川崎Fは風間八宏監督が推し進めるパスサッカーに磨きをかけ、Jリーグの中でも違いを出せる存在になりつつある。その川崎Fのパスサッカーに対抗する方法論として、より多くの枚数を守備に割くやり方は、それなりに効果的だ。たとえばまさにFCソウルがそうだった。FCソウルは、最終ラインを3枚にし、さらにその左右両ウィングバックを最終ラインに落として5バックを形成し、4枚の中盤を最終ラインの前に配するという形で守備ブロックを作っていた。その守備陣形は、戦術的に守るというよりも人数を掛けていれば守れるだろう、という考えで作られていた。
もちろんどちらのチーム作りが簡単かというと、守備を固める方なのは間違いない。何故ならば、守備を固める側は受け身でOKだからだ。相手が構築する攻撃を壊せばOK。20本のパスをつながれても、1本のチャレンジでその攻撃を壊せば、守備の目的は達成されるからだ。
だからこそ、攻撃を一から作るのは大変である。たとえば19本までパスを繋いで相手エリア内に入ったとしても、フィニッシュにつながる最後のパスをミスしたら、全てはやり直し。その20本のパス全てをミスなく繋ぐためには、基礎技術はもちろん、チームメイト全員が戦局に対して同じ目を持つことが求められる。
だからといって、守備重視のサッカーを賞賛する気にはなれない。自分たちが理想とするサッカーの形を想定し、その理想を実現するために必要な技術を練習する。その一方で、その技術を将来発揮できるよう若い子供たちを教えていく。そしてそれらの技術を思う存分発揮できるよう、芝や練習場といった関連施設を整備する。もちろん一番大事な指導者の育成も怠れない。そうやって考えると、何か理想のサッカーを成立させるには気の遠くなるような下積みが必要で、ただそれらの下積みは将来的に大きな花を咲かせるためには間違いなく必要な先行投資だということもわかる。
今年のACLにおいてJリーグ勢は、ラウンド16までで全4チームが敗退となった。良いサッカーかどうかは主観にもよるが、強い、弱いという基準で見た時にまだJリーグ勢は強さ、勝てるサッカーを身につけられていない。ただ、それはサッカーへのアプローチが他国とは違うだけで、世界と対抗するためには、時間がかかるサッカーを貫いていくしか無いのだとそう思う。
そういう文脈で考えた時に、今すぐ結果を出す事を必ずしも求められていないtotoの助成金という存在は大きいと思う。時間はかかっても、理念に投資するtotoの姿勢はこれからも継続してもらいたいと思う。
それにしても、今年もACL、残念でした。来年こそは!
以上
2014.05.15 Reported by 江藤高志(川崎F担当)