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【J1:第13節 広島 vs 清水】レポート:前後半、互いに別のチームとなった広島と清水。酷暑の熱闘は痛み分け(14.05.11)

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その瞬間、みんなの足が止まっていた。
青山敏弘の横パス。森崎浩司が受けに入る。彼の意志としては、トラップして前へ。ところが、ボールタッチが珍しく流れる。そこを狙って大前元紀が素晴らしいアプローチをかけ、竹内涼と2人で挟み込むようにボールを奪った。
この時、森崎和幸は攻撃をサポートするために、最終ラインからポジションをあげていた。だが、ボールを奪われたその瞬間、足が止まる。パスを出した瞬間にサポートに動くはずの青山も、森崎和と連動して動いておきたい千葉和彦もまた、足を止めていた。水本裕貴は攻撃に出るためにサイドに開いている。その帰結として、もっとも危険な男=ノヴァコヴィッチがフリー。竹内の縦パスを受けたエースにとって、ゴールを決めるのはたやすい状況だった。

広島の強みは、攻守にわたって「いい距離感」を保てること。それができるからこそパスはつながり、守備ブロックも強固になる。前半、ビッグチャンスを量産した一方で、清水のシュートを1本に抑え込むことができたのも「いい距離感」の賜物。
では、いい距離とは、どうやって保つのか。それはやはり、「動く」しかないのである。
将棋のようにコマが一つ一つしか動かせないゲームと違い、サッカーは複数の動きが絡まりあって成立する。1人の動きに連動して数人が動くからこそ、適切な距離感は保たれ、状況に応じて対応できる柔軟性にもつながる。ところがそこで1人でも動きが止まると、動いたことでむしろ、ほころびが生じてしまう。「連動」がないチームは、大きな穴が存在するのは必然だ。

森崎浩は失点シーンについて「自分のミス。悔しい」と歯がみする。だが、失策は彼だけではない。連動できなかったチーム全体が、その責を負うべきだ。もちろん、足が止まったのは11連戦中の9戦目という日程と長距離移動の蓄積を主原因とする疲労にある。確かに選手を入れ替えてはいるが、全員を「週1回」で回すのは至難の業。どうしても連戦を戦う選手が必要になるし、そうするとコンディションにバラつきが出てしまうのも当然。また、コンビネーションを練習で合わせられないツケもある。しかし、そこは乗り越えないといけない壁だ。
「自分がフレッシュすぎて、いつもと同じ感覚でパスを出しても、うまく周りと合わなかった」
途中出場した高萩洋次郎は述懐する。途中出場の10番がいつものようにスペースにパスを出しても、タイミングがズレてしまって通らない。そのジレンマに、選手たちは苦しんだ。連動がパスの出し手と受け手の呼吸のことも指す状況だとしたら、「連動しない」広島の後半がズタズタになったのも、当然だろう。
清水のプレスが面白いようにはまり、広島のパスはことごとく寸断された。そして、そのまま速いパスやドリブルでボールを前に運んだ清水は、決定機を次々と手にする。特に、71分に高木俊幸、73分には大前元紀がそれぞれノヴァコヴィッチ演出のもと、決定機を迎えた。そのシュートを慌てず騒がずに防ぎきった林卓人の存在なくして、広島の勝点1はなかった。

前半は、全く逆の展開。セットプレーから塩谷司が見事なゴールを決めただけでなく、佐藤寿人と森崎浩のコンビネーションや両ワイドの突破から、広島が何度もチャンスをつくった。シュート数こそ4対1だが、30分の「ミキッチのクロスを佐藤が落とし、森崎浩が飛び込む」といったシーンなど、シュートまでは至らない決定機もあり、前半終了時には多くの記者が「広島勝利」を疑わなかった。それが、ハーフタイムを挟んで全く別のチームになってしまうとは、誰も想像しえない。

もちろん、清水が「全く別のチーム」に変わったことも事実である。前半は見せなかった勇気あるプレッシングが得点につながったことで勢いを増し、広島のプレーを読み切ったパスカットを連続。次々と繰り出すカウンターは、相手の疲れを倍増させた。決定機を決めきれなかった悔いは残るが、堂々たる勝点1で連敗をストップ。苦戦を続けていたチームが反発心を見せたことは、今後のシーズンの財産となるはずだ。

記録には23.9度とあるが、日差しがさしているピッチ上は30度近い高温で、撮影していたカメラマンも「途中で頭がクラクラした」という暑さは、蓄積疲労がより大きいホームチームの選手たちに大きく影響した。だが、ACLの北京戦での出場停止を除いて全試合先発、退場した1試合以外では全ての公式戦フルタイム出場を続けている水本裕貴は「苦しい中でも精度をあげていくことを突き詰めないと」と、置かれている状況に「逃げない」姿勢を見せた。2008年5月11日の対甲府戦以降、リーグ戦全試合フルタイム出場の林卓人は「厳しさを乗り越えた先に、成長がある」と持論を口にした。選手たちは誰一人、「これでいい」とは思っていない。その事実が、苦戦にささくれ立った心を少し、いやしてくれた。

以上

2014.05.11 Reported by 中野和也
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