北九州がJ2の舞台に立った2010年、チームはリーグ戦で年間1勝と苦しんでいた。このときに喉から手が出るほど欲しかったのが「勝点3」。未来に繋がるサッカーを試行錯誤するよりも『目の前』の勝点に焦がれていた。その翌年、新体制となった北九州は白星が積み上がるようになり、短期的な結果だけではなくチームの成長を目指して内容を追いかけるようになった。勝点は成長の証。『未来』を見据え積み上げてなお追いかけるものへと変化していた。
目の前の勝点を追いかけるがむしゃらさが必要なときもあるし、未来のために賢いサッカーをして勝点を得ることが必要なときもある。サッカーに限らずボールを動かすチームスポーツであればその両者には大きな戦術の違いがあり、だからといってそれに優劣があるわけでもない。必要なのはその場のプレーヤーがどちらを目指しているかを把握し、サッカーであれば11人が同じように進まなければならないということだ。目の前の勝点を追いかける者あり、未来のためにサッカーをする者あり。そういう状態では「勝点3」はきっと「勝点1」や「勝点0」に縮まるだろう。
落ち着かないゲームを展開し3試合続けて勝点3を得られなかった北九州。攻守にわたって歯車の噛み合わない場面が散見され、失点こそ1点に抑えられたものの相手が保持する時間が長かった。チームが何を目指しているのかがぼやけてしまっているのではないか。不安が胸をよぎり試合が終わって何人もの選手に話を聞いたが、その心配を払しょくしてくれるようにやるべきことへの共通理解を求める声が異口同音に聞こえてきた。「チームとしては何回かいい形はできてきていたが全員が同じ意図を持ってやれているわけではない。もっともっといい形の攻撃回数が増えるよう練習からしっかりやっていかないといけない」。欠場した前田和哉に代わってキャプテンマークを巻いた池元友樹も引き込まれるほどの温かな口調でそう話した。
全員が同じ意図を――。池元の言葉に尽きる。その思いがまだある限りチームは前を向いて進み続けられるはずだ。「勝点1」を前向きに受け止め、時間は掛かるかもしれないが「勝点3」を目指してひとつになれる瞬間を待ち続けたい。
試合は立ち上がりから熊本が流れを掴み優位にゲームを進めていく。決定機そのものは少なかったが北九州のポジションが間延びし、熊本がパスをテンポ良く繋いでいった。他方、北九州は奪ったボールを前に運べず、構図としてはあと一歩でゴールに迫っていた熊本と守備でなんとか耐えていた北九州という状況だった。
ところが先制したのは北九州。24分、ルーズボールを処理するべく八角剛史が体勢を崩しながらパスを出すと、小手川宏基が自陣中央で拾ってドリブル突破。そのまま勢いに乗って敵陣深く持ち込むと相手にボールを渡すことなくミドルシュートを突き刺し、チームとしても5試合ぶりとなる先制点を奪った。
このゴールの直後、八角は初先発の寺岡真弘に声を掛け、ボランチとセンターバックとの距離やラインコントロールの修正を図る。こうしたピッチ内の声も奏功して次第に熊本のポゼッション率も下がるようになったほか、風間宏希や小手川のボールタッチも増え始める。しかし今度は北九州にリズムが出始めた時間帯で熊本に同点弾が生まれる。43分、中山雄登のふわりと浮かしたフィードに齊藤和樹が頭で合わせてゴールイン。「インスイングで上げてくるだろうなというのは分かったので、ギリギリのタイミングでDFの背後で触ることを意識した」と話す齊藤の狙い通りにゴールを呼び込み、ゲームを振り出しに戻した。
後半に入ると互いに最前線への供給回数が増え、大味な展開に。しかしフィニッシュの精度を欠き、ともにゴールが近づかなかった。「決定的なチャンスがあったのでそれを一つでも決めて勝点3取りたかったが、相手にもチャンスがいくつかあり、結果的に引き分けというのは妥当な結果」(柱谷幸一監督)、「最後の最後まで勝点3を目指して頑張ったが、残念ながら勝点3までは届かなかった。ただ相手も最後まで走って互いに出し切って、勝点1を分け合ったという試合だったんじゃないかな」(小野剛監督)と両指揮官も口を揃えるドローゲームでホイッスルを迎えることとなった。
熊本としては苦手としている北九州から勝点1を得たことはひとつの収穫といえるが、「チャンスを作ったのでそれを得点に持って行かないといけない」との小野監督の言葉の通り、あと一歩のゴールへの距離をどう縮めていくかこれからも試行錯誤を続けていきたい。他方、北九州はこのゲームも入りが悪く、ポゼッションするのか、前に早く送り込むのかはっきりしなかった。ゴールを決めた小手川も「全体的にシュートが少なく、いい位置まで回数多く行けていなかった。もっと連係してやっていきたい」と振り返り、笑顔はなかった。
チームは何のために「勝点3」を目指し、それはどこに繋がっているのか。悩み、話し合い、時にぶつかりあうこともあるだろう。それでも試合はまたやってくる。まだまだ上位に踏みとどまっている北九州。ここからさらに上を目指し、苦しさを乗り越えて一つになってチームを前へと進めていく。
以上
2014.06.08 Reported by 上田真之介
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