「よりアグレッシブにプレーしよう!」(横浜FC・山口素弘監督)、「ダイナミックなプレーをしていこう」(千葉・鈴木淳監督)という、両チーム監督のハーフタイムコメントが風船に針を刺したように動き出したゲーム。両監督が取った前半、後半の策がゲームに大きな流れを作りながら、その均衡は破れなかった。
前半は、まさに相手のストロングポイントを見ながらの探り合い。横浜FCは、裏に飛び出すスピードを持つ黒津勝ではなく、あえて右サイドの小池純輝を裏に走らせ、そこにロングボールを出すことで千葉のストロングポイントである中村太亮を牽制すれば、千葉も横浜FCの中心選手の寺田紳一へのチェックを厳しくする。その中でペースをつかんだのは、千葉だった。横浜FCのロングボールへの競り合いで勝利し、「長いボールを競ってこぼれ球を拾って」(鈴木監督)攻撃につなげる状況が続く。ただ、黒津が精力的にプレスバックし、しっかりブロックを作って守備意識を高く保つ横浜FCに対して、ある意味回させられる時間が続く。ロングボールを交えられながらも両チームともに陣形はコンパクトに保たれ、中盤でのプレスと切り替えの場面が続き、我慢の展開のまま前半は終了。得点の匂いがしたのは、14分松下裕樹のフリーキック、28分大塚翔平のミドルシュートがポストをたたいた場面のみ。明確に崩す場面はほとんどなかった。
そして、ハーフタイムに刺激を入れられて臨んだ後半。千葉が序盤に横浜FCのDFラインの裏を取る動きとドリブルを多用して切り崩す姿勢を見せる。対する横浜FCも48分に小池純輝がバックパスにアタックすると、走り込んだ黒津のクロスに寺田がフリーでヘディングの決定機。このプレーを皮切りに、試合は前半から一転して両チームが激しく攻め合う展開となる。この攻め合いでペースをつかんだのは横浜FC。黒津を中心としたプレスバックと松下裕と安英学のダブルボランチの協力で、千葉の組み立てを遮断し、左サイドを中心としたカウンターにつなげていった。その転機となったのは、横浜FCの守備の変更。前半のブロックを作る守備から、千葉の「0トップ」に対応する形で、ラインを高く押し上げた。前半は、ボールを奪っても黒津が孤立するシーンが多かったが、この変更により守備から攻撃への流れがスムーズになった。千葉も、山中亮輔、ナム スンウを投入し、パワーを加えようとするが、ケンペスを出場停止で欠く中で、新たな組み立ての形を作り出すことができずに横浜FCの守備を切り崩すことはできなかった。87分には、久々復帰の横浜FC・松下年宏がフリーでシュートを打つ決定機もあったが、これも枠を外し試合は終了した。
横浜FCにとっては、序盤の連敗のことを考えると勝点1でも足りない状況。その意味では、「非常に悔しい」(山口監督)試合。ゴールを決めるチャンスはあっただけに、それを決められない問題が残ったことには不満が残る。一方で、千葉を相手に体力面でも心理面でも90分落ちる時間が無かったという点は、ここまでの敗因の1つである試合運びでの一瞬の隙を解消する意味では収穫があったのではないだろうか。これも、トレーニングから昇格への意欲が落ちていない証拠。怪我で長期離脱をしていた松下年宏も途中出場で、ワンランク上の運動量、トラップ、パスを見せた。山口監督は「これで満足してもらっては困る。こういうゲーム、こういうプレーをやりながら自分たちは勝つんだという、勝ちきるんだ」と、本当の果実に向けてすぐに目線を切り替えている。次の群馬戦こそ、この試合の意味が問われる重要な試合となる。
千葉としては、やはりケンペス不在によるチームとしての攻撃バリエーションの減少が響いた形での無得点となってしまった。横浜FCの厳しいプレッシャーの中で、なかなかダイナミックさを出せなかった。ダイナミックさを出すための3人目の動き、ストロングポイントである中村のオーバーラップなど、今後の改善点が残った試合だった。ただ、無失点についてはDF陣の体を張ったプレーなど評価できるのではないだろうか。この勝点1を貴重なものとして、次への積み重ねていくことが必要だ。
後半のダイナミックな展開は、間違いなく見所のある展開だった。ゴールこそなかったが、両チームともに上位に上がっていく地力があることは十分見せられたのではないだろうか。次回の千葉ホームの対戦は真夏の8月10日(@フクアリ)。そこでの再戦も十分楽しみな試合となるだろう。
以上
2014.05.25 Reported by 松尾真一郎
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