「自分たちの弱さ」。本間幸司は今節の敗因についてそう言い切った。試合の入り自体は決して悪くなかった。松本のロングボール主体の攻撃に対して、チャレンジ&カバーを怠らずに対応。先制点を許すと強い松本に先に点は与えないという気概を感じることができた。
しかし、それでも自ら崩れてしまう悪癖がまたしても出てしまった。7分、松本のロングボールに対応しようとした新里亮がまさかのトラップミス。流れたボールを船山貴之が持ち込んで、GKとの1対1を冷静に沈めて先制点を挙げる。「ただただ僕のミス」と新里は唇を噛んだ。
ただ、問題はそこからだった。「メンタルを立て直すのにハーフタイムまでかかってしまった」(本間)。序盤のタイトな姿勢は薄れ、攻守において消極的なプレーが増えてしまった。特に若いDF陣に乱れが生じたことで、松本に裏のスペースを狙われた。そして21分に右サイドからのクロスを防ごうとした広瀬陸斗の頭に当たり、方向が変わったボールがゴールに吸い込まれていった。形としては不運な失点ではあるが、それまでの流れを見る限り、十分起こり得る事態であったと言える。
松本の「やるべきことをやりきる」(本間)骨太の力に対し、水戸はあまりにもぜい弱であった。「そもそもミス自体してはいけないのだけど、ミスをしたらその後が大事。でも、その辺のメンタリティの弱さが見受けられる」と本間は険しい口調で語った。前節札幌戦も後半開始早々に失点を許すと、直後にミスから与えたCKで追加点を奪われた。今節も同じ過ちを繰り返してしまったのだ。
前節札幌戦ならば前半、今節ならば後半、メンタルが整った状況ではゲームを支配できる力があるだけになおさら悔やまれる。今節も後半は攻勢に出て、松本の運動量が落ちた70分以降は厚みのある攻撃からチャンスを作り出した。89分に左サイドのクロスから最後は小澤司がゴールに押し込んで1点差に詰め寄ると、終了間際には左サイドからのクロスを吉田眞紀人がヘディング。叩きつけたヘッドはゴールに吸い込まれたかと思われたが、ゴールわずか右に逸れていき、万事休した。
「前半から後半のようなサッカーをやりたかった」と鈴木雄斗は語ったが、そういった言葉はこれまで何度も聞いてきた。90分間、力を発揮できないことはこのチームの大きな欠点。「技術は持っているんだけど、それを発揮するメンタリティがまだまだ足りない」と本間はチームの現状を厳しく指摘した。
このままズルズル下位に沈んでいくのか。それともここで踏みとどまって上位戦線に絡んでいくのか。今が水戸の勝負どころ。本間は「ここで変わらないと例年どおりになってしまう」とかつてないほどの危機感を募らせる。個々がこの連敗をどうとらえ、そして行動に移していくか。次節磐田戦、水戸の今後を占う一戦となる。もう一度メンタルを整え直し、強い気持ちでアウェイに乗り込みたい。
松本は今節の結果、磐田を抜いて2位に浮上した。その要因こそが、この試合で見せた安定性だろう。塩沢勝吾や岩間雄大ら主力にけが人が相次ぐ状況で、「今季最も苦しい台所事情」(反町康治監督)の中、個々が与えられた役割をまっとうし、隙を作らなかった。そして、水戸が隙を作って得た2度のチャンスを確実にゴールに結びつけてみせた。攻守における集中力の高さが光ったゲームであった。
それでも試合後に飯田真輝が「このままではマズイ」と危機感を口にしたところにさらなる可能性を感じざるを得なかった。現段階で2位に入ることができたものの、まだ何も達成してはいないことを選手たちはしっかり理解していることがその言葉から伝わってきた。「この位置に居続けるためにもさらなるレベルアップをしていかないといけない」という強い覚悟が込められていたに違いない。まだまだシーズンは長い。目の前の結果に一喜一憂することなく、松本はまい進していく。
以上
2014.06.01 Reported by 佐藤拓也
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