試合後に高木琢也監督が「前節(磐田戦)は結果が出なかったですが内容としては満足しています。いいパフォーマンスをしてくれました。今日に関しては前節ほどのパフォーマンスではなかった」と話すとおり、この試合のピッチの上にいたのは磐田戦とは全くチームだった。
前半は特に前線からのプレスや追い越す動きもなく、相手のボールを奪うことが出来ずに、遅れてファールを犯すといった悪循環があった。後半から入った山田晃平選手が「(前半は)バランスを取るという事や球際での戸惑いがあったから自分たちのサッカーができなかったと思います」というように、明らかに水戸のカウンター攻撃を警戒しすぎていた。ペースは自然と水戸に流れ、27分には船谷圭祐のFKからのこぼれ球を馬場賢治が押し込み、絶対に先制点を与えてはいけない水戸に簡単に点を与えてしまう。
ハーフタイムに入り、長崎はロッカールームで「セカンドボールを死に物狂いで取りにいこう」(高木監督)、「割り切ったシンプルなクロスを前に入れること」(神崎大輔)と修正点を確認。「気持ちを持ってピッチに入った」(古部健太)。チームを鼓舞しようと長崎のサポーターからは選手一人ひとりのコールが起き、山口貴弘らがそれに応えた。
後半、長崎は山田晃平や野田紘史を投入し、マルチロールの古部をこの日もDFラインからポジションチェンジさせて、黒木聖仁と共にシャドーの位置に入れるなど変化をつけてきた。すると連戦という事もあり水戸の中盤の運動量に変化が見え始める。この時間帯について柱谷哲二監督は「中盤の選手が止まってきた。そうなると最終ラインが苦しい。ボールが繋げなくなってきた」と振り返る。中盤で優位に立った長崎は神崎らがサイドからイ デホンの頭目がけてクロスを放り込む。すると73分、神崎のクロスが尾本敬の足に当たり、そのボールに古部が詰めて何とか同点に追いつくことが出来た。
その後、長崎はブロックを敷いた水戸に波状攻撃を仕掛けるも水戸は長崎の攻撃を3バックで対応。なかなか追加点をあげられない。柱谷監督も「選手たちのパワーとかメンタル面を見てると『3バックにしても守るぞ』と。『長い時間でもいいから守るぞ』」と指示。ピッチサイドから大きなジェスチャーで選手を鼓舞し続けた。水戸もカウンターから馬場がGKと1対1となるようなビッグチャンスを迎えるも、DF岡本拓也にどうにかクリアされ勝ち越しはならず。共に決定機を決めることが出来ず、どちらのチームにとっても痛恨のドローとなった。
長崎は成長過程にあるチーム。高木監督は『こういう“温度差”のあるゲーム(前節の磐田戦と今節の水戸戦)をどうやって“温度差”をなくすかについて追求しなくてはいけない。選手には経験を肥やしにしていてほしい。色んなチームと対戦する中で様々な局面でそれに耐えうる、それに対応する準備と経験を積まなくてはいけない」と試合後の記者会見で話している。4連戦で勝点3という数字はさておき、この経験を糧に今後は自分たちが作り上げてしまった“温度差”をどう克服するかが大きな課題となっている。このチームがこれからのリーグの波を乗り越えるか、それとも飲まれるのかはまだ誰にもわからない。
水戸も同じく成長過程にあるチーム。柱谷監督が言う「ビビらないサッカー」で湘南戦で善戦し、同じシステムで同じような攻撃を仕掛けてくる長崎との一戦となったが、常に長崎が嫌がることを徹底。後半はエンプティとなり、不運なゴールを決められたが、馬場は「どうしても点を取ってもう1点取りにいかないといけない状態なのに、後ろ向きの姿勢になってしまう。そこは課題ですね」と現状を捉えている。
いずれにしても、どちらのチームにとっても次節からリーグは“平常営業”に戻るために、チームを立て直す時間も持てる。まずはこの1週間の練習から大切にしていきたい。
以上
2014.05.07 Reported by 植木修平
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