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【ヤマザキナビスコカップ 甲府 vs 大宮】レポート:2連勝で甲府がグループBで首位に立つ。大宮はわずかな可能性を引き寄せる闘志をチームとして発揮できず(14.05.25)

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決勝トーナメント進出に向け、大宮に勝たないと何も始まらない甲府。ゴール裏から「勝って上に行こうぜ」という声が聞こえて始まった前半。キックオフのボールを甲府は後ろ方向のパスなしで盛田剛平のヘディングシュートに繋げた。公式記録のシュート数に入っているのかどうか分からないシュートだったけれど、今の甲府を支えているのはこういう姿勢。ウィングバックが闇雲に高い位置を取ってギャンブルをしているのではなく、相手ディフェンスラインの裏を効果的に狙いつつ高い位置を取り、ボールを失ってもそのまま前へのパワーを持って組織として奪い返しに行くこともできるようになっている。6分にはボランチ・稲垣祥のシュートが左ポストに命中するなど、序盤から決定機を作ることができていた。

大宮もフレッシュなので局面で上手さを見せていたけれど、甲府のGK・荻晃太が序盤に2度ほどキックミスをした場面以上の脅威を与えることはできていなかった。いつもはかけ忘れている、心の中にある“イイトコメガネ”をかけて展開を見ていたが、決勝トーナメント進出が厳しいなかで大宮の選手が高いモチベーションを見出すことに苦労しているのではないかという印象を持った。ただ、甲府が決められないまま時間が過ぎれば、大宮の個のレベルの高さを活かした一発を決められるという心配は常にしていていたが、それ以上のことが起こった。30分過ぎ、甲府のベンチ前がざわざわした感じになって、ドクターとトレーナーが出動準備を整えているのが目に入った。「だれ、だれ?」、「なに、なに?」とピッチを探すと、前節の徳島戦で右足シュートでゴール、左足シュートでゴール、あとヘッドで決めればサイクル・ハットトリックだった水野晃樹が怒りに満ちた感じでベンチの方に歩いてきていた。顔が赤く見えたので、「熱中症か?」と、スタンドもざわざわ。試合後に分かったのだが――マイルドな言い方をすれば――腿裏の筋肉系のトラブルだった。昨年から、コンディションが良くなるとケガに悩まされるということを繰り返していたので、受け入れがたい状況と自分自身に対する怒りや結果が出ていただけに悔しさなどが身体中に渦巻いていたのだろう。多くのファン・サポーターは水野が大好きだし、期待しているし、そこまでのプレーでは自身で決めるシュートチャンスもあったし、クリスティアーノを上手く使っていただけに本当に残念な離脱。

そして、石原克哉が水野に代わって投入(34分)された。その直後は流れが大宮に移る可能性もあると思っていたが、大宮のディフェンスラインのギャップに入って行ったクリスティアーノに対して、佐々木翔がディフェンスラインから入れたパスが通って、クリスティアーノの先制ゴールが決まる。クリスティアーノがようやく戦力化されたことを感じるゴールだった。41分には右ウィングバック・松橋優がペナルティエリア内で倒されて獲得したPKをクリスティアーノが決めて2−0となるのだが、クリスティアーノの戦力化と水野不在でも前半だけで2ゴールを挙げることができる“攻撃力”が印象的だった。

後半、大宮サポーターは「戦え大宮」の声でロッカーから出てきた選手を鼓舞する。大熊清監督は43分の横山知伸に続いて2枚目のカードとして山梨県出身の長谷川悠を投入する。大熊監督が投入した2枚は184センチ、187センチと高さのある選手で、城福浩監督は高さを活かしたパワープレーを警戒しつつ次の手を考えていた。甲府の2枚目のカードは松橋に代えて福田健介の投入で、これは消耗の激しいポジションの活性化が狙い。ただ、後半も甲府が主導権は取れていたが、奪ったボールを効果的な攻撃になかなか繋げなくなっていた。大宮がFW・長谷川のフィジカルアドバンテージを活かして前線から積極的な守備をしてきていたこともその理由の一つだと思うが、甲府のワントップ・ツーシャドーの距離感・バランスにも問題があったように感じた。城福監督は、大熊監督が3枚目に165センチのサイドアタッカー・泉澤仁を選んだことを見てから、盛田剛平に代えて河本明人の投入を決断する。

河本は、徳島にリーグ戦初勝利をホームでプレゼントした第10節で途中交代して以降、ベンチにも座れなかった。FWとしてエゴイスティックな面が足りずに、打てる時にシュートを打たないでパスしてボールを失ったりする判断の部分などを見つめ直すための年季奉公期間だった。その間、クリスティアーノの爪の垢を煎じて飲んだのかどうかは知らないが、久しぶりのフォルランヘアー・河本は躍動感があって良かった。エゴイスティックな部分はまだまだ出せると思うが、アディショナルタイムに決めた――駄目押しの3点目となる――ミドルシュートは及第を告げるゴールになった。ドリブルで突っかけて最初はパスの出し所を探していたそうだが、あそこで中途半端なパスを出していれば、もう一度年季奉公に出されるかもしれなかった。城福監督は、河本を入れてシャドーの守備を立て直して前への推進力を高めることを狙いとしていたので、この点ではしっかりと役割を果たしていたのだが、水野やジウシーニョが次節は確実に難しい中でシャドーで河本が攻撃面で決定的な仕事がやれるのならこれはいいニュース。ボランチ・新井涼平に代わって先発した大卒ルーキーの稲垣も良かっただけに、ケガ人の穴をチーム力の底上げでカバーできている印象。稲垣はカバーではなく、ポジションを奪うくらいの勢いもある。次節、ナビスコカップ第6節が甲府にとって最後のグループリーグの試合となり、ホーム山梨中銀スタジアムで06年以来の浦和戦(甲府より消化試合が1試合少なくグループ2位)となる。甲府は浦和に勝てばグループリーグ突破の2位以内が決まる大一番。水曜日のナイトゲームだが、少しでも多くのファン・サポーターと一緒に戦って決勝トーナメント進出を決めたい。

大宮(勝点13・17位)も甲府(勝点16・14位)もJ1リーグ戦に置いては残留争いをしているという点は変わらない。しかし、ナビスコカップのグループリーグでは大きな差がついただけでなく、間もなくやってくるワールドカップブレイクの入り方、何をどうすればいいのかという点では違う立場になってしまった。“イイトコメガネ”で見た大宮では22歳の泉澤の積極的なプレーが一番印象に残ったが、後半の序盤から中盤にかけて試合の流れをひっくり返せるかもしれないチャンスに奮起する選手がいたように思えなかった点は残念。決勝トーナメント進出の可能性がなくなったが、ナビスコカップ残り2試合をどう戦い、中断期間に繋げるのか。

以上

2014.05.25 Reported by 松尾潤
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