岡山が26分、上田康太のFKから清水慎太郎がヘディングで合わせるという前々節・山形戦と同じパターンで先制した。しかし81分、ここ数試合でも素晴らしいコンビネーションを見せていた石津大介、城後寿の連係で追いついた。多くの時間、ゲームの主導権を握っていたのは、福岡。シュート数も福岡の「16」に対し、岡山は「7」と差が開いたが、岡山も懸命に「らしさ」を発揮しようと踏ん張り続けたゲームだった。
福岡はこのゲームに3バックで臨んだ。「岡山さんへの対応策として(フォーメーションを)替えていった。替えたとしても、プレーの基本的な部分は変わらないので、我々にとってシステムの変更というのは大きなことではありません」とマリヤン プシュニク監督。また、「岡山さんのDFは怪我を負っている選手が多く、平均身長が低くなったことを利用しようと、いつもより空中戦を狙いました。だから城後、古賀(正紘)、イ グァンソンら、背の高い選手を起用しました」とも話した。右SBの三島勇太の出場停止も理由のひとつかもしれないが、何よりホームで行われた「バトル・オブ・九州」2連敗が引き起こす悪い流れをここで断ち切る強い意思があったようだ。
岡山の清水慎太郎、妹尾隆佑、片山瑛一という前線3枚に、福岡の3バック、堤俊輔、古賀、イ グァンソンの3人がマークについたわけだが、福岡はワイドの城後も・阿部巧も下がってチャンスの芽を摘んだ。清水は、「今日はボールを収められなかったことが反省点」と話した。攻撃では福岡が石津の個人の突破を中心にボックス内での素早いパス交換から仕掛け、また、城後や武田英二郎が投げるロングスローから数々の決定機を作り出す。こうなると超強気で個性的な福岡のタレントのプレーの中で、平熱を保ったアンカー・中原秀人の冷静なプレーもさらに効いてくる。こうしてプシュニク監督が求める「アグレッシブさ」を取り戻した福岡が、最後まで走る量を落とさなかった石津を中心とした、からみつくような執拗な攻撃で押した。
しかし先制点を決めたのは岡山。最終ラインの田所諒が前線に上がり、ゴールライン際で倒されてFKを得ると、キッカーの上田から正確なボールが清水へ。清水は相手DFを外して地面に突き刺すようにヘディングシュートし、ゴール。福岡は失点を気に病むことはなく、3バック以外の7人が豊富な運動量で攻勢を強めた。後半に入っても同じ流れで、62分にはポストに撥ね返された石津のシュートなど、岡山はGK中林洋次の好セーブと、時々、運と相手の精度不足に助けられていた。しかしついに81分、プノセバッチから平井将生を経由したボールを石津が3バックの後ろに出し、「わかっていた」城後がゴールを決めて同点に追いつく。
このゲームで岡山が決定機を作れなかったわけではない。前半から妹尾隆佑が周囲を見て、状況に合った攻撃を仕掛けていたし、そこにはボランチの上田康太と千明聖典の判断も、田中奏一と三村真の前に仕掛ける気持ちがあった。また77分には片山瑛一が右サイド高い位置で相手を2度かわしてシュートするシーンもあった。追いつかれてからは、後半アディショナルタイムに石原崇兆が右サイドを運んで、林容平がアクセントをつけたボールをシュートに持ち込むが、GK神山竜一がキャッチ。何度か作り出した決定機を決められないまま、リードを保って逃げ切ることは出来なかった。
しかしGW最終日の快晴の空の下、10,743人が訪れたこのゲームは、スタジアムでゲームを観ることの醍醐味が詰まっていた。決定機を外して頭を抱える間に、もう相手側のゴールまで運ばれてしまうオープンな展開の興奮もだが、ゲーム終了間際、シュートのこぼれ球を追って約50メートル手前から躊躇なく走り出し、あと一歩まで迫った岡山の上田。岡山の三村真の攣った足を伸ばしてやった福岡・中原秀人。彼らに送られた温かなリスペクトの拍手は、スタジアムで体験すると忘れられない出来事になる。
以上
2014.05.07 Reported by 尾原千明
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