J2第17節、西京極に東京Vを迎え撃つ。ホームでの試合、京都はここで連敗を止めたい。東京Vもまた、調子を上げられず現在20位、この状況打破がかかっている。互いに負けられない一戦だ。
京都は前節岐阜に敗れ3連敗。新チームのトライが壁にぶつかっている感じだ。
実は、シーズン前から連敗という気持ちの準備はあった。2011年の大木武監督体制初年度、最初の連敗は第15節・鳥取戦(とりスタ)で3連敗、さらに、順位は19位に落ち、今よりも難しい状況だった。新チームは未熟な部分が多い。2011年に6連勝を達成するが、それは10/19札幌戦(第6節)から。ある程度時間がかかるものだ。その経験があり、今季早々に3連勝を果たし、ひょっとしたらこのまま……、という気持ちも大きかったが壁にぶつかった。「3歩進んで2歩下がる」、そんな所もあると気持ちを切り替えたい。
対戦相手の東京Vは今季まだ3勝しかしていないが、その内2勝はここ5試合で獲得したもの。つまりチームは一歩一歩進んでいるということだ。2勝2分とこなし、前節湘南に0-1で敗れた。湘南に20本のシュートを浴びながらも粘り強く守り続けていた点を成果として捉えている選手もいて、敗戦ながらも前向きに歩んでいる印象もある。
攻撃では常盤聡がチームトップの4得点。身体能力も高く、瞬間の強さ、速さは要注意だ。京都DF酒井隆介は「東京Vは相手によって戦い方を変化させている部分もあるので、早く見極めたい」と対策をイメージしていた。
京都は試合序盤にこの相手の見極めをしっかりと焦れずに出来ている感はある。前半にこう着状態が多いのは、この見極めに費やしている要因の一つだろう。この時間帯に失点をしていないのは、当たり前の様でいて実は一つの成果ではないか。
ここを機会に京都の攻撃について書いておきたい。ここ数試合を観て、「ボールを相手ゴール前に運ぶ」点で、昨年までの形に寄っている印象があったためである。こちらの杞憂なら良いのだが。
昨年までのショートパスをつなぐ攻撃と、今季の京都では「ボールの運び方」は違う。大木前監督の言葉を拾うと「(ボールを持っている選手の視界から)消えるな!」「(ボールを)弾け」といったものがあった。つまり、ボールを持った味方選手に対し「極限までボールを受ける選手を増やす」というのがミソだった。昨年のメンバーでイメージすると、染谷悠太がボールを持てば、染谷に対し全員がボールを受けようとする。染谷から安藤淳へ渡ると、安藤に対し全員がボールを受けようとする。安藤→工藤浩平→駒井善成と渡ると、攻撃陣は駒井からボールを受けようとする。その時に、安藤や工藤も駒井を追い越して前に出る。それで、駒井の前に人が沢山いる、となる。極限までボールを受ける選手を増やすので相手も寄って来て密集になる。だからボールを握らずに弾く。ワンタッチで運ぶことで相手より反応で上回り、回せる。だから、相手の守備陣形など関係なく、密集になろうがサイドチェンジも必要なく運べる、という考え方だ。
だが、これを実践するならボールを受ける選手を増やさないとならないし、ボールを弾くなら、選手も周りにいないといけない。中途半端にやろうとすると、ボールを弾く先が見当たらず前を向こうとするので、相手に奪われ易くなる。
今季の京都のボールの運び方は、バドゥ監督の言葉を並べると「サイドを広く」「センターバックも攻撃参加して良い」「何度でもサイドを変えてやり直して良い」となる。だからサイドを広げ、スペースを使ってボールを運ぶ、となる。で、それが今壁にぶつかっている感じがある。一つ先に進むならスペースを作るために「なぜサイドに張るのか?」というところである。その答えは当たり前だが、相手をサイドに引っ張りたいのである。「なぜ相手をサイドに引っ張りたいのか?」と続けると、相手が動くことでスペースが出来るから、となるのではないか。ならば、「相手を引っ張ることでスペースが生まれるが、味方がそのスペースを感じ取って使ってくれなければ意味はない」となる。
筆者がこうした考えを持つのは、実は横谷繁のプレーが、なぜチームを活性化させないかとずっと感じていたから。「ボールを触ることでリズムを出せる」と口にしていた横谷。そのためにボールを受けようと自由に動いていたが、その動きは悪くないと筆者は思っていたし、時に横谷はサイドに開いてボールを待っていたが、その判断も良いと思っていた。でも、左サイドで攻撃が活性化することは多くはなかった様に感じていた。最初は、横谷を使わない味方、或いは横谷のボールを呼ぶ姿勢の問題か、と思っていたが、その内に「横谷の判断や彼自身のプレーと、左サイドの選手たちの意思疎通の問題ではないか」と思う様になった。
つまり、横谷が「相手右サイドバックを引っ張ろう」とプレーした時に、比嘉祐介が「ヨコ(横谷)が相手を引っ張ってスペースを作ったから飛び込んでやろう」となればスムーズに行くのではと、イメージしたのだ。比嘉が相手右サイドハーフを引っ張れば、その間に横谷が顔を出す。その横谷に対し、相手右サイドバックがマークに入れば、比嘉の前にスペースが出来る。横谷の動きに相手が惑わされなければ、間に入った横谷の足下にボールを入れれば良い。相手を引っ張ることでスペースが生まれ、それを使う。相手が来なければ間で受ける。スペースを使う時は縦の飛び出しが有効。こんなイメージだ。
で、最初と何が違うか?横谷は一生懸命動いていて、比嘉も頑張っている。そこに要素をプラスするなら、二人のイメージのさらなる一致だ。「あいつがこれをやるから、俺はこう」、「俺はこうしたいと思うから、これをやってくれ」とか、個々の頑張りと同時に、二人で仕掛けてみるというトライだ。さらに、センターバックも巻き込んでやってみる。そしてチーム全体がバドゥサッカーを実践していく。まずは近い仲間同士のやりとりや、トライが一つのきっかけになるのではないか。そして、それが出来る様になれば相手の考えの逆をついてボールを運ぶこともできる。
バドゥサッカーの最初の理解の段階から、さらに細かいイメージの共有へと―。壁にぶつかるということは乗り越える課題も見つかるということ。壁を乗り越える強い気持ちと、何よりも、ポジティブなプレーを大いに期待したい。
以上
2014.06.06 Reported by 武田賢宗
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