どちらにも勝つチャンスはあったが、勝点を2つ失ったという意識がより強いのは、ホームの清水。試合内容やチームが置かれている状況を考えれば、5試合ぶりの勝利を逃したことが本当にもったいないゲームだった。

清水は足の打撲を抱えた河井陽介に代えて高木俊幸を先発させ、神戸はセンターバックの1枚を増川隆洋から岩波拓也に代えた以外は、どちらも前節と同じスタメンで臨んだ両チーム。公式記録では23.1度だが、強い日差しが照りつけるピッチ上はかなりの暑さを感じたはずのアイスタで、立ち上がりからどちらも集中した入り方を見せた。

まず先制パンチを放ったのはアウェイの神戸で、開始5分の右CKのこぼれ球からマルキーニョスが決定的なシュートを放ったが、これはゴールカバーの吉田豊がブロック。さらにそのこぼれ球から河本裕之がシュートしたが、これもGK櫛引政敏が好セーブ。2回続いた大ピンチを何とかしのいだ清水だが、その後は徐々に自分たちのリズムを作っていき、左ウィングに入った高木俊が、20分と21分に裏に飛び出してチャンスを作ったあたりから流れは清水に傾いていった。
清水はチーム全体の組織的守備が安定し、神戸にポゼッションされても縦パスを入れるスペースはしっかりと消していたため、押し込まれる場面が少なく、逆に高い位置でボールを奪ってショートカウンターで攻めるシーンも目立った。それに対して神戸のほうは、「ボールを奪ったときにすぐに失うケースが多かった」（大屋翼）とミスが目立ち、なかなか攻撃の糸口をつかめない。裏へのボールや飛び出しによって清水DFラインを下げさせるという狙いも少なく、清水側の視点から見ればあまり恐さのある攻撃ができていなかった。ただ、清水のほうもペナルティーエリアの近くまでは良い形で持っていけるものの、そこから最後の崩しに関してはアイデアやコンビネーション、クロスの精度などがもうひとつで、元清水のGK山本海人を慌てさせるような場面はなかなか作ることができなかった。

そうして0-0のまま折り返した後半は、開始3分にカウンターからノヴァコヴィッチが惜しいシュートを放つなど、清水がさらに攻勢に出たが、やはり100％の決定機まであと一歩という状況が続く。そうして内容が良い中で攻めきれない流れが続くと、その先に落とし穴が待っているのは、サッカーではよくあること。後半16分、神戸がペドロ ジュニオール、森岡亮太の個人技で中央を攻略し、最後は森岡のヒールパスから小川慶治朗が左足シュート。これが見事にゴール右隅に決まり、ワンチャンスを生かした神戸が貴重な先制点を奪った。
だが、清水もここからホームの意地を見せる。失点の5分後にカルフィン ヨン ア ピンの左ロングスローがゴール前に流れたところをキャプテン杉山浩太が気合のヘッドで押し込み、同点に追いつくことに成功。その後もさらに攻勢を強めて、神戸がクリアしたボールもよく拾って押し込む時間を多くしていった。

こうした展開になると、神戸の2大エース、ペドロ ジュニオールとマルキーニョスの個人能力を生かしたカウンターが恐いところだが、そこもボランチの六平光成を中心に早い段階でカウンターのリスクを摘み取り、付け入る隙を与えないまま最後まで攻め続けた。ロングスローも含めたセットプレーの回数も多かったが、そこでもなかなか決定機を作れず、アディショナルタイムには最近のパターンであるDF廣井友信を前線に投入するパワープレーも試みたが、その中で得たFKからノヴァコヴィッチが放ったシュートがわずかに外れたところでタイムアップの笛。清水は前節の広島戦と同様、先制されてから追いつき、2点目を決めきれずに1-1のドローというパターンで、5試合勝利なしのままリーグ中断を迎えることになった。

「試合の内容から言うと、勝点1が妥当なのかなと」と安達亮監督が試合後に語ったように、神戸が本当の決定機と言える場面を作ったのは、前半5分のCKと後半の先制点の場面だけ。けっして自分たちのサッカーができたとは言えなかったが、それでも限られたチャンスをしっかりと生かし、守ってはGK山本海と河本裕之、岩波拓也の両センターバックを中心に、清水のセットプレーやクロスからの猛攻を1失点のみに抑え切ったことは、今季のチーム力を物語っている。
一方、悔やまれるドローとなった清水は、広島戦ではチャンスを作りながら「決めきれない」という印象だったが、今回はそれ以前に「攻めきれない」という印象のほうが強かった。ここは中断期間で修正しなければいけない部分だが、1週間後（5/24）にはヤマザキナビスコカップ予選リーグでまた同じ神戸とアイスタで戦わなければならない。この試合を踏まえて、来週はどちらが勝ちきれるサッカーを見せられるかが注目される。

以上

2014.05.18 Reported by 前島芳雄