今節はＪリーグ１年生の讃岐と２年生の長崎によるフレッシュな対決となるが、讃岐は前節、ついに富山を２−１の逆転勝利で下してＪリーグ初勝利を上げる事ができた（ちなみに昨季、長崎がＪリーグ初勝利を上げた相手も富山）。しかも決勝点を決めたのは昨年まで長崎に在籍していた岡村和哉だ。長崎の高木琢也監督は熊本時代、岡村に対して１時間半クロスを上げ続けてシュート練習をさせたことがあるそうで、前節の岡村の決勝点について「あの時の成果がようやく出たな。一番警戒する選手は間違いなく岡村だろう」と冗談を言いながらも教え子の成長を喜んでいた。歓喜に包まれたチームは、そのままに勢いで長崎までやってくることは間違いない。

讃岐には岡村以外にも持留新作や山本翔平などかつて長崎に在籍していた選手も多く、「長崎を意識していつも以上の力で来るはず」（前田悠佑）。佐藤洸一も「高木和正さんなど知ってる人が多いチーム。もともと個人の力は高い選手が多いし、ここまではかみ合っていなかっただけ。勝利で勢いが出ているはずだ」と警戒する。また、出場は微妙だが、「アンドレアはボールを収めることに長けており、彼へ入るロングボールは讃岐の攻撃の基点になる」（下田光平）といった印象を持っている。ただし讃岐は、相手や試合によって戦い方を代えてくることがあり、３バックの長崎に対してはワイドでの数的優位を活かした試合運びをすることが考えられる。「長崎は讃岐にあわせるサッカーではなく、自分たちのサッカーをやる」（奥埜博亮）必要がありそうだ。

７戦勝ち星から遠ざかっているホームの長崎は、１年とはいえＪリーグの先輩に当たるためこの試合できっちり勝点３を取り、流れを引き戻すことが命題だ。長崎はここ２試合、先発の選手を大きく入れ替えて選手間の競争を促しおり、「チーム全体のレベルアップに繋がって、全員のモチベーションも上がっている」（前田）と言う。今節はCBの山口貴弘の累積警告もありDFラインの組み合わせも変わるが「選手が変わってもチームがやることは同じ。その中でそれぞれの特長を出せれば」（奥埜）と不安や気負いは全くない。

前節はアンラッキーなオウンゴールなどで岡山に勝利を渡してしまったが、チームは全く凹んではいない。サッカー自体も決して悪くない。雰囲気も悪くない。先週は練習後にバーベキューを行うなど様々なことを話し合う機会はこれまで以上に増えてきている。「最下位相手にきっちり勝利こそがチーム復調への一番の薬になる」（井上裕大）と燃えている。ただ、思い出す必要は全くないのだが、長崎は昨季11戦無敗という記録を作っているが、最下位だった岐阜に敗れた苦い経験を持つ。最下位だからといって気を抜くとまんまとやられてしまう。「叩き潰すような強い気持ちで行く」（前田）必要がありそうだ。高木監督は中盤の選手に対して「讃岐戦は受身にならずに思い切りの良いサッカーをすることが大事になる。飛び出しなどを期待している。半人前の選手たちだけど２人で1人前。ハードワークで2人前だ」とハッパをかけている。

監督の言葉を補足するかのように奥埜も「最近、自分は少し自信を失いかけていた。焦りから余裕のないプレーが多くなり、それがまたミスに繋がっていた。サッカーはメンタルが出やすいスポーツ。自分たちには心の拠り所としてハードワークというものがある。自信を持って思い切ってプレーしたい」とこれまで見たことのないような強い眼差しで語った。おそらく両者とも既に解決の答えを持ち合わせているはずだろう。

ようやく手にした初勝利を今節に繋げたい讃岐と、最下位を叩くことでどうにか自分たち本来の姿を取り戻したい長崎。フレッシュなクラブ同士の熱い戦いが期待できそうだ。

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2014.05.30 Reported by 植木修平