「我々が決勝トーナメントという上を目指すという意味では、最後の機会だったと思う・・・」と前節の試合を終えて尹晶煥監督（鳥栖）は語った。前節は「ミスからの失点」（尹晶煥監督）で、敗れてしまった鳥栖だけに、今節はさらに厳しい状況に追い込まれている。「試合巧者の鹿島さん相手に、（失点）ゼロで進むというプランの中で、1点を失ってしまい・・・」と一度は追いついたものの最後に力負けを喫した渡邉晋監督（仙台）は、前節（第3節）の試合後に語った。

鳥栖も仙台も、予選リーグ突破の可能性は非常に低くなっている。今節の試合は、ともに意地の見せ合いと言った意味合いが強い。それでも、試合後にDF安田理大は「決勝トーナメント進出の可能性がある限り、全力を尽くすべきだと思うし、それがプロだと思います。可能性が少なくても俺は試合に出たい・・・」と全選手の気持ちを代弁してくれた。置かれている状況はともに厳しいものがあっても、負けていい試合はないはず。勝利を目指して熱い戦いを見せてくれるに違いない。

前節の鳥栖は、神戸の鋭い出足に持ち前の球際の強さを奪われていた。前線でボールを収めきれなかったのも、サイドを崩すことが少なかったのも、神戸のプレスにリズムを作り出すことができなかったのが要因だった。前節から中2日とコンディション調整が難しい試合となるが、ピッチに立つ選手たちには、安田の言葉を体現してほしい。2014FIFAワールドカップ ブラジル大会予備登録メンバーとケガ人、そして中2日での試合という状況の中で、勝点3を目指してどのような戦い方を見せてくれるのか楽しみである。
ワントップに強さと高さを持つFW豊田陽平はいない。左サイドから正確なクロスを入れるMF金民友もいない。代わりに入る選手には、豊田や金の代わりではなく、その選手の持ち味を見せてほしい。そうすることで、攻撃と守備のチームオプションが増えるはずである。

リーグ戦を2位で中断期に入ったことは、「何かしらのタイトルを取る」（尹晶煥監督）いい機会でもあるし、絶好のポジションにつけているわけで、中断期間明けには他のチームからのマークも厳しくなるはずである。チーム一丸となって戦う姿を見せる機会でもあるので、試合開始から鳥栖らしく激しいプレスをかけて欲しい。

対する仙台も、リーグ戦序盤に勝ちきれない(決めきれない)試合が続いた。しかし、リーグ戦を4連勝で中断期に入り、徐々に仙台らしいリズムを見せ始めている。前節のヤマザキナビスコカップ第3節鹿島戦では、60分にFW武藤雄樹が流れの中から得点した。仙台と言えば、相手を長短織り交ぜたパスで崩し、キッチリと決めてくるサッカーが持ち味なチーム。リーグ戦中断期前とヤマザキナビスコカップ第3節で仙台らしさを見せただけに、今節も面白いサッカーを見せてくれるだろう。

共に予選突破は厳しい状況ではあるが、今後に向けては大事な一戦となる試合。選手たちは、「可能性が少なくても俺は試合に出たい・・・」（安田）はずである。「決勝トーナメント進出の可能性がある限り、全力を尽くすべき」（安田）姿をスタジアムに見に行こう。

目の前にボールがあるのに、避けるサッカー選手はいない。ボールを相手ゴールにより早く、より正確に運ぶのがプレーであり、相手ゴールに突き刺すまでプレーは止まらない。そんな思いを22人がピッチの中で共有するサッカー。それぞれの想いの強さで結果を左右することもあり得る。一瞬たりとてボールから目を離してはいけない。ボールが止まることがないのがサッカーなのだから。

以上

2014.05.23 Reported by サカクラゲン