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【J1:第11節 名古屋 vs C大阪】レポート:決めるべき選手が決めたC大阪が7試合ぶりのリーグ戦白星。名古屋は10人の相手を攻めきれず、連勝を逃す。(14.05.04)

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どのような形で攻撃を展開し、得点を奪うのか。誰が作り、誰が突破し、そして誰が決めるのか。攻撃における明確な「型」の有無が、勝敗を分ける最大の差となった。

名古屋の迷いは、ある意味で仕方がない部分もある。いまだ戻らない多くの負傷者の影響でチーム作りは遅々として進んでいない。「今は攻撃に高い要求はできない」と指揮官が嘆くほど、何かを構築するにはメンバーの頭数自体が足りない状況だ。それでも個々人のアイデアと、チームコンセプトである前で奪いに行く守備を掛け合わせ、ショートカウンターを狙うという意識はあった。幸いにも永井謙佑というカウンターの申し子と、クリエイティビティを持つ玉田圭司が調子を上げてきており、チームは試合開始から前に出る勇気は持てていた。だが、今節も大武峻が負傷欠場し、ディフェンスラインの顔ぶれがまたも入れ替え。ビルドアップから始まるセットオフェンスやセットプレーにおけるコミュニケーション不足は明らかで、その点においては立ち上がりから手探りで展開しているような場面が相次いだ。

逆に、立ち上がりから一切の迷いなく攻め切ったのがC大阪だ。ここ数試合で導入した3−4−3の新布陣もスムーズに機能し始め、この日は柿谷曜一朗もよりゴールに近い位置でプレー。南野拓実、フォルランとの連係もさることながら、積極的に前線へ顔を出す山口蛍や酒本憲幸、丸橋祐介のフォローを受けながら前線で存在感を発揮した。前節では下がってパスをさばく姿が目立ったが、ランコ ポポヴィッチ監督は正確な修正をチームに施してきた印象を受けた。攻撃の起点は前線の3人。そしてボール周辺へ人数をかけ、ダイレクトパスを多用し前への推進力を出していくという明確な意志は、誰の目にも明らかだった。

その違いは開始早々の4分に最高の形で現れた。右サイドの酒本からの速いパスをフォルランがダイレクトで縦に送る。抜け出した柿谷がもはや代名詞の柔らかいトラップでDFを出し抜くと、GK楢崎正剛のニアを冷静に打ち抜き先制点。11試合目にしての今季リーグ初得点は、あっさりと、しかし非常の質の高い動きと連係から生まれた。シンプルな攻撃であればあるほどポジショニングの正確さやパスの強弱、次の動き出しなど、つまりは互いの特徴を理解しているかどうかが重要な要素になる。ポポヴィッチ監督は「この日程では強化のためのトレーニングはできないが、コミュニケーションをとって連係を深めることはできている」と胸を張った。

出鼻をくじかれた名古屋だが、その後は盛り返した。立ち上がりから前へ出る守備はまずまず機能し、狙い目であるショートカウンターを仕掛ける場面も一度や二度ではなかった。17分には玉田のパスカットから永井、玉田とつなぎ最後は枝村匠馬がシュート。27分には小川佳純への縦パスが抜けたところに永井が走り込んで惜しいシュートを放つなど、スピード感のある攻撃では相手に引けは取っていなかった。気になったのはパスのズレ方だ。攻撃がスピードアップした際のパスが名古屋は後ろにズレるのに対し、C大阪は前にズレる。これが何を意味するかといえば、前述した攻撃の意図の明確さである。ゴールへ向かうのは一つのチャレンジであり、勢いを持って上がっていく仲間に合わせようと思えばパスは自ずと前に出る。その点で名古屋は17分の決定機にしても、永井から玉田へのリターンパスが後ろにずれて攻撃の勢いが一度削がれており、そこを巧みにフォローしたのが玉田の視野と枝村のランニングだった。ボールテクニックに優れる選手が多いC大阪は前にズレてもワンツーやドリブルに変換することが可能で、それが攻撃の推進力を生んでいた部分もあった。

