アイデア豊富なセットプレーやバドゥ監督のキャラクターで注目を集める京都だが、現在繰り広げている内容自体も注目に値すると言えるだろう。第11節讃岐戦から3連勝中。チームの戦術が浸透しだし、選手個々の能力を発揮できるようになっている。
特に類まれな能力を発揮しているのが元日本代表FW大黒将志である。13試合で11得点という驚異の得点力を誇り、現在3試合連続ゴール中。連勝の立役者となっている。サイドから早い段階でクロスを上げることで相手のDFラインを押し下げ、空いたDFとMFのスペースで起点を作って厚みのある攻撃を繰り出すなど、大黒を生かした攻撃がチームとして威力を発揮している。今節も「J1でも通用する」(柱谷哲二監督)強力な攻撃力を生かして4連勝を狙ってくることだろう。
その京都に対して、水戸はどう出るか。「アグレッシブに戦う」。それが選手たちの答えだ。前節岐阜戦、劇的な逆転勝利をおさめることができたが、試合内容に納得している選手はいない。前半、相手の積極的なプレスに押し込まれて消極的な戦いに終始してしまった。後半は積極的な姿勢を前面に出して3点を奪うことができたものの、「前半のような試合をもう2度と繰り返してはいけない」と選手たちは合言葉のようなに力強く口にする。
90分間、前節の後半のような戦いを見せる。それが今節の水戸のテーマだ。そのために大事なのはメンタリティーである。「後半のようなサッカーを続けるのは大変だけど、そういうサッカーをしようとするメンタリティーを持ち続けないといけない」と馬場賢治は力を込める。今節、当然、耐える時間も長くなることが予想される。それでも常に虎視眈々と流れを取り戻す意識を持ってプレーすることが求められる。
中でもポイントとなるのは「最終ラインの駆け引き」と「ボランチの展開力」だ。大黒は常に最終ラインの裏を狙おうとギリギリの動きを見せてくる。それに対して、引きすぎてしまったら相手の思うつぼだ。ラインの駆け引きで主導権を握り、ラインを適度な高さに保ち、大黒に隙を与えないようにしたい。そのためにもDF陣の呼吸を整えなければならない。新里亮と金聖基の若いセンターバックのリーダーシップに期待がかかる。
そして、「柱谷サッカーの肝」であるボランチのプレーにも注目したい。京都のシステムは4−3−3が予想される。3トップが最終ラインにプレスをかけてボランチに入るボールを限定させ、入ったところで2列目に2人が奪いに行く。そこから攻撃に転じるのが京都の狙いだ。だが、そこでボランチがボールを受けるのを怖がり、さらに縦にボールを入れられなくなったら、水戸のサッカーは成り立たない。そしてボランチのところで打開できれば、京都の守備は手薄となっていることが多く、チャンスにつながることだろう。ボランチが恐れずにボールを受け、積極的に前への推進力を出すことができるか。2人の「勇気」が水戸の命運を握っていると言っても過言ではない。
思いだしたいのは昨季第41節、水戸のホーム最終戦での対戦。京都の攻撃力に序盤は苦しみながらも水戸は積極性を失うことなく、後半に勝ち越しゴールを決めて勝利を手にした。決勝ゴールは左サイドバックの輪湖直樹(現柏レイソル)からのクロスを右サイドバックの石神幸征が押し込んだもので、積極性の象徴とも言えるゴールであった。あの試合のように積極性を前面に出した戦いを見せなければならない。前節は後半45分間“水戸らしさ”を発揮できた。今節、90分間持続させることが勝利の条件となる。
両者の積極性がぶつかり合う今節。果たして試合後に見られるのは歓喜のラインダンスか、それともバドゥダンスか。より積極的に戦ったチームの“舞い”が披露されることだろう。
以上
2014.05.17 Reported by 佐藤拓也
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