北九州が「北九州らしさ」を取り戻さなければいけない試合だ。チームとして結果が出ていない直近２試合で「ボールに触れていない」と自省するのは風間宏希。「落ち着かない展開が続いているので、自分たちのペースでできるようにやっていきたい」と話し、しっかりとしたポゼッションでリズムを作り出すことを狙う。組み合わせるボランチは鈴木修人か八角剛史となるが、そのうち八角も「次の人（パスの受け手）のやりやすいプレーをボランチが意識して動かせればポゼッション率も変わってくる」と語り、リズムを作り出す上でのボランチの重要性を自ら説く。
前節の栃木戦ではビルドアップの中でボールを失ったり、不必要なロングボールが散発したりと、十分なポゼッションができなかった。それも試合が進むごとに悪くなるような状況でチームは１点も返せずに敗れた。今節は風間や八角が指摘するようにしっかりとしたポゼッションをすることでゲームの流れを自分たちで引き寄せたい。いい時間帯に得点が取れていないことも課題ではあるものの、「いい時間帯」そのものを欠いている状況では、まずはそれを作ることが優先事項だ。

そしてもうひとつのポジティブな難題は、今節も続くことになったセンターバックのやりくり。渡邉将基が累積４枚目となるイエローカードを受け今節は出場停止となったほか、市川恵多も前節で負傷退場している。こうした中、「やるしかないということは分かっている」と気を吐くのは大卒ルーキーの寺岡真弘だ。対戦相手の研究も入念に行い、持ち味のビルドアップの面でもプレーの繰り出し方にも頭をひねる。出場停止が明けて戻ってくる前田和哉、市川負傷後に穴を埋めた宮本亨などテランが名を連ねるポジションで先発となるか。「ゼロで勝つということにはこだわりたい」と力を込め、にわかに起こったセンターバック争いを競り勝ってのメンバー入りを誓う。

熊本にとっても何より勝利を追いかけなければならない試合。昨年は北九州に乗り込んで０−７と大敗を喫し、ホーム・うまスタでは雷雨による順延を経て１−２で敗れている。雷雨に打たれた幻の試合のスコア（１−１で中断後、中止決定）も入れれば、あわせて10失点。小野剛監督を迎えたり、巻誠一郎が新加入するなど顔ぶれは入れ替わったが、チームとして汚名をそそぐべく白星を掴むことが求められる。
水前寺で行われた前節・富山戦ではペナルティエリア内に人数を割き、シンプルなパスワークで相手ＤＦを翻弄。縦パスとエリア内でのスルーパスから先制点、追加点を奪い、２−０で快勝した。８試合ぶりの勝利。２点を奪って流れを作ったことはもちろん、組織的な守備が奏功して無失点でゲームを閉じることができたこともチームにとっては自信になっただろう。北九州の柱谷監督は「（小野監督は）自分がＳ級ライセンスを取ったときの先生だった」と話してリスペクトしつつ、「セットプレーもいろいろやってくるので対応できる準備をしていきたい。守備のところしっかり入りたい」と対策に余念がない。熊本としては前節で得た攻守両面の結果を弾みに、対北九州戦で４年ぶりの勝利を目指す。

少人数でのやりくりとなって戦力面で苦しい中、フレッシュな力でチーム再建を図る北九州。そして前節の勝利をきっかけに上位躍進とチームとして２０１０年以来の北九州からの勝利を狙う熊本。今節の「バトル オブ 九州」はそれぞれの思いがぶつかる試合となる。
北九州のボランチでポジション争いの只中にある八角剛史は６月４日の練習後、ストイックにチームの現在地を振り返り、「上で通じるサッカーをするには、Ｊ２で勝つだけのサッカーでは通じない。北九州の２年後、３年後のために質をもっと上げていかないといけない」と話した。現在地という地平に足を付け、しっかりと前を見据える。そんな未来が見えてくるゲームにしたい。

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2014.06.06 Reported by 上田真之介