前半は互いに数度の決定機を作るも両守備陣の粘りもあって0−1で折り返し。後半は退場者が出たことで、さらに展開が加速した。57分、自陣からの田口泰士の縦パスを受けた玉田がすぐさまスルーパスを小川へ送ると、ペナルティエリアに侵入したところでC大阪の山下達也が痛恨のファウル。山下は前半にすでにイエローカードをもらっており、このプレーで退場となった。名古屋は田中マルクス闘莉王がきっちりとPKを沈めて同点に。ここから一気に押し込む展開に持ち込んだが、そこでまたも立ちはだかったのが、攻撃の練度の差だった。10人になったC大阪は酒本、丸橋の両ウイングバックをサイドバックに下げ、4−4−1の布陣を形成。最前線のフォルランとサイドハーフに下がった柿谷と南野のキープ力を起点に反撃を目論んだが、これがむしろ高い効果を生んだ。フォルランは「内容はもしかしたら退場後の方が良かったかもしれない」と振り返ったが、10人になってからのC大阪は11人の時と変わらぬ推進力を維持し続けた。

逆に名古屋はセットしての攻撃が増え、攻めあぐねた。71分、73分と玉田が決定機を迎えるも、シュートは決まらず。ボールは支配し押し込む展開ではあったが、どこから崩し、どこでスピードアップするのかという意図がチーム全体で統一されていないため、突発的な数名の連係がはまった時だけチャンスが生まれる。だが迷いながらのボールキープは時に甘いパスを生み、そこをフォルランや山口に狙われカウンターを受けた。さらに特筆すべきはC大阪の両サイドバックで、10人で守備に追われる展開でも攻撃時には最前線にまで顔を出し、酒本から丸橋へのサイドチェンジでシュートに持ち込む場面すらあったほど。その流れは南野に代わり長谷川アーリアジャスールが、扇原貴宏に代わりゴイコ カチャルが投入され、よりソリッドなメンバーになった後により強調された。78分、左サイドでDF2人を抜いた丸橋が中央に折り返すと、巧みにマークを外していたフォルランが冷静に流し込んで決勝点。「マル(丸橋)の突破がカギだった。自分はなるべくGKから遠いところの枠に入れることを考えた」(フォルラン)。一人減ったことを感じさせない精力的なサイドバックと、その動きを無駄にしない攻守のマネージメント、そして決定力。C大阪の良さが詰まった得点に、豊田スタジアムでのJ1リーグ戦最多となる38,966人の大観衆は沸いた。

名古屋も2失点目の後に“禁じ手”にしていた闘莉王のパワープレーを繰り出すなど意地を見せたが、3つの決定機を防がれ万事休す。西野朗監督は「今はあまりにも決定力がないということを痛感しています」とコメントしたが、重要なのは決定力ではなく、「最後の一歩で決めきれていない。ならば、さらにチャンスを作らなければならない」という点だろう。決定力とチャンスの数。その両方が十分に備わっているのがもちろんベストだが、今の名古屋にとっては後者の充実の方が大切なように思える。決定機を増やすこととは、つまりは自分たちの攻撃の「型」を明確にすることに他ならないからだ。意図のない散漫な攻撃から生まれる決定機は少ない。そのような偶然に頼っていては未来もない。攻撃陣のリーダーとして気を吐いた玉田は「良い形でボールはつないでいるけど、ファイナルサードでのプレーを向上させていかないと。自分も含めて」と話したが、それが全てだ。守備陣の整備に追われる今だからこそ、攻撃の充実を。それは西野監督のポリシーにも通じることであるはずで、何よりこの日のC大阪が体現していたことだ。「10人になってもやることは変わらない」という柿谷の言葉が、名古屋にも欲しい。次節は古くからの鬼門で挑む2位・鹿島との一戦。守備に不安がある今こそ攻撃というフィロソフィーを前面に押し出し、攻めて勝利を求める時だ。

以上

2014.05.04 Reported by 今井雄一朗
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