浦和は５−５の枚数合わせで守備的に戦ってくるチームのいなし方が随分と板についてきた。前半は、それこそラッキーパンチも許さないような戦いぶりだった。

フォルランを前に１枚残す５−４−１のフォーメーションで守りを安定させようとするＣ大阪に対し、浦和は後方から丁寧にボールを回して相手を押し込んだ。Ｃ大阪の前線数人がプレスに来たとしても、浦和の守備陣はＧＫ西川周作を含めて数的優位を確保できるので簡単にいなせる。だから次第にプレスに来なくなる。そして浦和は引いた相手を押し込んでいくという流れだった。浦和に対してプレスを掛けるなら、もう少し人数を掛けながら連動してサイドに追い込んで手詰まりを起こさせないと意味がない。

そして浦和がサイドの高い位置までボールを運べば、２列目に入っていた柿谷曜一朗や南野拓実は自陣深くまで守りに戻らざるを得ない。仮ににその流れでボールを失ったとしても、柿谷や南野はゴールから遠い位置にいるため怖くないし、前へのパスコースがフォルラン１つしかないので安心してすぐにプレッシャーを掛けに行ける。そこでフォルランに縦パスを出されてもサポートがないから潰しに行きやすい。
「前半はスパーリングパートナーみたいだった。自分たちがボールを奪ってもすぐに奪われる回数が多かった」。Ｃ大阪のランコ・ポポヴィッチ監督は４５分間をそう振り返った。
浦和がボールを持って攻める。ボールを失ったら素早い攻守の切り替えでプレッシャーを掛ける。ボールを回収してまた攻める。前半はそのパターンの繰り返しでＣ大阪にほとんど何もさせなかった。もちろんＣ大阪がガッチリと守りを固めていた分、浦和もなかなかチャンスは作れなかった。でも、今年の浦和はそこで慌てたりはしない。焦って攻め急ぐと痛い目を見るのがわかっているからだ。相手にチャンスは与えず、こちらにチャンスが転がってくるまで焦れずに戦う。そういう試合運びができていた。

しかし、さすがはリーグ屈指の攻撃タレントを擁するＣ大阪だ。前半はまったくいいところがなかったものの、後半に入るとチャンスを作る場面が出てくる。ペトロヴィッチ監督は「セレッソに今日はほとんどチャンスはなかったと思っています」と振り返ったが、実際にはいくつかピンチの場面はあった。66分には南野が左サイドから鋭いシュートを打ち、その直後にも左サイドの崩しから山口蛍がゴール前で危険なシュートを放ち、その数分後には南野がＧＫ西川を脅かすシュートを打った。終了間際にも決定機は作っている。
試合の主導権を握っているのは浦和で、柏木陽介がバー直撃のシュートを放つなど決定機も作った。しかし、Ｃ大阪もチームとしてチャンスメイクができないなかで、個の一瞬の煌きで見せ場を作る。そういう意味では、どちらに転んでもおかしくない試合だった。

そんな試合を動かしたのは途中投入の関根貴大だった。77分、右サイドでボールを持った関根は柏木とのワンツーから裏に抜け出すと、スピードに乗った状態で右足トラップ、即座に左足でフィニッシュという難易度の高いシュートを決めた。
値千金の先制弾を決めてヒーローになった関根は、間違いなくチームに勢いをもたらした。ただ、同時にアキレス腱にもなっていたことには触れておきたい。「守備に回ったところで課題が多いなと思った」と本人も自覚していたように、守備対応でハラハラさせた。たとえば得点直前の場面では、丸橋祐介とのマッチアップであわやＰＫという危険な対応をしていたし、得点後にも１度、ポジショニングのまずさからサイドを破られるシーンがあった。関根のいた右サイドは、いい意味でも悪い意味でもキーポイントになっていた。
しかし、ペトロヴィッチ監督もそんなことはお見通しだった。だから試合終盤、宇賀神友弥が足を痛めて苦しそうにしていたにも関わらず、指揮官は平川忠亮を投入する際に宇賀神ではなく原口を交代させ、平川を関根のいた右サイドに持って行き、関根をシャドーに移した。一番危ういところをきっちりとケアしたのはさすがだった。

浦和は５試合連続クリーンシート（無失点）で首位ターンが決定。攻めあぐねている時でもバランスを崩さずに我慢してチャンスを探り続けるという今年の取り組みを継続できており、結果も付いてきている。ここで中断期間を迎えるのはもったいないと感じられるくらい、選手たちは充実した時間を過ごせている。

以上

2014.05.18 Reported by 神谷正明