡田翔平のシュートはGK正面を突いて救われた。湘南に主導権を握られ8分にもDF三竿雄斗にワンツーでゴールに迫られたが、このピンチをしのぐと徐々に守りの対応力が高まっていった。相手の持ち味でもある球際と運動量で対抗し、中盤で厳しくプレッシャーをかけた。押し込まれてもゴール前でのセカンドボールへの反応が素早く、集中力を感じさせた。湘南は28分にスローインからの連係でFW武富孝介がビッグチャンスを創出するが決め切れない。前半は0−0で折り返した。
後半は立ち上がりから富山が攻勢にでた。51分にペナルティーエリア内で受けたFW中島翔哉が右からセンタリング、FW三上陽輔がヘディングで狙ったがシュートは右へ外れた。56分には湘南のお株を奪うかのような攻め上がりをみせたDF高准翼のクロスに2人が飛び込む。相手陣で次々とボールを奪い返し、押せ押せの時間をつくった。その後は互いにカウンターを繰り出し、熱のこもった攻防が続いた。
富山はDF池端陽介が足をつりかけていたが、“引き分けはいらない”とばかりに、77分に3人目の交代でエースのFW白崎凌兵を投入。82分にDF秋本倫孝がパスカットから攻め上がり、88分にはクリアを中島が収めて白崎につないで好機をつくるがシュートまで持ち込めなかった。この間に高が足をつって動きが鈍りFWに上げざるを得なくなったのは想定外だった。しかし、湘南と伍して戦うことのハードさがもたらした事態であることは間違いない。湘南はアディショナルタイムに突入する直前、CKからの2次攻撃で三竿が左から上げたクロスをDF遠藤航が頭で合わせて決勝点を奪った。苦しみながらもしっかりと勝利をものにする勝負強さをみせたといえるだろう。
安間監督は試合後の会見で「今日は負けたが、人心を動かすゲームをしたと思う。そういうところをもっと引き出したい。彼らはもっとできる選手たちだと思っている」と語り、クラブ側に進退一任を申し出たことを明らかにした。21位讃岐との勝点差は4に開き、20位東京Vとは9離されている。目標に掲げた前期残り試合での3勝を達成したとしても厳しい戦いが続くだろう。安間監督の行動はこれに立ち向かうためのきっかけを自らつくろうとしたものだと解釈したい。2009年にJ2に昇格したカターレ富山は、10年秋に就任した安間監督を中心に一歩ずつチームをつくり上げてきた。それに呼応して地域の支援も広がり、クラブの基盤も固まりつつある。監督だけではない、選手、スタッフ、サポーター、スポンサー、ボランティアをはじめみんなでここまでやってきた。失ってから気づくのはたくさんだ。チームとしてクラブとして、関わる者すべての真価が問われる戦いの幕が開けた。
以上
2014.06.08 Reported by 赤壁逸朗
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