「今日はまず内容云々ではなく、勝点3を取れたことが非常に大きい」。神戸の安達亮監督は試合後の会見をこう切り出した。前節のアウェイ仙台戦では前半2点リードで折り返しながらも、後半にまさかの4失点を許して4−3で敗戦。3分1敗と4試合白星から離れていた神戸にとって、今節の甲府戦は何が何でも勝利が必要だった。“勝って兜の緒を締める”志の高い指揮官が「連戦の疲れもあり、相手にいろんなことを研究されている中で勝点3をもぎ取った。選手たちを褒めてあげたい」と手放しで喜ぶほど、この1勝の持つ意味は大きい。
試合は神戸の優勢で始まった。約3分過ぎに森岡亮太がミドルシュートを放つと、約5分にはチョン・ウヨンからのスルーパスを受けたマルキーニョスがミドルレンジから強烈なシュートで相手ゴールを脅かす。相手に中盤でボールを回させ、それを奪ってカウンターを仕掛けるという一つの狙いの中で、神戸は中距離砲を織り交ぜながら攻撃のリズムを作り出していた。
その狙いが実を結んだのは9分。ハーフウェイライン付近でペドロ・ジュニオールがボールを奪うと、すかさず前線のマルキーニョスへ。タメを作るようなドリブルをしながら、マルキーニョスはペドロ・ジュニオールが最前線へ走り込むのを待って絶妙のスルーパスを通した。これをペドロ・ジュニオールが相手センターバックを背中でブロックするように半身で受け、最後はGKを交わして冷静にゴールへ叩き込む。ボールを奪ってからフィニッシュまでに要した時間はわずか十数秒。狙い通りの一発だった。
だが、この1点を機に流れは甲府へ。27分過ぎには、右サイドからのセンタリングを盛田剛平とジウシーニョが競り、そのこぼれ球に阿部翔平が反応して強烈なミドルショートを放つ。35分頃には阿部のクロスに盛田が頭で合わせ、続く37分頃には新井涼平を軸に中央でショートパスをつないで神戸の守備を崩すシーンもあった。
後半に入っても甲府ペースが続く。77分頃には途中出場の水野晃樹のプレースキックをマルキーニョス・パラナがニアで合わせて神戸ゴールを脅かすなど、何度も決定的なシーンを作り出した。だが、1点が遠く。神戸よりも8本多い14本のシュートを放ったものの、結局、無得点でゲームを終えることになった。
FWの盛田は試合後、「早い時間に失点して、そこから立て直して、しっかりと守っていても点が取れないというのは責任を感じています」と言い残した。城福浩監督は「終了のホイッスルが鳴って、本当に悔しいという思いをするような試合だったと思いますけれど、結果が全てなので、本当に悔しいです」と振り返った。仮りに甲府が1点を奪えていれば、一気に神戸を崩せていたかもしれない試合内容。それだけに悔いが残る敗戦だった。
ただ、今節に関しては安達監督が「選手たちを褒めてあげたい」と語ったように、神戸の勝利に対する執念を讃えるべきだろう。「約1年ぶりのボランチで、昨日からすごく不安というかプレッシャーを感じていた」という今季初先発の大屋翼が必死でボールを追い、超攻撃的なペドロ・ジュニオールが終盤は自陣ゴール前まで下がって献身的な守備を見せた。何度もシュートブロックをくり返した増川隆洋と河本裕之のセンターバック・コンビしかり、上下動をくり返した両サイドバックの高橋峻希と茂木弘人もしかり。前線から激しいプレッシングを掛け続けたマルキーニョスと森岡亮太、豊富な運動量で攻守において走り回った小川慶治朗、そして再三のビッグセーブを見せたGK山本海人もしかり。「一致団結」をスローガンに掲げる今季を象徴するような全員での粘り勝ちだったと言っていい。
試合後にチョン・ウヨンはこう話している。「無失点という結果が意味するところは大きい。仙台戦では4点も取られ、自分もボランチとしてのプレーに全く納得ができていなくて…。その中で守備陣と話したのは“0点で抑えたら攻撃陣が絶対に点を取ってくれるので勝てる。絶対に無失点で試合を終えよう”ということ。それができて良かったと思います」。
得点シーンだけを見れば、神戸がペドロ・ジュニオールとマルキーニョスという“個”の力で勝ったように映るかもしれない。だが、決してそうではない。前節の“悪夢の45分”を全員で払拭した今節の白星は、タイトルを狙う神戸にとって大きな意味を持つ勝点3と言える。これで神戸は3位に浮上。次節のアウェイ・清水戦に勝てば、ワールドカップ前に2位浮上の可能性を残している。いい形で“ワールドカップ・ブレイク”を迎えるためにも、結果を求めたいところだ。
以上
2014.05.11 Reported by 白井邦彦
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