前半と後半で内容が大きく転換したゲームは、京都が大黒将志の３戦連続弾も飛び出し激戦を制した。
メンバーは、長崎は黒木聖仁を一つ前に上げ、前田悠佑をボランチに起用。左サイドには野田紘史を配置した。京都は前節と同様。
ゲームは、長崎のプレスに京都がてこずるという形だった。だが９分には、京都の右サイドバック・石櫃洋祐のクロスに大黒が頭で合わせて、京都がスタジアムを沸かす。さらに13分、右サイドのスペースに流れた三平和司からクロスが入ると中央に大黒。このボールには触れず、ＤＦに当たったボールが長崎ゴールに吸い込まれそうになるが長崎ＤＦがクリア。長崎に手こずる京都の決定機はこの２本。
長崎は、速いプレスで京都のリズムを崩すとピッチを広く使い、サイドのスペースへシンプルに送る展開。そこでクロス、ＣＫ獲得で、京都ゴール前に迫った。だが決定機が作れない。

後半に入り、京都が早々にスコアを動かす。後半1分、右の石櫃がパスカットからドリブルに入り、クロスを入れると中央の大黒の前でＤＦがカット。これで高く上ったボールを三平がボレーで決めて京都が先制。
これで落ち着いた京都がボールを支配し、長崎陣内へ攻め込む。後半6分には横谷繁のパスを三平が胸トラップで相手をかわしシュート。
その直後に、長崎・黒木が京都ＤＦの裏へ走り込みフィニッシュまで持ち込み、その後もＣＫから頭で合わせるも枠を捉えることは出来なかった。
京都は、相手のスペースを使える様になると、途中出場の山瀬功治が左サイドで飛び出し、パスを受けると一気に長崎ゴール前へ。シュートも打てる状態で長崎ＤＦを引きつけつつ、大黒へラストパス。シュートは精度を欠いたが、ラインを上げてボールを奪おうとする長崎の逆手を取る攻撃を見せる。

そして40分、長崎が前にボールを跳ね返すと、それを奪った京都が前線の大黒へ。大黒は相手がＤＦ一人と判断すると果敢に仕掛ける。これを長崎ＤＦが倒してしまい京都はＰＫを獲得。これを大黒がきっちり決めて京都が２−０とする。結局このスコアのままタイムアップ。京都が今季初の３連勝を飾った。

試合後、長崎・高木琢也監督は、これまでの京都との戦いを振り返りつつ「内容は比較的に我々の方がいい中で全てが敗退というのは悔しい」と心境を語った。クロスの数は相当数にのぼる、だから、次はそれをどう仕留めるかという修正点は絞れている感じはする。
京都は前節、横浜ＦＣ戦でもクロスを何度も入れられた、だが、ことごとく跳ね返した。センターバックの強さもあるが、個人的には横浜ＦＣの中央の工夫のなさは指摘されるべきだと思う。唯一、65分の野崎陽介のヘディングシュートの場面で京都は相手をノーマークにしてしまったが、その時の野崎の動きは映像で見直すと抜群だった。中央からやや左に出るふりをして、マイナスへ。この動きでマークを外している。他にも京都は湘南戦でサイドからクロスを入れられ決められている。これもＦＷはマークを外す動きをしていたはず。だがこうした決定機以外のクロスは単純な「放り込み」ばかりで、あまり可能性は高くないと感じている。
少し前なら逆サイドが入ってくるやり方もあったが、今は京都もそうしたクロスへの対応意識も高くなっている。そうなると、次はどんな手でクロスを仕留めるプレーを出すのか。こうしたこともアイデアとなるし、或いは、基本のアレンジ、となるだろう。逆に京都はそうした相手でも守り切る判断力や観察力を養う必要があるし、そういう相手との対戦を楽しんでもらいたいとも思う。

京都の１点目は、相手ＤＦの態勢不十分な中でのクリアのこぼれからだが、讃岐戦での４点目も同じ原理だと思う。なぜ、相手は態勢不十分だったのか？ここから学ぶべき点も、攻守に渡り、多い様な気もする。

京都は３連勝で、そこは大いに評価したい。だが、まだサッカーを自在にコントロールしているとは言い難いだろう。中山博貴が前半の戦いについて「前にボールを入れられなかった」と口にしていたが、長崎のプレスが良かった点ももちろんあるが、陣形態勢の良い状況の長崎相手に、強引に縦に送るという選択以外にも、一度横に振って揺さぶりをかけてから縦、という選択肢もあったのではないかとは思う。逆サイドのスペースを使って一気に攻めるということではなく、逆サイドのスペースを使って相手を揺さぶるという考え方である。そして生まれたスペースへ飛び出す―。
とは言いつつ、勝点を重ねながら自分たちのサッカーを向上させられるのは、良い循環だと思うし、期待感も高まってくる。

以上

2014.05.12 Reported by 武田賢宗