サッカーを語る上で、よく飛び交うのはシステムや飛び抜けた技術を持った選手のことが多い。「相手は3バックだから…」、「○○選手は強烈なシュートを持っている…」などである。
今節の鳥栖vs柏も、「サイド攻撃を得意としている…」や「柏は3バックで、鳥栖は両サイドから攻めてくる…」などのシステムに関する話をよくしたものだ。筆者も例外にもれずあらゆる媒体で、この『両サイドの攻防』を発信していた。
FW豊田陽平(鳥栖)とFW工藤壮人(柏)の2014年FIFAワールドカップ日本代表候補の活躍にも期待がかかった試合であったが、試合を見終わりレポートに取り掛かった時には、前述した内容を取り上げるのは、この試合の本質を語っていないような気がしていた。
試合後にネルシーニョ監督は「お互いに勝利を目指して戦ったが、柏は先制され自分たちのペースを作るのが難しかった」というような評価をされた。確かに、鳥栖の先制点で想定通りの試合運びができなかったことと、後半に入って攻撃的な布陣が機能し始めたことでのコメントだと思う。しかし、これから後述するシーンを振り返っていくと、ペースやリズムだけではない部分が、この試合のターニングポイントではなかったかと筆者は感じている。読者諸兄も、一緒に考えていただきたい。
キックオフ後、5分で試合が動いた。鳥栖右サイドDF丹羽竜平のロングフィードをFW早坂良太が柏DF裏に抜け出し右足で決めた。ロングフィードに対し、柏DFは目測を誤ったかにも見えたが、早坂の前には大きなスペースがあった。
18分の柏の左サイドDF橋本和のクロスは、わずかにFW工藤壮人には合わなかった。しかし、工藤壮人に対しては鳥栖DFがしっかりとマークに付いていた。31分の鳥栖、左MF金民友のクロスは豊田にわずかに合わなかったが、一度フリーの位置に離れて飛び込んだものだった。38分の柏、右サイドMF高山薫のクロスに合わせた工藤は、鳥栖センターバック2人にしっかりと挟まれていた。
46分の柏、MF茨田陽生のミドルシュートには、鳥栖のDFがしっかりとブロックを引いていた。57分、鳥栖CKからの流れでの金民友のミドルシュートには、ゴール前で左から早坂、MF高橋義希、豊田がゴールに向いてシュートエリアを作っていた。さらに、その左外にはMF水沼宏太が走り込み、大外ではMF藤田直之がフリーでボールをもらう準備ができていた。続けて、62分に柏ゴール前で競り合った後のルーズボールに対しては、豊田がフリーでこぼれ球を狙っていた。74分の柏は、左からのクロスを高山が落としたボールに工藤が反応したが、これも鳥栖DFがしっかりとブロック。終了間際85分には、左から柏MF狩野健太のグラウンダーのクロスに合わせたFW田中順也がシュート、これは途中出場の鳥栖MF谷口博之がブロックに入った。
これらのことから言えるのは、鳥栖のシュート6本、柏のシュート5本とお互いに多くはないものの、最後の瞬間にフリーでシュートを打てるシーンは鳥栖のほうが多かったということだ。
柏も大きなチャンスを後半に迎えていた。65分、中央の茨田からのフィードに田中がヘディングシュートを放ったがクロスバーに弾かれ、こぼれ球に反応した狩野のシュートは鳥栖GK林彰洋の正面だった。72分の中央からのキラーパスには、工藤がわずかに合わなかった。この2つのシーンは、決定的なシーンだっただけに、どちらかが入っていれば柏の試合となっていたかもしれない。
「チャンスもバリエーション多く作ってくれたが、結果としてゴールは入らなかった。引き分けには持っていける試合だった」と語ったネルシーニョ監督の言葉がすべてを語り尽くしているように感じた。
サッカーは、システムや個の技術だけでチームの強弱が決まるスポーツではない。ましてや勝敗は終わるまでわからない。ボールを相手ゴールの前に運び、それを入れることで得点となって勝敗が決まるものである。シュートを打てる状態の中で、決めることができる確率がどれだけ高いのか…。この試合の結果が分かれた大きな要因は、シュートに対してどれだけ相手に自由を与えなかったのかではないだろうか。
一瞬の判断で、その後の展開に大きな違いが表れるサッカー。ミスで窮地に陥ることもあれば、1本のパスで相手のDFを崩すこともできる。しかし、最も大きな判断は『シュートを打つか打たないか』に尽きる。それが、入るシュートなのか、可能性が低いシュートなのかは打った選手にしかわからない。『結果がすべて』とサッカーが言われる所以でもある。
以上
2014.05.07 Reported by サカクラゲン
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