長崎が昨シーズンの躍進を果たした原動力であった、ハイプレス、ハードワーク、そして思い切りが、見事にニッパ球のピッチに表現された試合だった。前日から降り続く大雨にもかかわず、ピッチコンディションは悪くない。ただ、1つの大きな違いは、長崎・高木琢也監督が振り返ったように「基本的に雨のピッチというのはシュートレンジが広くなるはず」というポイント。このポイントを最大限利用したのは、長崎だった。
前半の立ち上がり、両チームとも少し駆け引きをしながら様子見の展開となるが、その中でも6分、8分と長崎が意識的にミドルシュートを放ち、この試合に臨むスタンスを明確に宣言する。その後、両チームがコンパクトな陣形を保ちながら、早い切り替えを狙う形になるが、切り替えの際に縦パスでのミスを連発する横浜FCに対して、より良い距離感と局面での強さで上回る長崎がゲームを支配していく。そして、18分にその流れを象徴するゴールが長崎に入る。横浜FCのゴールキックを黒津勝が競り負け、そのセカンドボールを前に人数を掛けて取り行く。そのこぼれを安英学が一度は拾うが、その安に長崎の3人のプレッシャーが掛かり長崎ボールへ。前掛かりになった故に手薄になった守備陣の広大なスペースを使い、最後は金久保彩がロングレンジから無回転シュートをたたき込む。長崎のハイプレス、そして「スリッピーだったんで何かアクシデントが起こると考えて」(金久保)という状況を考えたシュートにより長崎が見事に先制する。対する横浜FCは、攻め上がる際のミスを連発し、全くリズムに乗れず。長崎とは対照的にロングシュートも見られず前半をシュート0本で終えることとなる。
後半に入っても、横浜FCは、その流れを変えることができない。そして57分に西嶋弘之に代えてパク ソンホを入れて3バックに変更するが、この変更で作った隙に長崎のプレッシャーが再度襲いかかる。4バックから3バックの変更に際して、市村篤司が右のウイングバックに、ドウグラスが右のストッパーの位置に入るが、この変更があった最初のプレーのパス交換で、この2人に長崎の3人が守備に入る形に。そして佐藤洸一がボールを奪うと、そのままキーパーとの1対1を制して追加点を挙げる。通常なら失点するはずもないDFラインでのリスタートのシーンだが、ギアを入れるための選手交代が逆に作用するほど、歯車の噛み合わせの悪さが見えた場面だった。前半から続く構図は変わらず、横浜FCには3人目の動きや裏を取る動きなど、押さえ込まれた状況を打開する術もない中、この日最初のシュートは84分の野崎陽介のロングシュート。86分に、松下年宏からのクロスをパク ソンホが頭で合わせて1点は返すものの、相手の嫌なプレーはほとんど見せられずに試合終了。長崎が9試合ぶりの勝利を完勝の形で手にした。
2点目を決めた長崎・佐藤は「横浜FCは繋いでくるので、そこは相性が良いと思う」と、サッカースタイルの組み合わせもこの試合の勝因に挙げたが、長崎が昨年躍進した原点である、ハイプレスとハードワークが見事に表現された試合だったといえる。その意味では、自信を取り戻せる、今後に大きく繋がる勝利だったと言える。
一方の横浜FCは、選手が一様に「相手がハイプレスに来れば、逆にそれをはがせればチャンスになる」と口にしたが、それをビッグチャンスに繋げることはできなかった。特に、ボールを奪ってからパスを入れる際の、出し手、受け手のミスが目立ち、最初のプレスをはがせても、その先にたどり着かないシーンが続いた。山口監督は「(相手のプレスは)外せているですけれども、もう1つ先のところで相手の前でのプレーが前半多かった」と振り返り、パク ソンホは「相手の守備が整ってしまう前の有利なタイミングの時にゴール前にボールを入れないと」と、狙うサッカースタイルを相手にとっての怖さ、そしてゴールの可能性に結びつけられなかったことの反省を述べた。前節の群馬戦ではバランスを保ちながら冷静に戦えていたが、この試合では対照的に冷静さを欠く場面が多かったことは大きな課題と言える。
雨の試合のようにプレーに条件がつく時ほど、自らのスタイルをいかに状況に合わせて生かしていくかが問われる。その意味で、長崎が完全に上回った試合となった。
以上
2014.06.08 Reported by 松尾真一郎
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