公式記録によると気温は25.3度。だが初夏を思わせる日射しによって、選手たちはそれ以上の暑さを感じたことだろう。しかもゴールデンウィーク中の連戦で、前節の試合からは中3日である。それでも序盤は、両チームの選手たちは暑さや疲労感じさせず、比較的思い通りに試合を運んでいく。ボールをつなぐ鹿島が立ち上がりの主導権を握れば、柏も両ウイングバックを使ったワイドな攻撃で押し返す。どちらのリズムとは言えない拮抗した展開が続いていった。
だがトニーニョ セレーゾ監督が「急激に気温が高くなったことで、頭がボーっとしてしまい集中力が欠けたり、あるいは何人か迷いが見受けられた」と語ったように、試合が進むにつれて徐々にミスが目立ち始める。
小笠原満男が土居聖真に付けようとした何でもない縦パスがミスになり、これを茨田陽生が奪う。カウンターに転じる柏は橋本和が田中順也へ斜めのクサビのパス。田中のコントロールが大きくなったところを昌子源が素早く寄せたに見えたが、球際の一瞬の攻防で田中が昌子に競り勝ち、昌子のマークが外れてフリーになった工藤壮人へパスを送る。「感覚的にニアじゃなくてファーサイドのネットを目掛けて打った」(工藤)というフワリとしたコントロールシュートがサイドネットに突き刺さり、前半アディショナルタイムに柏が先制点を挙げた。
鹿島としては悔やまれる失点だった。小笠原のミスパスに始まり、工藤のマークを外して飛び出した昌子も田中から奪い切れず、ディフェンスラインでの意思疎通も図れておらずに工藤への対応が遅れてしまい、ミスが重なった結果での失点となったからだ。
前半は両ウイングバックを使って効果的な攻めを見せていた柏も、後半になると暑さと疲労が影響したのか、攻撃に転じた時のつなぎに淡泊な部分が表れ始めていた。ただ、ボールを失った後の帰陣は早く、陣形が間延びせずにコンパクトさを保ちながらプレスを仕掛けることはできていたため、スペースを与えずに鹿島の攻撃を遮断する。
柏に守備陣形をセットされた鹿島は前線が思うようにボールを引き出せず、その結果ロングフィードに頼る攻撃が増えていった。ダヴィ、カイオが時折個人能力の高さを生かした突破を試みるも、頼みのダヴィは近藤直也にタイトなマーキングによって封じられ、カイオや後半から入った野沢拓也は鈴木大輔と渡部博文、そこに高山薫と橋本の両ウイングバックによる連動した守備を攻略できず、ロングボールを前線に蹴り込んで柏の3バックに圧力を掛けても、長身でヘディングの強い近藤、鈴木、渡部に跳ね返されてしまう。
柏は両ウイングバックが守備に追われたことで、「奪った後は自陣から良い形で敵陣へ展開ができなくて、すぐに攻撃を食らってしまう時間帯があった」(ネルシーニョ監督)というように、守勢にならざるを得ない展開になってしまったが、近藤や菅野孝憲を中心にした守備陣の集中力が非常に高く、「相手チームを抑え込んでニュートラルにできていた」とネルシーニョ監督も守備のパフォーマンスに関しては高い評価を与えた。
鹿島に決定機がなかったわけではない。61分、パスを受けにダヴィが中盤に降りたことで近藤を定位置から引き剥がし、そこでできたスペースを土居と柴崎岳がスピーディーに突いて柴崎が菅野と1対1になるこの試合最大のチャンスが訪れたが、左足シュートはタイミングが合わずに大きく枠から逸れてしまった。
鹿島が精彩を欠いたことは気温や連戦が影響した結果だが、柏も大谷秀和が自ら途中で交代を訴え、体力には自信を持つ田中が足をつらせ、太田も疲労で交代するなど、両チームにとって非常にタフな消耗戦となった。その中で少ないチャンスを確実にモノにした柏と、少ないチャンスを生かせなかった鹿島。裏を返せば、相手の一瞬の隙を見逃さなかった柏に対し、鹿島は集中力を保ち続けた相手の守備陣を最後まで攻略する手立てを見出せなかったと言い換えることができる。
勝点6の価値のある大一番を制した柏はこれで3連勝。しかも6試合もゴールから遠ざかっていた工藤の決勝弾で勝ち切ったことは多いに弾みがつく。“Wレアンドロ”の不在はチームを失速させるどころか、柏に活力と勢いを与えた。
以上
2014.05.04 Reported by 鈴木潤
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