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【ヤマザキナビスコカップ 鳥栖 vs 清水】レポート:魅せた!鳥栖のポゼッションサッカー。予選突破に可能性を残す。敗れた清水は、次節に予選突破を賭ける(14.05.29)

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この日の鳥栖は、何かが違った。試合前から、何か違う空気が流れていた。選手たちにも、この日競技場に集まったサポーターたちにも。この、“何か違う”ものが、この日の鳥栖の勝因であり、ヤマザキナビスコカップ予選突破にわずかながらでも可能性を残すものだった。そして、今後の鳥栖のサッカーに新たなる可能性を見せたと同時に、鳥栖に関係するすべての人たちの“絆”を見せてくれた。
このレポートは、その“何か違う”ものをお伝えしたい。

「今まで、“やろうとしてしなかった”ことができた」とトップ下に入ったMF早坂良太は評価した。“できなかった”ことではなく、“しなかった”ことができたのである。彼らしいクレバーな表現だが、何をしたのかは、彼の言葉から察することができる。「後ろにパスを出せる選手もいるし常に見てくれているので、あそこ(トップ下)に入ったら常に動いてポジショニングを意識している」とのことだ。
パスを出せる選手とは、この日ボランチに入ったMF岡本知剛であり、センターバック菊地直哉のことである。2人に共通して言えることは、アジリティ(俊敏さ)とラストパスの精度の高さ。この2人が常に前線の動きを見ながらプレーをすることで、クサビのパスやDF裏へのロングフィードのどちらでも供給できる態勢を作っていたのである。したがって、「常に動いてポジショニングに気を付ける」(早坂良太)ことで、攻撃の厚みを作ることができていた。
岡本知剛は、「ヴィッセル戦で常にタテしか狙わなかったことを反省して」と、この試合の課題を自分に課していた。菊地直哉も、「僕とソンへ(呂成海)が結構フリーになっていたので、顔を上げてプレーすることができた」と冷静にピッチ内の状況をつかんでいた。
これだけプレーの選択肢を広げたら、他の選手たちの持てる力がさらに高くなる。MF藤田直之の展開力、MF金民友とMF水沼宏太のドリブルなど、今まで相手が恐れていたプレーが時間帯によって出し入れされることで、清水の足を釘づけにしてしまった。
そして、両サイドDF丹羽竜平と安田理大がより高い位置でボールに触れることで、鳥栖の得意とするサイド攻撃に迫力が増した。90分通してこの日の鳥栖のサッカーを安田理大はこのように評価した。「鳥栖っぽくなく、ポゼッションしてパスで崩すこともできた。これが後半戦につながっていけば、もっといいチームになる」と。

これだけ、鳥栖が思い通りにサッカーをすると、清水は苦しかっただろう。アフシン ゴトビ監督は、「メンタリティ、エネルギー、献身さ、どれをとってもダメ」とハーフタイムに選手たちに厳しい言葉を発していた。前半から、鳥栖のサッカーに後手を踏んでいたと感じていたのだろう。FW大前元紀も試合後に「相手のボールをどこに追い込むのか、相手をどうやってハメるのかがはっきりしなかった。蹴ってくる相手に対してはやりやすいけど、今日みたいにつながれると難しかった」と鳥栖のサッカーがいつもと違うことを感じていたようだ。この状態を最後方から見ていた菊地直哉が振り返った。「高いラインは清水のいいところでもあるし、鳥栖の狙い所でもある」と。清水にとっては、自分たちのサッカーを行うための形はできていたのだが、鳥栖がいつもと違う形で狙ってきたためにボールの取り所を最後まで絞り切れずに完敗を喫してしまった試合だった。

鳥栖の“何かが違う”1つ目は、ボールの運び方だったが、もう1つはメンタル的な面であった。この試合の前日に、センターバック呂成海の慶南FC(韓国)への完全移籍が発表されていた。彼にとって、ホーム最終戦となるこの試合は、日本における4年半というプロフェッショナルの雄姿を佐賀のサポーターに見せる最後のチャンスでもあった。派手なプレーはなかったものの、最後まで確実にボールを追い、身体を激しくぶつけ、ラインを高く保ち切った。最後まで彼らしいプレーを続けていた。
「性格もやさしいし、誠実ですし、与えられた役割を全うし、チームのために献身的に戦える選手」とは、尹晶煥監督の呂成海評である。そんな彼だからこそ、鳥栖の最終ラインで愚直なまでにボールを追い、身体を相手に激しくぶつけ、最後までラインを高く保てたのだろう。終了間際のセットプレーで、前線に上がった呂成海に対して、スタンドではソンへコールが自然発生していたのは、誰からも愛される選手だったことの証明である。「選手たちが、彼に色々な思いを持って戦ってくれたと思いますし、たくさんの人たちがいい形で送り出したいと集まってくださった」と尹晶煥監督がすべてを表現してくれた。いつもと違うサッカーと鳥栖に関わるすべての人の温かさを見ることができた試合だった。

彼は、ユニフォームを脱いでも好青年だった。いつも、何かしらの冗談を言ってくれる選手だった。大けがを負った時も、「明日からピッチに戻るよ」とウィンクしながら言ってくれたのが懐かしい。「ワールドカップのメンバーに名前がなかったよ」と振ると「秘密兵器は発表したら秘密じゃなくなる」と返してくれた。サッカーで築けた人間関係。彼からもらった思い出も、感動も、友情も、サッカーには欠かせない大事な要素。
ありがとう呂成海。
サッカーは、人と人をつなぐ言葉でもある。

以上

2014.05.29 Reported by サカクラゲン
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