「スカウティングで札幌のセンターバックがマークしている選手に食いつき気味という話があったので、背後を狙っていた」(井出遥也)千葉の狙い通りの形のゴールだった。34分、右サイドに流れていた左サイドハーフの谷澤達也が、札幌のディフェンスラインとGKの間に浮き球のパスを出す。谷澤と入れ替わって左サイドへ回っていた井出遥也が「ヤザ(谷澤)さんが顔を上げた瞬間にボールが出てくると思った」とフリーでゴール前へ飛び出し、ボールがワンバウンドした直後に左足のインサイドのシュート。井出のプロ初ゴールが千葉に流れを引き寄せる先制点となった。
両チームともディフェンスラインを高くして全体をコンパクトにした戦いで目立ったのは、互いに相手のディフェンスラインの背後を狙う攻撃。千葉は2分に井出のパスを大塚翔平が、6分には谷澤のパスを井出が相手の裏のスペースに飛び出して受けるが、いずれもミスでシュートまで持ちこめない。それでも相手の背後を突く動きとパスがタイミングよく出ないことが多かった千葉には、ダイアゴナルランを含めた飛び出しとそこを狙ったパス、さらにそれが単発なロングパスではなくショートパスでのつなぎやサイドチェンジも絡んだ攻撃の組み立ての中で出てくるのは、攻撃面での良い兆しだった。
一方の札幌は、試合開始早々に前田俊介の縦パスに反応しながらもシュートにいけなかった都倉賢が、18分には砂川誠のロングパスを受けると千葉のDF山口智をかわしてシュート。カバーに入った千葉のキム ヒョヌンとGK岡本昌弘に阻まれたが、この場面で札幌が先制点を奪っていたら、結果は違ったものになっていたかもしれない。
今節の千葉は選手の距離感が攻守ともに良かった。札幌のプレスがあまりきつくなかったこともあり、千葉は連動してパスをつなぐことができ、適切な距離でカバーし合ってセカンドボールを拾った。25分のケンペスのミドルシュート、32分のCKからの山口智のヘディングシュートという2つの決定機が、25分は札幌のGK金山隼樹の好守で、32分はクロスバー直撃で得点とはならなかったが、3つ目の決定機を井出が見事にモノにした。
札幌は65分から次々と選手交代を行ない、76分には負傷箇所が回復した千葉キラーの内村圭宏がピッチに入った。だが、ちょっとした状況判断のミスやプレーの精度不足が重なるなどして、チャンスになりそうな場面でもなかなかフィニッシュまで行けない。結局、後半の決定機はゴールポストのわずか横に外れた52分の上里のミドルシュートだけ。今季初の連敗となって、左サイドバックの上原慎也は「前に前にというアグレッシブなプレーを心がけていたし、今日は上里選手がいたので自分がボールを引き出すために走ったんですけど、決定的な仕事がなかなかできなかった。前田とはどこにクロスが欲しいという話もしていたし、高さのある都倉もいたのにクロスが得点に結びつかなかったのは自分の責任だと思うので、これからもっと練習したい」と振り返った。
千葉は後半、カウンター攻撃も含めて何度も得点チャンスを作ったが、シュートの精度不足や金山の好守で追加点はケンペスの1点のみ。勝ちきって得失点差をプラスに増やすためにも決定力アップは必要不可欠だ。また、今季はセンターバックで出場してきた大岩が今節はキム ヒョヌンよりも試合経験が豊富な右サイドバックに入り、キム ヒョヌンとポジションを入れ替わった効果もあったか、守備は大崩れすることなく無失点だった。
フクアリでの勝率の高さから札幌サポーターに『俺たちのフクアリ』と言われたこともあったが、今節は千葉にとって『俺たちのフクアリ』だった。だが、山口智や谷澤が話したように、プレッシャーが厳しい相手にも「これくらいはできて当たり前」で「これを普通にできないといけない」攻守のレベルのチームにならないとJ1昇格達成は難しい。
以上
2014.05.19 Reported by 赤沼圭子
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