坂田大輔が高く、高く、空に向かってボールを蹴りあげる。そして、試合終了を告げるホイッスルがレベルファイブスタジアムに鳴り響いた。ピッチの上で仰向けに倒れる石津大介。何人もの選手が肩で息をしながら膝に手を当てる。それは全てを出し尽くした証だった。スコアは2−1。力の限りに戦った福岡が勝点3を手にした。
キックオフ時点での気温は25.8度。その後も気温は上がり続け、ピッチの上での体感気温は、かなり高くなっていたはずだ。そんな中、立ち上がりから全力で走り続けた福岡。終盤はさすがに運動量が落ちて富山に押し込まれる時間が続いたが、それでも、勝利に対する執念だけでボールを追った。華麗なサッカーではなかったかもしれない。相手を圧倒して勝つという試合ではなかったかも知れない。できなかったことを挙げれば、それは少なくなかったかもしれない。しかし、戦う気持ちを前面に出して、勝利に向かって全力を出してきるサッカーこそ福岡が求めるサッカー。この日のサッカーは、まさにその姿勢を示した試合だったと言える。「後半はチームのエネルギーが少し下がってしまったが、それでも勝つということに対しては十分だった。相手以上に戦っていた。満足している」。マリヤンプシュニク監督は胸を張った。
ゴールを奪ったのは若い力だった。先制点は酒井宣福。16分、森村昂太のCKに高い打点のヘディングシュートでゴールネットを揺らした。「もっとやれると思うし、もっとやらなくてはいけない」。試合前に話していた言葉を結果で表した。追加点は石津大介。ハーフウェイライン近くで中原からのパスを受けると、そのままドリブルでペナルティエリアへ。振り抜いた右足から放たれたボールがゴール左隅に吸い込まれた。そして、90分間にわたってゴールを狙い続けた石津のプレーは富山に脅威を与え続けた。
陰の立役者は城後寿。この日は右サイドバックの位置でプレー。対峙する中島翔哉を完全に抑え込んで仕事をさせず、そして攻撃のスイッチを入れる役割を果たした。「That is great」。プシュニク監督が発した言葉は、まさにこの日の城後にふさわしい。そして、もう1人は坂田大輔。この日は1トップの位置でプレーをしたが、いつものようにピッチ狭しと走り回り、攻撃に、守備に、あらゆる面で貢献。走り続けることでチームを牽引し続けた。
そして、全員がチームのために戦っていた。森村昂太、中原秀人、武田英二郎の3人で組んだ中盤は攻守の要として機能。その原動力は連携と、やはり運動量だった。また、ゴール前には神山龍一が立ちはだかり、その前で堤俊輔が守備をコントロール。イ グァンソンは高さと強さをいかんなく発揮し、阿部巧は一番苦しい時間帯に、衰えを知らない運動量と1対1の強さを発揮して相手の攻撃を寸断。その姿は仲間をどれだけ勇気づけたか分からない。そして、残り11分のところでピッチに立った光永祐也は、若武者らしいはつらつとしたプレーを披露。それは福岡の未来を感じさせるものだった。
一方、敗れた富山が放ったシュートは福岡と同数の8本。前半は福岡の前に一方的に攻め込まれたが、後半は互角の戦いを演じて決定機も作り出した。後半の内容は21位に沈んでいるチームのものではなかった。だが、これまでと同じようにシュートを決めきれず、セットプレーで失点するということの繰り返し。アウェイ初ゴールも微妙な判定で手に入れたPKによるものだけだった。個々のプレーには良さがあるものの、試合の中に現れる細かい部分を抑え切れていない、そんな印象が残る。セットプレーの失点が減らないのは、そういう理由によるものなのだろう。また、この日の試合では、運動量、1対1の争いという点を90分間通して見れば上回っていたのは福岡。最終的にそれが勝敗を分けた。ディテールの部分を、ひとつずつ抑えていくこと。それが、いまの苦しい状況を抜け出す方法なのかもしれない。
さて、ホームゲームで4試合ぶりの勝利を収めた福岡。クロスやシュートだけではなく、ラストパスのひとつ前のところでのミスが多いなど、相変わらずの課題は多い。しかし、プシュニク監督が最も大事にする「走る、戦う姿勢」という点では、自分たちの姿を取り戻しつつあるように見える。そして、それが本物かどうかが試されるのが次節以降の試合。湘南、山形、札幌、千葉と難しい相手との対戦が続く中で、どれだけ自分たちの良さを発揮し、勝点を積み上げられるか。いよいよ、福岡は序盤戦の山場を迎える。それらの試合を前に「楽しみです」と笑顔を見せたのは武田。福岡らしさが存分に発揮されることを期待したい。
以上
2014.05.12 Reported by 中倉一志
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