もはや難攻不落の鬼門になってしまったホームスタジアムを序盤のうちに攻略する、最後のチャンスがやってきた。2014FIFAワールドカップ ブラジル大会前最後の豊田スタジアムでの試合となる徳島との初対決は、なかなかにして名古屋にとっては緊張感のある試合となる。
好材料はある。2日前に大宮で披露した名古屋のプレーぶりは上々のものだったと言ってよく、前半こそ押し込まれる時間帯もあったが、全体としてはコンパクトな布陣で攻守に連動することができた。後半はダイナミックな展開から何度もチャンスを作り、不発に終わることの多かったセットプレーで2得点。連戦の疲労を軽減してくれるだけの内容と結果は得られたと言えるだろう。もっとも、西野朗監督にしてみれば1試合の結果にすぎず、良い出来だったのではと水を向けても「そんな楽観主義者じゃないよ、オレは。まあ、大宮戦の後半はよかったけど」と素っ気なかった。次戦が出場停止明けとなる小川佳純も「大宮の出来があまり良くなかったこともある」と話しており、チーム全体として油断も慢心もすることなく、徳島を迎え撃つ。
その徳島だが、ここまでの戦いを見るに、小林伸二監督らしい堅実なチームという印象だ。J2を戦い抜く上で必要な攻守における堅実さを重視し、守備ではリトリート、攻撃ではロングボールがその起点となる。リーグでは14戦で3得点・33失点で最下位と苦戦が続くが、組織の改善は進んでいると見るべきだ。また津田知宏や長谷川徹、青山隼、花井聖など名古屋の育成組織出身選手が多く在籍していることもあって、名古屋の選手たちの関心は強い。例えば津田に関して楢崎正剛が「ピッチで見たら笑ってしまいそう。でもシュートは上手い選手。名古屋にいた時の練習でも、それは思っていた」と話せば、小川も「(長谷川)徹が出てくれば得点したいですね。ビッグセーブをするし、キックも上手いGKですよ。たまにやらかすけど(笑)」と笑顔で話す。長谷川については楢崎も「水曜の試合に出てなかったでしょ。温存とか、そんなに偉くなったのかと(笑)」とこちらも柔和な顔で話していた。長谷川といえば2009年、AFCチャンピオンズリーグ準決勝第2戦でサウジアラビアの強豪アルイテハドとのホームゲームでのことが思い出される。負傷の楢崎に代わって出場した長谷川は2失点を喫し、試合は敗戦。当時21歳の長谷川は試合後、ゴール裏のサポーターの前で涙した。あれから5年。同期の吉田麻也が「こう見えてすごく考えてプレーするGK」と評されていた男は、成長した姿を名古屋の選手とサポーターに見せたいと意気込み、豊田に“戻って”くるはずだ。もちろん、それは他の元名古屋のプレーヤーたち全員に言えることだ。
どこか懐かしさと情が沸いてしまう対戦だが、それと勝負は全く別のもの。前述したように名古屋にとっては、序盤戦で豊田スタジアムに勝ち星をつける最後のチャンスなのである。たとえ相手が最下位だろうと警戒は怠らない。「徳島を下に見るつもりはない。それよりも今は自分たちが何をやるかでしょ」と語ったのは玉田圭司だ。現チームの攻撃の鍵を握る男はゲームメイカーとしての役割を自分に課し、周囲の期待に応える活躍を見せている。前節の大宮戦の前には「今はゲームをつくることが足りていない。チャンスがないと得点は入らない。だから自分がタメを作るし、マークを引き連れる」とチームのために身体を張る覚悟を見せていた。彼を筆頭に、名古屋は果敢な姿勢で勝利を追求する。ここ数試合でスタメンの座を確固たるものとした牟田雄祐などもその一人だ。現チームのキーポイントであるコンパクトフィールドの形成について、自分たちDFラインが押し上げることで貢献したいと考えている。「課題は多いけど、修正やトライすることを楽しんでいます。まだDFラインの中で自分だけが残ってしまうところがあるので、相手のくさびに対して戦って、リスクはあるけど押し上げるようにしたい」。徳島の生命線である前線へのフィードに対して厳しいプレーを心掛け、裏に抜けられるリスクもマネジメントする。徳島とすれば最大の狙い目との駆け引きは、見た目に激しく、玄人をも唸らせるバトルとなるはずだ。
また名古屋とすれば中2日という日程の中で、選手起用にも若干の変化が見られる可能性もある。小川が復帰したことでサイドハーフの位置には小川、松田力、枝村匠馬、矢田旭の4名が候補になるが、疲労を考えてもこれまでの信頼を考えても、出場停止明けの小川のスタメン復帰は濃厚と言える。一方で逆サイドの選択だが、矢田が大宮戦で「守備でもうまくできたし、今までで一番良い試合だった」と手応えをつかむパフォーマンスを見せており、指揮官の頭を悩ませそうだ。また運動量の多いサイドバックの位置にも入れ替えの可能性はある。矢野貴章が望外の順応ぶりを見せる右サイドには開幕からスタメンを張っていた田鍋陵太が名乗りを挙げる。ここ数試合は本来の攻撃的ポジションで起用されるも、本人は「サイドバックでもいいから、スタメンで出たい」と巻き返しの機会を狙っている。継続性とコンディショニングを天秤にかけ、西野監督がどのような選択をするかは一つの注目点だ。
「そろそろ豊田での悪い流れを止めるチャンス。ちゃんと勝たないと」と楢崎は言った。ヤマザキナビスコカップで生き残るためにも、ホームで味わう歓喜の味を思い出すためにも。名古屋はこの試合、絶対に負けられない。
以上
2014.05.23 Reported by 今井雄一朗
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