ゴールデンウィークの連戦の4戦目ということもあり、横浜FC、京都の両チームともに決して良いコンディションではなかった。ともに動きは重く、思うような連携がとりにくい。個々のプレーの選択も、お互いにスムーズさを欠いていた。試合後に山口素弘監督が述べたように「サッカーはミスが付きもののスポーツ」であり、このような状況ではミスが発生しやすい。この試合では、そのミスをうまく突いた京都が勝点3を奪っていった。
前節と同じメンバーの京都に対して、横浜FCはキーバーの渋谷飛翔を含めて6人を入れ替えて試合に臨む。昨年の終盤に3試合出場したものの今季初出場となった若い渋谷に京都が襲いかかる。
14分、京都のショートコーナーからのクロスを横浜FCがクリアミス。中山博貴のシュートは渋谷が止めるが、キャッチしきれないところを大黒将志が詰めて先制する。中山のシュートが強くなかっただけに、キャッチしきれなかったことは渋谷のミス。そして、ミスからのわずかな可能性を抜け目なく狙っている大黒の経験が生んだゴールだった。
その後、横浜FCの最大のボールの収まりどころである寺田紳一へのプレッシャーが効果を発揮し、京都ペースで試合は進む。42分、渋谷が6秒ルール(ゴールキーパーが手で6秒以上ボールを保持してはいけない)を犯してしまい、ペナルティーエリア内で京都が間接フリーキックを得る。この間接フリーキックで京都は5人が1列に並び、キッカーとのタイミングを絞らせない形のトリックプレーを披露。最後は石櫃洋祐がゴールに叩き込み、最高の時間に追加点を挙げる。
後半11分に横浜FCは黒津勝を投入し、ようやく京都の裏のスペースとサイドの突破を見せるようになる。お互いにスペースを与える中、65分には小野瀬康介からのパスを受け、ゴール正面で野崎陽介がフリーでヘディングシュートを放つが「あそこは決めなければいけなかったし、あそこを決められれば流れが変わった」と悔やむように、この試合最大の決定機を決められず。
その後も、途中出場の小池純輝が右サイドの裏を使うなど横浜FCのペースとなるが、サイドまでは持ち上がれるものの、そこからのクロスはオ スンフンを中心とする守備陣に絡め取られていく。そして、横浜FCはゴールへの怖さをこれ以上出せずにノーゴールで試合は終了。1試合を通じても横浜FC3本、京都が5本とシュートが少ないのは、冒頭に触れたように連戦の疲れの影響もあったが、その少ないシュートを確実に決める得点力を発揮した京都が連勝を達成した。
京都にとっては万全の出来であるとは言いがたかったが、一瞬の隙を逃さない老獪さを発揮したところに、チームとしての強さが出てきたと言える。最後はゴール前の守備をしっかり固めるところも含めて、ゲームの流れや疲労の蓄積という置かれた状況に対して最善のプレーができたのではないだろうか。バドゥ監督の「我々のチームは頭の中を冷静にクールに、非常に計算高く最後までプレーしてくれた」という振り返りは、この日の勝点3の理由を端的に表していた。
一方の横浜FCは、改めてゴールが遠い結果となった。京都にもミスが多く、切り崩すスペースは与えてもらえていた。しかし、その京都のミスやスペースをゴールに結びつけていく貪欲さには少し欠けていた。サッカーの内容としては、狙いは出せていた。しかし、対戦相手の大黒が見せ続けていたゴールに直結するプレーのないことが、ここ数試合の結果の原因になっている。ポゼッションをしながら、機を見て切り崩していく戦い方自体は間違っていないが、機を見て点に結びつけるところのスイッチをどう入れていくか。早くその糸口を探していく必要がある。
寺田は「立て直す力、カバーする力がない」と振り返ったが、ミスが付きもののスポーツの中で、自分たちのミスにとらわれるか、それとも相手のミスを貪欲に狙うか。その考え方の違いは、サッカーのメンタルでは反対に近い方向性だ。横浜FCが目指すべき考え方の一例を、この試合の京都は見せたのではないだろうか。この考え方の差が結果となった試合だった。
以上
2014.05.07 Reported by 松尾真一郎
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