前進守備をベースとした類似したチームが対戦する。
大分も山形も好調時であれば、両チームとも最終ラインを高く設定しコンパクトな守備を保つ。攻撃時は縦に速いか否かの違いはあるが、しっかりとボールを動かしてゴールを目指す。派手さはないが監督のサッカー哲学が見て取れる。ただ、ラインコントロールに不具合が生じると、全体が間延びする欠点も似通っている。その短所が、自らが受け身になってラインが下がるのか、対戦相手がロングボールを多用することで引かざるを得ないのか、試合によって要因は異なるが、ベースとなる守備が成り立たなければ主導権を握れない点は同じだ。
前節、東京Vに引き分けた大分は、先制点を奪ったことで受け身となりラインが下がった。暑さで体力の消耗を抑えるため、悪い選択肢ではなかったが時間帯が余りに早過ぎた。追加点を奪いに反撃に出ようとしても、間延びした陣形ではスムーズにボールが動かず、「攻めにいくためのラインコントロールができなかった」とゲームメーカーの伊藤大介は悔やんだ。ただ、後半はハーフタイムでラインコントロールの修正を図り、全体で意思統一できたのは収穫だ。
今週の練習では、全体が連動するように細かくラインの上げ下げを反復し、選手の意識、体にしみ込ませた。田坂和昭監督は「上下に動くことで体力は消耗するかもしれないが、相手に揺さぶられるよりは自分たちで動かした方が精神的に疲れない」と話し、「前線にパワーのあるタレントが空いたスペースを狙ってくるが、(パスの)出し手にプレッシャーをかければ受け手をラインで消せる」と、あくまでも自分たちからアクションを起し、主導権を握る戦い方を徹底した。また、攻撃では山形の組織的な守備を崩すのは難しいと語るも、「立ち位置を考え、チームとして組織的に崩したい」と、組織には組織で対抗することを明かした。
勝てばJ2通算150勝のメモリアルゲームとなる。ホームチームとしては是が非でも勝利したい試合だ。
一方の山形は、3試合連続ドローで足踏みしていたが、前節の福岡戦で勝利し視界がクリアになりつつある。生命線である守備にアグレッシブさが戻り、敵地でありながら運動量も落ちず、球際での強さを発揮し零封した。課題である決定力不足は改善されてはいないが、ここ数試合はシンプルにボールを動かすことで中島裕希、山崎雅人らから迷いは消え、彼らにラストパスを供給するディエゴとも呼吸が合うようになっている。実力者が本来の力を発揮すれば一気に上位戦線に顔を出しそうな雰囲気がある。
気になるのは、2試合続けて九州でのアウェイゲームであること。移動の負担もさることながら、九州独特の蒸し暑さに対応できるかも勝敗を左右しそうだ。体力を温存しラインを敢えて下げるのであればこう着した試合展開が予想されるが、前節のように試合の主導権を握ろうとするのであれば、ハーフウェーラインを挟んで両陣の20m幅での密集戦が予想される。ひとつのスルーパスで得点が生まれるスリリングな試合になることも考えられる。
1999年から大分で指揮し、約3年で53勝を挙げた石崎信弘監督。目の前で大分のメモリアルゲームをお膳立てするつもりはない。大きな壁となることがチームへの恩返しと考えているはずだ。
以上
2014.05.30 Reported by 柚野真也
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