だから、サッカーは面白い。
試合直後、どこかで聞いたことのあるそんなフレーズが頭に浮かんできた。「今季ワースト」と柱谷哲二監督が嘆いた前半を見る限り、こんな胸を熱くするゲームになるなんて想像もつかなかった。しかし、ホームのサポーターの後押しを受けた選手たちは連戦の最終戦で疲労が色濃く残る中でも最後まで走り抜き、終了間際に逆転ゴールを決めて水戸が開幕戦以来のホーム勝利を飾った。前半にストレスを溜めていた分だけ後半の猛攻に余計に心が躍った。そして、今季最多の3得点を決めての逆転勝利。試合後、透き通るような青空の下、スタジアムには歓喜の「水戸コール」が心地よく何度も何度も響き渡った。
確かに痛快な逆転勝利ではあった。だが、90分通した内容は課題の多いものであった。前半は岐阜のナザリトを中心とした勢いのある攻撃に押し込まれて、防戦一方の苦しい展開を強いられた。36分に高地系治からのスルーパスを受けたナザリトに押し込まれて先制点を許すと、その後も岐阜ペースで試合は進んだ。
今の水戸にとって、最大の敵は自分たちである。相手に圧力をかけられると消極的な姿勢が出てしまう試合を繰り返してきた。この日もそうだった。「岐阜のパワーを持っている選手に対して臆病になっていた」と柱谷監督が振り返るように、水戸はボールを奪っても相手のプレスを恐れ、横パスとバックパスに逃げるばかり。「なんでもないところで焦ってミスが出てしまった」(金聖基)。メンタルの弱さという今季のチームが抱える課題をあらためて露呈した。
「闘っていない。ファイトするメンタルを持つこと」とハーフタイムに指揮官から雷が落ちたことで、水戸の選手たちは目を覚ました。後半に入ると、積極的に縦パスを入れるようになり、さらに2列目、3列目から果敢に追い越す動きが生まれ、厚みのある攻撃を繰り出した。
「闘う気持ち」の象徴が水戸の2点目のシーン。1対2で迎えた81分、小谷野顕治からのスルーパスが吉田眞紀人に送られる。ややボールが長く、岐阜DFに対応されるかと思いきや、吉田は最後まで諦めずにボールを追い、足を伸ばしてスライディングシュート。ボールはゴールに吸い込まれていったのだ。2002年日韓共催FIFAワールドカップベルギー戦での鈴木隆行のゴールを彷彿とさせる魂のゴール。その一撃で水戸の勢いはさらに増すこととなった。
終盤、逆転勝利を目指して怒涛の攻撃で岐阜ゴールを襲い続けた努力は最後の最後に実る。90分、GKからのロングボールを三島康平が頭でそらして、吉田がキープ。中央やや左に走り込んだ船谷圭祐にパスが送られると、その勢いのままゴール前に運んで豪快にシュート。豪快にネットに突き刺し、勝利を呼び込んだのであった。ピッチに倒れ込みながら抱き合って喜び合う選手たち。その表情からは力の限り戦い行った充実感がみなぎっていた。
とはいえ、「前半のような戦いは2度としてはいけない」と柱谷監督が言い切ったように、内容に関しては手放しで喜べる試合ではなかった。後半のように積極性のスイッチが入れば、この日のように相手を圧倒できる力があるだけに、相手の勢いに押されて消極的になってしまう悪癖を断ち切ることができるかが今後の浮沈のカギを握る。監督から檄を入れられて目覚めているようでは、上位には行くことはできないだろう。自分たちの力を生かすも殺すも自分たち次第。今後浮上していくためにも自分たちに勝ち続けなければならないことを再確認させられたゲームであった。次節ホームでの京都戦で「自分たちは変わるんだ」という覚悟をプレーで示してもらいたい。
2点のリードを守れずにドローに持ち込まれた前節同様、岐阜にとっては悔いの残るゲームとなってしまった。前半はほぼ完ぺきなゲーム運びを見せながら、後半は水戸の勢いに押されて、「守りに入ったところがあった」(難波宏明)。まるで前半と後半でチームが入れ替わったような内容であった。
「若さ」。ラモス瑠偉監督は敗因をその一言にまとめた。2度のリードを奪いながらも、うまくゲームを運ぶことができずに逆転負け。戦術や技術だけでなく、ゲームを読む力が足りなかったということだろう。ただ、それも戦いながら身につけていくもの。チームの変革はまだはじまったばかり。痛みを受けながら、チームは成長していく。「これから旅は長い」と目をぎらつかせながら口にしたラモス監督は、この敗戦の悔しさもチームの糧にしていくことだろう。次回の対戦時、岐阜はさらに手ごわいチームになっているに違いない。
以上
2014.05.12 Reported by 佐藤拓也
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