この仙台vs広島の公式記録におけるシュート数は11対13なのだが、前半は2対2、後半は9対11と大きな差がある。この数に限らず、静かな前半と激しい後半という展開だったこの試合は、前後半それぞれに見応えがあった。
立ち上がりは「まずはしっかりした守備から入り、失点ゼロで推移しながら、勝負どころをしっかり見極めて、攻撃をしかけるゲームプラン」(渡邉晋監督)「入りは非常に良かった。ボールを握りながら縦を突くことができた」(森保一監督)と両監督の思惑通りに進んだ。ともにボールを奪われてからの帰陣が速く、シュートに持ちこまれる前にボールを奪い取る形で試合が進んだ。
この静かな前半を賑やかにしたのはホームチームだった。16分、スペースを見つけた太田吉彰の右サイド突破は森崎和幸に阻まれたものの、仙台は相手ゴール近くで右スローインを獲得。ここで広島に一瞬の隙が生まれた。菅井直樹のスローインをウイルソンが素早くつなぐと、その先にいた赤嶺真吾が相手DFから少し引いてボレーシュート。本人によれば「一瞬の判断だった」というこの見事な一撃が広島DFとGK林卓人の反応を上回り、ゴールネットに突き刺さった。
これで試合が動くと、1点を追う広島はそれまでより前にポジションを取って反撃開始。清水航平の左サイド突破を中心にチャンスを作ったが、なかなかシュートまでは持ちこめなかった。
仙台も最終ラインを上げようと試みるが、広島のパスワークの前にオフサイドを取れず。角田誠が「三人目の動きで崩されたシーン」と振り返ったように、31分には連係から森崎浩司に抜け出されるピンチがあったが、これは関憲太郎のセーブで事なきを得た。
なかなかフィニッシュに至らない前半から展開が変わったのは、ハーフタイムに広島が動いたことがきっかけだった。14日にACLを戦った広島は疲労を考慮して青山敏弘をベンチに置いていたが、後半から塩谷司に代えてその青山をボランチに投入。これにより森崎和が「ビルドアップで厚みができる」(森保監督)ことを期待されて最終ラインに入った。
この効果もあり、後半は前半以上に広島がボールを支配して仙台に迫る。競り合った後のこぼれ球や、仙台のクリアボールを次々拾って、サイドに展開。清水やミキッチが相手のディフェンスをかわして何度となくクロスを送り、遠目からも森崎浩や佐藤がシュートをねらっていった。
しかし仙台はこれに耐えた。後半は、引いていたというより押しこまれていたと言う方が正しいくらい自陣でのプレーが多くなっていた。渡邉監督は「後手に回るシーンが多くなった」と反省。しかしクロスを上げられても角田や渡辺広大が相手より先に触ってゴールを許さず。また、関が広島のクロスやシュートのコースをよく読んで好セーブを連発したことも大きかった。
そして仙台は押される展開の中でも、カウンターから2トップを中心にシュートチャンスは作っていた。しかしシュートミスと林の好セーブもあって、追加点を奪うことはできず。1点差の緊張感のなかで試合は続いた。
ACLの疲労もありながら最後まで攻め立てた広島と、我慢して守ってカウンターをしかけた仙台が激しくボールを動かした後半は、ゴールが生まれずに終了。これにより、仙台が1-0で逃げ切り、2012年に達成して以来のリーグ戦4連勝を記録した。
序盤のつまずきから「持ち直してきた」(赤嶺)仙台が苦境を乗り切ったことも、連戦で苦しい状況下でも広島がゴールを目指して走り抜いたことも、この勝負を最後まで目の離せないものとした。かつて仙台でプレーした森保監督が「こういうなかでサッカーができたことを幸せに思いました」というユアテックスタジアム仙台の雰囲気を作った18863人にも、TVなどでこの試合を視聴した人にも、リピーターが増えることに期待したい。仙台と広島のリーグ戦における次回対戦は、最終節。その頃までに両者がさらに成長していることにも期待したい。
以上
2014.05.19 Reported by 板垣晴朗
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