ラモス瑠偉監督はこの試合でもメンバーを代えてきた。2トップは難波宏明の負傷もあり、ナザリトと田中智大を、右のサイドハーフに比嘉諒人を、右のサイドバックには益山司を今季初起用。右サイドのテコ入れを図った。
立ち上がり、岐阜がペースを握った。というよりも千葉が完全に浮足立ってしまっていた。パスミスやポジショニングミスなどの中盤での細かいミスが多く、自らリズムを掴む機会を失うと、ラモス監督の起用がいきなり的中する。9分、左サイドでボールを持ったDF野垣内俊がループパス。これに田中智と比嘉が反応し、ゴール前に飛び込んでいく。落下地点にいち早く入った田中智の落としを、比嘉が冷静に流し込んで、プロ初スタメンで初ゴールを奪ってみせた。
これで勢いに乗った岐阜は、一気に攻勢を仕掛ける。カギを握ったのが、ボランチの水野泰輔と右サイドのコンビだった。千葉のプレスが甘く、前半の水野は余裕を持って前を向いてボールを持つことが出来た。こうなると彼の長所である配球力が発揮される。岐阜の選手が高い位置からどんどん前向きに仕掛けられるという相乗効果も出て、岐阜の攻撃が活性化。特に比嘉と益山が右サイドのスペースを目がけて積極に駆け上がり、連動してボールを収めると、チャンスはさらに広がった。だが、苦しいながらももうこれ以上は点を与えられない千葉も、CB大岩一貴を中心に、最後のところで体を張り、耐え凌いだ。すると30分を過ぎ辺りから、千葉もロングパスが1トップの森本貴幸に通るようになり、35分には森本が抜け出すが、これはGK川口能活がファインブロックを見せた。その後も森本がゴールに迫ろうとするが、シュートを打つまでには至らず。千葉は有効的な打開策を見出せないまま、前半を無得点で終えた。
1−0で迎えた後半、前半同様に岐阜の出足が千葉を上回った。水野を起点に、比嘉、高地系治、ナザリトと田中智のアタッカー陣が相手のスペースを果敢に突いて、攻撃の主導権を握る。対する千葉は森本への単調な縦パスが続き、活路を見い出せない。対照的な両チーム。60分には高地のFKを中央に飛び込んだ田中智が頭で合わせ、比嘉に触発されるように、こちらもプロ初ゴールを決め、岐阜が追加点を奪う。
こうなると千葉ももう、なりふり構っていられない。直後の62分、動きの悪かった右サイドバックの天野貴史に代えてFWケンペスを投入。右サイドハーフだった田中佑昌を右サイドバックに、田中の位置にトップ下の大塚翔平を移し、前線を森本とケンペスの2トップに。DFラインは4バックのままで変わらないが、攻撃時には田中と左サイドバックの中村太亮が高い位置に張り出して後ろを2バック気味にして、前へのウェイトを大きくした。攻撃のリズムは単調であることに変わりはなかったが、前線に飛び出す選手が森本だけから、ケンペスも加わったことで、圧力は倍増。森本1人でも手を焼いていた中、終盤でこのシフトチェンジは岐阜にとって厄介なものであった。
それが証拠に67分にはCBキム・ヒョヌンのパスを受けた大塚に右サイドを破られ、クロスをファーサイドでケンペスに合わされて1点を返される。76分には中村太亮の仕掛けをファウルで倒してしまい、PKを献上。これをケンペスに決められ、2−2のドローに。ここから両チームカウンターの応酬となったが、これ以上は両守備陣が許さず、2−2のドロー決着。
試合後、ラモス監督は「残念です。自分たちのくだらないミスでね。選手たちもすごくキツいスケジュールの中でよくやってくれているが、3連勝を手に入れることがどれだけ難しいかは、彼らが肌で感じてくれたと思う。ただ、もったいなかった。いい時間帯で点取ったけど、そこから主導権を握りきれなかった。そこから試合を落ち着かせなかったのは若さゆえか。今日は若い選手もたくさん出ていたし、バタバタバタバタやって何やってんだと思った。残念で仕方がないの一言」と、2点のリードを生かし切れなかったチームに怒りをあらわにした。
だが、この試合、岐阜にとっては大きな収穫があった。それは比嘉、田中智、益山とチャンスを与えられた若手が躍動したことだ。中でも田中智は一度先発に抜擢されながらも、ここ3試合は外されていた。だが、これにより目の色が変わり、チャンスに飢えたことが練習の質の向上につながり、こうして再びチャンスを掴んで結果を残した。比嘉もラモス監督が我慢して使い続ける気概についに応えてみせた。益山に至っては、今季は試合に全く絡んでいなかったが、いきなりのスタメン抜擢にも冷静に90分間プレーをした。
ラモス監督が若手にチャンスを与えながら、行ってきた『アメとムチ』が効果を発揮し、今結果となって表れつつあることを実証する試合でもあった。それだけに勝ちきれなかったことは残念だが、次につながる試合であることは間違いなかった。
一方で心配なのが千葉だ。攻撃のバリエーションが少なく、攻撃に閉塞感があった。ケンペスの投入で2ゴールできたが、バリエーションで崩したというより、個のパワーで押し切った印象を受けた。選手たちが試合後、険しい表情のままだったことが、それを如実に表していた。しかし、ポジティブに考えれば、それだけ選手間の危機感が増しているということ。それをいい方向につなげることができれば、この勝点1は非常に価値あるものになるだろう。
以上
2014.05.07 Reported by 安藤隆人
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