得点力不足に悩み続けたここ数年間のうっ憤を晴らすようなゴールラッシュを水戸は見せた。馬場賢治、三島康平、吉田眞紀人といったFW陣が爆発。09年第26節福岡戦以来の5得点にケーズデンキスタジアム水戸は興奮のるつぼと化した。前節の劇的な逆転勝利に続く、チームの勢いを象徴する勝利。J1昇格プレーオフ圏内の6位に浮上した。
結果的に5対1と大差がついたものの、「状況によっては逆の結果になっていたかもしれない」とバドゥ監督が振り返るように、両者が見せた内容に得点ほどの差があったわけではない。後半途中までどちらに転んでもおかしくない展開が続いた。
7分に水戸DFのラインコントロールのミスを突いて京都が先制するものの、32分にスルーパスに抜け出した馬場賢治がGKとの1対1を沈めて同点にすると、4分後には三島康平が小澤司のボレーシュートのこぼれ球を詰めて逆転に成功する。
後半、猛攻を仕掛けたのは1点のビハインドを負う京都。システムを[3-4-3]に変更し、徹底的に前線にボールを送り込み、水戸DFに圧力をかけてゴールに襲いかかった。そして73分にこの試合のターニングポイントが訪れる。ロングボールのセカンドボールに素早く反応した大黒将志がボレーシュート。鋭い弾道が水戸ゴールを襲った。だが、そこに立ちはだかったのがこの試合がJ2通算491試合目となる本間幸司。驚異的な反応でボールをはじき出し、ゴールを死守したのだ。
すかさず、柱谷哲二監督はけがから復帰したばかりの西岡謙太を投入。まだコンディション的に万全ではないものの、「水戸の頭脳」と称される頼れるボランチが入ったことで水戸は息を吹き返す。西岡がチームに安定をもたらし、バランスを取り戻したことによって「水戸の武器であるカウンター」(柱谷監督)が威力を発揮することとなった。そして79分、85分、90+1分にカウンターからゴールを重ねていった。
勝負の世界にタラレバは禁物だが、大黒のシュートが入っていれば流れは大きく京都に傾いていたに違いない。「状況によっては」とバドゥ監督が振り返る、数分間の攻防が両者の明暗を分けたのだ。
試合後、バドゥ監督は「すべては私の責任」と肩を落としたが、その表情には自分たちの戦いを貫いた自負も見られた。「私は実践したいと考えていることがあります。それは負け方。攻撃して負けるということです」。後半、京都は同点ではなく、逆転を狙って猛攻を仕掛けてきた。次々と攻撃的な選手を投入して攻撃に厚みを加え、水戸をあと一歩まで追い込んだ。しかし、水戸の粘り強い守備をこじ開けることができずにカウンターの餌食となってしまった。とはいえ、あくまで理想を追求したゆえの大敗だけに、決してチームに暗い影を落とすものにはならないだろう。バドゥスタイルを構築するための戦いは続く。
これまでゴールから遠ざかっていた三島康平が2得点の大活躍を見せ、内田航平もプロ初ゴールを決めた。また、前節に続き、吉田眞紀人がスーパーサブとして存在感を発揮。新里亮と金聖基の若いセンターバックも柔軟なラインコントロールで大黒将志を抑えてみせた。さらにけがで2ヶ月間離脱していた西岡謙太が復帰するなど、水戸にとっては点差以上に明るい材料の揃ったゲームとなった。
とはいえ、選手たちの口からは「全体的にプレーがよくなかった」(内田)「ロングボールがかりになった後半のボールの動かし方は課題」(本間)と課題が多く聞かれた。大勝に満足している様子はなく、「まだまだこれから」とキャプテンの本間は気を引き締める。勝って兜の緒を締めよ。これからも今までと同じく足元を見つめながら、継続して自分たちのサッカーを高めていかなければならない。慢心が出たら、すぐに下位に沈むことだろう。その危機感を持って、これからも変わらずに前に進んでいきたい。
以上
2014.05.19 Reported by 佐藤拓也
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