2週連続で同じカード、同じスタジアムでの対戦になったが、内容も結果も同じようにならないのがサッカーのおもしろいところ。今回は前後半で試合の流れが変わった中、神戸がしぶとく勝点3をつかみ取り、予選突破に望みをつないだ。
先週のリーグ戦第14節と比べると、清水はスタメンを1人だけ、神戸は4人を変更して臨んだ試合。清水のほうは連戦によるケガのリスクを考慮してノヴァコヴィッチをベンチスタートにして、大前元紀をトップの中央、竹内涼をトップ下に置く形に変更。神戸のほうはマルキーニョスとペドロ ジュニオールの2大エースが欠場し、外国籍選手はチョン ウヨンだけという形だったが、メンバー変更のマイナス面が大きく出たのは、意外にも清水のほうだった。
清水の前線4人でいちばん背が高いのは173cmの竹内で、4人の平均身長は168.5cm。それに対して神戸の両センターバックとボランチのチョンを合わせた3人の平均が、185.0cm。これでは空中戦で勝ち目がなく、これまでノヴァコヴィッチがいるときに機能していた前線にハイボールを当てて、そのセカンドボールから起点を作るという形は使えない。もちろん、それでもパスをしっかりつなぎながら組み立て、グラウンダーでクサビのパスを当てたり、コンビネーションでサイドを崩したりというやり方もできるが、神戸のほうが的を絞りやすくなったのは事実。清水のDF陣がロングボールを蹴ることをケアする必要がなくなり、ラインも高く保ちやすくなったため、中盤をコンパクトにして清水が縦にパスを入れるスペースをしっかりと消すことができた。
「相手も蹴るのをためらったりして、つなごうとしていたので、その分ボールを高い位置で取れていたと思う」とボランチで先発した橋本英郎が語ったのに対して、清水のほうは「クロスをむやみに上げても、相手のセンターバックは強いし、工夫していかなければいけないと思っていたけど、難しい面もあった」(吉田豊)と、ロングボールだけでなくクロスの入れ方という部分でも迷いが生じていた。
また、神戸はブラジル人選手が3人ともいない中で、逆に1人1人の意識が高まり「ひとつになれていた」(山本海人)という効果が現われて、攻守とも組織的に、選手同士も良い距離感で戦えていた。安達亮監督が「清水らしいサッカーをさせない」と語った具体的な内容は明かしてもらえなかったが、前半は清水らしいサッカーをさせなかったのは事実で、高い位置でボールを奪われる場面も、先週よりもかなり少なくなっていた。
逆に清水のほうは、戦い方に戸惑いがあったこともあって、「前半は献身さやエネルギーが足りず、自分たちのゲームができなかった」(アフシン ゴトビ監督)という内容。それらの相乗効果で、前半は終始神戸ペースで試合が進む。得点は、FKからのチョン ウヨンの無回転スーパーシュート(33分)による1点だけだったので、神戸としても攻め切れたという感覚はないかもしれないが、アウェイで先制点を取れたことは非常に大きかった。それにしてもチョン ウヨンのシュートは、清水サポーターの度肝を抜くワールドクラスの一発で、30m前後の距離があったがGK櫛引政敏は一歩も動けなかった。
だが後半に入ると、ハーフタイムでゴトビ監督に喝を入れられ、さらにノヴァコヴィッチと村田和哉という切り札2枚が加わった清水が息を吹き返す。ノヴァコヴィッチがトップに入ったことで攻撃の形にも迷いがなくなって、前への勢いも一気に高まり、立ち上がりから攻勢をかけて試合の流れを一変させた。そして63分には、村田のシュートがDFの手に当たってPKを獲得。これをGK山本に特徴を熟知されている大前ではなく、ノヴァコヴィッチが蹴って確実に決め、清水が同点に追いつくことに成功する。
その後も、清水が勢いをつかんで攻め立て、65分の村田のヘッド、70分の村田のシュート、74分の平岡康裕のヘッド、82分の大前のシュートなど何度もチャンスを作ったが、なかなか勝ち越し点を決めきれない。
一方、その猛攻に耐えていた神戸は、守るだけでなく冷静にチャンスをうかがい、こちらも少ない攻撃時間で決定機を作っていった。そして87分、1本目のCKから河本裕之が放ったヘッドは清水GK櫛引のファインセーブに阻まれたが、チョン ウヨンが蹴り直した左CKから岩波拓也が頭で決めて、絶好の時間帯に神戸が勝ち越し点をゲット。その後も冷静さを維持して清水の反撃を危なげなく抑えきり、ブラジル人選手に頼ることなく、チームにとって大きな自信となる1勝をつかんだ。
これでどちらも4試合を消化して、清水は勝点9、神戸は勝点6。予選Aグループはかなりの混戦となり、神戸にも予選突破の可能性が見えてきた。逆に清水のほうは、悔いが残るホームでの敗戦によって、残りのアウェイ2試合で勝点4を取らなければ苦しいという状況になり、先週で35歳になったノヴァコヴィッチを休ませることも難しくなってきた。ただ、予選をどこが勝ち抜くのかという視点から言えば、Aグループはますます混沌としておもしろくなってきた。
以上
2014.05.25 Reported by 前島芳雄
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