前節の敗戦により徳島は再び連敗のトンネルへ戻ってしまった。第10節でようやくJ1初白星を掴んだが、残念ながらチームはそれを好転への足がかりにするには至っていないのが現状と言わざるを得ないだろう。

しかも徳島は前節のＧ大阪戦で守備の大きな問題点を露呈した。それは、局面で素早くパスを回された時に選手たちがボールへ意識を向け過ぎ、捕まえておくべき相手を不用意に離してしまうこと―─。実際チームはそこを突かれる形で崩されて1、2点目を決められたし、試合後には小林伸二監督も「たたかれた時にボールを覗くのではなく、人に付くことをトレーニングする必要があると思います」とコメント。その問題の改善が急務であることをはっきり口にしていた。

そして迎える今節の相手がＦ東京であることもその必要性を高める。
やはり彼らの組織連携は質が高い。攻撃時には全員がサボらないパスアンドゴーを徹底し、イメージを共有した3人目の動きもふんだんに絡めてくる。さらに、現在ノーゴールでの3連敗と結果にこそ恵まれていないが、その調子は全く悪いものでない。特に前節・大宮戦はマッシモ フィッカデンティ監督が「これだけのパフォーマンスを見せてくれた選手たちにはもっと相応しい結果が伴っていてもおかしくなかった」と語っていた通り、終始いいリズムでゲームを進めていた。前線の渡邉千真や平山相太が起点となって展開を作れば、切り札として投入された河野広貴が中心になり細かな繋ぎで中央を割って入る見事な崩しも披露。ゴールを奪えなかったことが不思議なほどの内容を見せていたと言っていいだろう。

それだけに今節の徳島には前節からの修正力が大いに問われるところ。そのようなＦ東京と対するにあたって、しつこく人を捕まえる守りは絶対に欠かせない。そこで重要になると思われるのがこれまで以上の選手間コミュニケーションだ。ボールに意識を奪われ過ぎないこと、また万一振り切られた際のカバーリングについても、ピッチ上で繰り返し確認し合い、その徹底を常に図らなければならない。そう考えると、浮き出すキーマンは先発復帰が予想されるキャプテン斉藤大介。自身の豊富な経験を乗せたリーダーシップで彼がコミュニケーションを引っ張り、そこに活発さを生み出せれば、きっとチームは自らの問題をかなり改善させられるに違いない。

徳島の戦いのベースは言うまでもなく粘り強い守備にある。勝機を切り開くにはその実践によって先制点を与えないよう我慢強く耐えることが何より必要だ。それを十分に分かっているからこそ藤原広太朗も「前半は無失点で凌げるようにしながら、後半自分たちが勝負を賭けて前がかりになった時にどうやってゲームを運ぶのかというところを、DFラインでしっかりコントールしないといけない」と、自分たち守備陣のすべき役割を改めて語っていた。

果たして今節、徳島は問題点を改善させ、藤原の言うような試合の流れへＦ東京を引きずり込むことができるか！？いや、チームは是が非でもそれを現実のものとし、ここで必ずJ1ホーム初勝利をもぎ取らなくてはならない。目標とする残留を追いかけるためはもちろん、地元のJ1熱をこれ以上冷めさせないためにも。

以上

2014.05.09 Reported by 松下英樹