第11節が終わり、7勝4敗で2位に付ける鹿島と4勝7敗で14位に沈む名古屋、明暗がはっきり分かれた2チームの対戦だ。一時代を築いたチームから若返りをはかろうとしている点では、トニーニョ・セレーゾ体制2年目の鹿島に“一日の長”ならぬ“一年の長”があるのかもしれない。昨季から監督に鍛えられてきた若手選手たちが、躍進の担い手となっている。
その中心の1人が、トップ下のポジションでリーグ戦全試合に先発出場している土居聖真だ。これまで4得点をあげるだけでなく、攻守にわたり数字以上の貢献度を示している。ただ、セレーゾ監督は、土居の実力はもっと高いと感じているようだ。前節、柏戦で敗れた翌日のミーティングで土居を名指しで指摘したという。それは、前半42分、1人2人とドリブルでかわした土居が惜しいミドルシュートを放った場面に対する指摘だった。
「あれを1試合で4回、5回やれと言われた。『簡単に1人2人はがせる能力を持っているのにわかってない』とみんなの前で言われた。恥ずかしさもありながら、もっとやらないとダメだと実感しました(土居)」
ボールを受けるとクルリと反転し、キュキュッと間を縫っていくドリブル突破は、相手選手にとってはこの上なく嫌なプレーだ。1試合のなかで、必ずそうした見せ場を1度はつくるようになってきたが、回数はまだまだ少ない。サポーターも大いに沸くだけに、土居の突破に期待しているのはセレーゾ監督だけではないはずだ。
対する名古屋は、5連敗のあとF東京に勝利して一息ついたが、前節は1人少ないC大阪に勝ち越しを許し、連勝を逃してしまった。試合後、西野朗監督は「同じようなことばかりコメントしなければならず、非常に悔しい思いでいっぱいです」と正直な心情を吐露。数的優位を生かせなかった試合展開に唇を噛んだ。
柏やG大阪で、攻撃的なチームをつくってきた西野監督らしく「全員でチャンスを作るためのポゼッションやグループでのコンビネーションは出来ていますが、最後の一歩で決めきれていません」と課題をあげたが、ここまで20失点とリーグワースト3の守備にも問題を抱えている。リーグトップの得点力を誇る鹿島に対し、どういう試合運びを見せるのか注目だ。
ゴールデンウィークの連戦は、少なからず選手たちに疲労を蓄積させている。鹿島の前節・柏戦は13時キックオフ。炎天下のなかで行われた試合後、熱中症気味になってしまった選手もいるという。翌日まで体がほてり具合が悪かったそうだ。連戦となれば組織的なサッカーが難しく、いつもより個人の能力の高さが生きやすい状況となる。ドリブラーにとっては、能力を発揮する最良の条件が揃っているはずだ。
以上
2014.05.05 Reported by 田中滋
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