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【J1:第11節 川崎F vs 甲府】レポート:粘り強い甲府の守備に苦しめられるが、高い連動性を発揮して2点を畳み掛けた川崎Fが逃げ切りに成功。中村憲剛不在の中、勝点3をもぎ取る(14.05.04)

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怪我の影響でベンチからも外れた中村憲剛不在の中、川崎Fは甲府の粘り強い守備に苦しめられる。前線で待ち構える小林悠は、周りを甲府の選手に囲まれた状態に置かれる。川崎Fの攻撃の起点であるその小林に対し縦パスが入るが、ここにかなり厳し目にプレスが掛けられる状況があり、川崎Fは組み立てに苦しんだ。

その結果、縦にボールを運べない川崎Fは甲府のブロックの外側でパスを回すが、ここに対しても甲府は厳しいチェックを怠らず、川崎Fは自由にできる時間とスペースとを削り取られた形となる。思うように攻めの形を作れない川崎Fの前半について谷口彰悟は「相手も守備をしっかりやっていたので、前半特にじれずにやって行こうという感じではやっていました。チャンスはくると思っていたので、いつもどおりにやれたと思います」と振り返り、焦りはなかったという。初夏を思わせる26度という気温の中、相手を動かし続けることでチャンスはくる。そんな共通認識がチーム内には浸透していたようで、ボールを支配しながらも決定機を作れない前半についてはジェシも「ホームで勝たなければらないという試合でしたが、辛抱強くやれればゴールは取れると思っていました」と述べてチーム力に対する信頼感を口にしている。

ボール支配率で甲府を圧倒しながらも思うように形を作れない前半の川崎Fは、前半25分に大島僚太からの縦パスを甲府守備陣のギャップに入り込んだ大久保嘉人がフリーで受け、GKとの1対1に持ち込む場面を作り出す。決定的だったこのチャンスは、GKの股を抜こうとしたシュートが岡大生の足にあたり、得点にはならず。結局試合は、前半を0-0で折り返す事となる。

圧倒しながらも、決定機を作れなかった前半を踏まえた後半。立ち上がりの46分に大島がミドルシュートを放つと、48分にも森谷賢太郎が50mになろうかというドリブル突破を仕掛け、チームを鼓舞する。そんな中、試合が動いたのは後半53分の事。左サイドの谷口彰悟から小林に斜めのパスが入る場面から。この場面を小林は次のように振り返る。

「いつも彰悟からレナトへと、タテタテで(ボールが動き相手を)背負った状態で難しそうな場面が多かったので、斜めの動きをしたら、それを彰悟がよく見てくれていました」

つまり左サイドで窮屈そうにプレーしていた谷口からパスを引き出せるような予備動作を小林は行い、それに谷口が反応したのである。そして谷口に反応していたのは小林だけではなかった。「あの瞬間は、(谷口)彰悟からもらおうと動き出したら、彰悟が中(の小林)に出したので、それで切り替えて次にもらおうと思い、走ったら良いボールが来ました」と振り返る山本真希である。山本は当初、谷口からのパスをもらおうと動き出していた。しかし谷口が選んだのが小林と見るやすぐにその小林からのパスを受けられるような姿勢を取り、それが小林からのダイレクトパスを上手く引き出す事となる。

サッカーにおいては、いわゆる第三の動きという言い方で流動性が語られる事がある。その流動性について川崎Fは、風間八宏監督がボール保持者に対し、常にパスをもらえる位置に顔を出すよう指導を続けており、それがまさにこの得点に凝縮されていた形だ。

甲府守備陣を置き去りにし、GKに肉薄した山本はシュートではなくパスを選択したことについて聞かれ「中を見たら(森谷)賢太郎が居たので出すだけでした。確率が高い方を選ぶのは当たり前なので」と答えている。このパスを受けた森谷が落ち着いて決め、川崎Fが先制する。

均衡が破れた直後の58分。それまでレナトを封じ込めてきた松橋優がそのレナトに縦方向の突破を許す。悔しさの色をにじませながら対応してくれた松橋は「最初は体を当てて、バランスを崩させたかなと思ったんですが、その後が早かったです。そこもまだまだ自分がそのレベルに達していないので、しっかり練習したいです」と反省。試合を通してほぼ抑えこまれていたレナトではあったが、このチャンスを活かして左サイドをえぐると、最後はゴール正面に位置していた小林にラストパス。これを甲府守備陣がクリアミスしてしまいOGとなる。

「相手が触ってなければ自分が打てたと思います」と話すポジションを小林が取っていたこともあり、甲府の守備陣はこれを触らざるを得ず、その結果がOGとなった。ちなみに小林はこの場面を振り返り「自分のゴールになるかなと思って喜んでみましたが、ダメでした(笑)」と苦笑いしている。

ここから甲府がパワーを掛けて川崎Fゴールを狙い始めるが、連戦の川崎Fはムリをせずに要所要所を締めて甲府の攻撃をいなす。追いかける甲府は、57分のマルキーニョス・パラナ投入を皮切りに、61分にジウシーニョ、67分には盛田剛平を投入し川崎Fに食らいつくが、対する川崎Fはのらりくらりとこの追撃をかわす。

2点をリードしてからの試合運びについて大島は”コントロールしていた”のだと振り返り、「相手が前掛かりに来ているからと言って無理せずにやりました」と述べる。ただ、それにしても26度に達したこの日の試合は簡単なものではなかった。決勝ゴールを決めた森谷は、途中交代を余儀なくされたが、これは脱水症の症状が出たから。試合後のサポーターへの挨拶にも立てなかったほどだった。

考えてみると、前節の仙台戦は肌寒い気温11.9度の中での戦いだった。この甲府戦との気温差は、14.1度にも達しておりそれだけでも過酷な環境だった。中3日で行われたこの試合は、終始川崎Fが試合をコントロールしていた中ではあったが、難しい戦いだった。だからこそ中村憲剛という大黒柱を欠いて手にした勝利と、積み上げた勝点3の意味は非常に大きいといえる。

敗れた甲府の城福浩監督は「2−0というスコアはそのまま力の差なのか、ゲームの差なのかというのは、それは見た方が判断してくれればいいですが、我々からすると非常に悔しいゲームでした」と振り返る。つまり、甲府としてはかなりの水準で狙っていたゲームプラン通りに試合を進めていたようである。ただ「レナト選手をいかに抑えるのか、ということをやり続けて、2回だけ彼らしいプレーをさせてしまった。そこで2点入ってしまった」と2度の決定的なチャンスを決められた試合運びを悔やんだ。

川崎Fの攻撃の勘所を押さえこみ、ある程度の戦いができていた前半。そしてワンチャンスをものにされた2失点の場面。そこから川崎Fを押し込んだ終盤と、改善すべき点が明確なのは甲府にとって救いであろう。2巡目の戦いに繋げたいところだ。

以上

2014.05.04 Reported by 江藤高志
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