「僕には正直、勝ち続けたい気持ちがありました。その分、攻め急ぎ過ぎたかもしれない」
湘南のキャプテン永木亮太の述懐は、他でもない、前節の愛媛戦を振り返ってのものだ。敵地に臨んだ彼らは序盤、横パスをカットされ、カウンターから先制を許した。その後、時計の針が進むごとに分厚く築かれていく相手のブロックに対し、熱く攻め立てるも攻略はならず、０−１で今季初めて敗北の音を聞いた。

開幕から歩んできた連勝街道は、普段なら自然にできるはずの足の運びを微妙にかき乱すのかもしれない。「いま思えば」と、永木は続ける。
「もう少し繋いだりコンビネーションを織り交ぜたりして相手を崩すほうがよかった」

真昼の暑さのなか、今季初めてフル出場した藤田征也も同様の印象を語っている。
「簡単に入れて跳ね返されてしまう場面が多く、僕自身もクロスばかりになってしまった。うまく崩せそうなかたちもあったので、もう少し工夫すればよかった。ミドルももっと打ってもよかったと思う。相手を引き出すプレーが少なかったかなと感じます」
リトリートしてゴール前に人数をかける相手に対し、たしかに攻め立てはしたものの、セカンドを拾われ二次攻撃に繋がらない場面も認められた。「距離感が少し遠いなと感じることはあった」と菊池大介が口にした印象とリンクするかもしれない。いずれにせよ、横パスを失ったり攻撃が単調になったりと、彼ら本来のリズムではない時間を相手に突かれ、ゴールも今季初めて奪えぬまま試合終了を迎えたのだった。

ただ、連勝は途絶え反省もあるが、「負けたけれどまだ１敗」と藤田が語ったとおりである。今週は原点を見つめ直すトレーニングを重ねたと、曹貴裁監督も語っている。敗戦から切り替え、立ち返るべきは自分たちのスタイルに他ならない。

今節は東京ＶがBMWスタジアムにやって来る。序盤戦こそ複数失点を重ねた彼らだが、第５節に富山を３−０で降して以降は10試合で失点５、いずれのゲームも１失点以内に抑えているように、守備の安定感が増してきた。それに伴い勝点も積み上げつつあり、現在19位ながらこの４試合は２勝２分と成果も挙げている。
大分をホームに迎えた前節は、立ち上がりに連携のミスからもったいない失点をしたが、後半に入り常盤聡が個人技から同点ゴールを奪った。逆転こそならなかったが、最後まで相手ゴールに迫ったなかでのドローゲームだった。曹監督も、「攻守の運動量を保ちつつ、若さを活かされている」と、現在の順位に見合わぬ彼らの戦いぶりに触れた。

対して湘南も、リフレッシュしてホームのピッチに臨む。再び、永木が言う。
「負けて気付かされることもある。自分たちのいいところを出していくことが大事です。今節、勝つことができれば、よりそう思える。その意味でも大事な戦いだと思っています」

この日は「10,000人プロジェクト」を発動し、クラブもいつも以上のバックアップ態勢を整える。湘南にとって大事なリスタートとなる一戦、大きな声援でスタジアムを包み、力強く縦を目指す彼らを後押ししたい。

以上

2014.05.30 Reported by 隈元大吾