讃岐が香川県初のJリーグチームを目指し、前身の高松フットボールクラブから現チーム名に変更した2006年。讃岐の中心には背番号10をつけた徐暁飛(じょ ぎょうひ)という選手がいた。前のシーズンまで札幌でプレーしていた徐は讃岐の選手たちにJの魂を伝え、サポーターにサッカーの楽しさを教えてくれた。彼がいたから今の讃岐が存在する。讃岐には札幌のDNAが流れているのだ。その讃岐が今節、札幌をホームに迎え、いよいよ初顔合わせを果たす。
第15節の富山戦でJリーグ初勝利をあげた讃岐は前節、アウェイで長崎と対戦。前半は完全に長崎ペースで、前半アディショナルタイムにPKを与えてしまい先制点を奪われる。システムを変えて挑んだ後半は一転、讃岐のペース。これまで序盤は良くても後半に失速するという試合が多かった讃岐だが、この日の後半は選手同士の距離感もよく、ハードワークが持ち味の長崎を上回る動きを見せた。そして59分、讃岐の大きな武器のひとつである武田有祐からのロングスローにソン ハンキが頭で合わせ同点に追いつく。
初勝利からのいい流れを断ち切らない為に必要な最低限のノルマ「勝点1」を手に入れた讃岐だが、一人少なくなった相手に対し最後の精度の部分で得点に結びつけることが出来なかったのは大きな課題だろう。「パス・シュート・コントロールの精度が上がらないと得点につながらないのでその辺をもっと求めていかないと」と北野誠監督。その課題を個人とチーム、両方で打破しなければ「個の能力がすごく高い」(北野監督)という札幌のゴールをこじあけるのは難しい。またGKの瀬口拓弥と武田は「集中力」を課題に挙げる。得点力のある内村圭宏に一瞬でも隙を見せれば命取りとなるはずだ。スピードのある選手の多い札幌のカウンター攻撃をかわすにも集中力は不可欠。「90分間、集中力を保つためには後ろからの声かけが必要。そこは航大君(藤井航大)とやっていきたい」と武田。ただ、課題ばかりではない。我那覇和樹と高橋泰のコンビネーションが徐々に良くなってきているのは得点力不足にあえぐ讃岐にとっては光明。また木島良輔が長崎戦で今季初のベンチ入りを果たしたのも朗報だ。
一方の札幌。今季未だ連勝がなくリーグ15位と「J1昇格を絶対的な目標」として掲げるチームにとって何とも不本意な成績。好不調の波が大きいのがその要因か。前節の福岡戦では、不調の波が押し寄せた。前半は「ちょっとサッカーにならなかった」との財前恵一監督の言葉通り苦しい時間が続き、10試合ぶりにスタメン出場となった内村にボールを供給することがほぼ出来なかった。後半に少しリズムを取り戻すも福岡の素早い寄せに自分たちの持ち味の一つであるスピードを生かせない。守備では福岡攻撃陣の後手を踏むシーンが多く見られ、82分ついに福岡にゴールを許す。万事休すかと思われた試合終了間際、前線に残っていたパウロンが決め1−1。何とか同点で試合を終えた。
札幌は、福岡のプレッシャーに押されてボールが回らず攻撃の形を作り出せなかったのが大きな課題。細かいパス回しに終始し、最終的には福岡にボールを奪われてピンチを招く場面も多かった。「シンプルに裏に蹴るなど、ハッキリしたプレーが必要」(宮澤裕樹)だった。しかし、圧倒的に試合を支配されながらも最後ギリギリ同点に追いつくあたりが底力の強さを感じる。チームとしての経験値も高く、前へボールを集めることが出来れば讃岐のゴールネットを揺らすこともそう難しくはないだろう。気がかりといえば前田俊介が累積警告により出場出来ない事。福岡戦で前田に変わり、途中出場を果たした札幌U−18出身の中原彰吾の先発起用が濃厚か。ベテラン内村と若き中原の新たなホットライン構築にも注目が集まる。
DNAの成せる業か、単なる偶然か。両チームともポゼッションサッカーを掲げ、必要とあらば躊躇なく長いボールを入れるという同じスタイル。自分たちのサッカーを90分間貫けたチームが勝点3を掴む事は間違いないだろう。
以上
2014.06.06 Reported by 中條さくら(オフィスひやあつ)
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