Ｃ大阪と仙台といえば、レヴィー クルピ氏と手倉森誠氏の策士対決が、J2時代から長らく続いていたが、昨シーズンをもって、2人ともに監督を退任。今季、新たな指揮官、新たな体制のもとでの戦いに挑んでいるが、ともに序盤戦では苦しい道のりが続いている。そのなかでの今季初の両雄の顔合わせ。ここ最近の両者の対戦では3連続引き分けとなっているように、拮抗した戦いを演じあってきたが、ランコ ポポヴィッチ監督のもとで今季も攻撃的なサッカーを標榜するＣ大阪と、渡邉晋監督のもとで組織力と強固な守備の再生に取り組む仙台、対局のスタイルを持つ両者のどちらが光を放ち、ここからチーム再興のきっかけをつかむのか、注目が集まる。

ＡＣＬとJ1リーグ戦との過密日程のなか、ポポヴィッチ監督のもとで、J1屈指の攻撃陣をひっさげて、悲願の初タイトル獲得を狙うＣ大阪。「シーズン当初では、補強選手の合流が遅れたこともあって、そこの部分でスムーズにいかないところがあった」（ポポヴィッチ監督）こともあり、チームは試行錯誤が続いた。それでも、J1では4勝4分3敗の暫定9位。前節は柿谷曜一朗にリーグ戦今季初得点が生まれ、フォルランの決勝点もあり、数的不利のなかでも名古屋を下し、リーグ戦7試合ぶりの白星を得た。

ただし、その勢いを活かしたかったＡＣＬラウンド16の広州恒大との第1戦では、1-5と完敗。本来ボランチの山口蛍を右サイドに置く秘策も奏功せず、マルチェロ リッピ監督率いる中国最強軍団、ムリキやエウケソン、アレッサンドロ・ディアマンティら豪華なタレント陣に、木っ端微塵に叩きのめされた。そのショックが冷めやらぬうちに、リーグ戦でも上位戦線生き残りのための、大事な戦いに臨むことになる。

それでも、広州恒大戦で唯一のゴールを決めた長谷川アーリアジャスールが「Ｊリーグで勝って、そして、（ＡＣＬラウンド16第2戦の）アウェイに行きたい」というように、この仙台戦での再起を、イレブンは高らかに誓っている。約1カ月間、公式戦ホームゲームで勝っていないということもあり、今度こそホームに集まるＣ大阪サポーターに勝利をプレゼントしたいという思いも強いだろう。舞台は昨シーズンから公式戦7試合負けなし、『圧力鍋』と称される、Ｃ大阪のもう1つの聖地、キンチョウスタジアム。桜色に染まったスタンドで声を枯らすほど応援を惜しまず続ける12番目の選手たちの、大きな後押しも力に、Ｃ大阪は約2カ月ぶりのリーグ戦2連勝を目指す。

一方の仙台も、序盤は勝利から見放され、監督交代も余儀なくされたが、渡邉晋監督のもとでは、リーグ戦は3勝1分2敗と勝ち越し。前節は、0-2から、ハーフタイムに若き指揮官がイレブンを一喝すると、その檄に応えた選手たちが奮起。後半だけで一挙に4得点をあげて、リーグナンバー1の攻撃力を誇る神戸に打ち勝ち、今季初の連勝、今季初のホーム戦勝利を達成した。ここからさらに上昇気流に乗っていきたい仙台。ただし、渡邉監督は「（神戸戦）前半の戦い方というのは、おおいに反省しなければいけないし、そういった点を突き詰めれば、もっと勝利を重ねられるチームになると思いますので、勝利で得た自信、それから反省すべきところは反省して、次に進んでいきたい」と、現状の17位というポジションからの脱出を図るためにも、しっかり足下を見つめている。それでも、ウイルソン、太田吉彰、武藤雄樹が今季初めてのゴールを叩き出すなど、取るべき前線の選手たちに結果が出たことは、チームにとって明るい材料だ。J1復帰後の2010年から、8試合負けなし（2勝6分）を続けている相手、Ｃ大阪に対して、今回もその数字を継続するだけでなく、キンチョウスタジアムでの初白星も持ち帰りたいところだろう。

この一戦では、山下達也と角田誠、Ｃ大阪と仙台の守備の要となる両選手が、出場停止。そのなかで、試合は、最近のリーグ戦での直接対決のように1点を巡る攻防になるのか。それとも、互いの攻撃陣が火を噴く撃ち合いになるのか。どちらにせよ、試合終了のホイッスルが鳴るまで、息の抜けない戦いが見られそうだ。

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2014.05.09 Reported by 前田敏勝