第11節が終わった。何度、同じ結果を見ているだろうか。決して悪くはない試合の入り。狙いに近いボール回し。一進一退ながら、若干の優勢。ほのかに漂う得点の雰囲気。なのに、一瞬の隙から先に失点。メンタルダウンと焦りの生じ。ロングボールが増え、手数少ない単調な攻撃へと移行。結果、敗戦。この試合も、まさしく同じ展開だった。
ボールロストの多さと、「ボールを奪ってからダイレクトでいくのか、足元で落ち着かせていくのかというのがはっきりしない部分があった」(鈴木惇)という、前節vs札幌戦での反省から、そのバランス役として、これまでボランチとして起用されてきた鈴木と中後雅喜の2人が両ワイドに置かれた。その甲斐もあり、回す時は回す、裏を狙うところは狙う、というメリハリはしっかりとつけられており、効果的な攻撃はできていた。
また、「高地系治、太田圭輔の両サイドが中に絞ってくる傾向があるから」と、ボランチの田村直也はこれにきっちりと対応し、岐阜の意図する攻撃をさせなかった。ただ、「最初、国立の芝が、ボールが止まりやすいタイプの芝だったので、少し戸惑ってしまった部分があって、パスがつながらなかった」という田村の言葉通り、自分たちもビルドアップの途中でパスが弱めで届かなかったり、相手に引っかかってしまうシーンも少なからずあり、逆にカウンターからピンチを迎える場面もあった。互いになかなかシュートまで持って行けず、時間は過ぎていった。
そんな中、前半39分にビッグチャンスが訪れた。岐阜のFKからの攻撃を跳ね返すと、こぼれ球を拾った田村がドリブルで一気に攻め上がっていく。前を走っていた安在和樹が呼び込んだ足元に絶妙なスルーパスが通ったが、惜しくもオフサイドだった。良い形を1本作ったことで、リズムがつかめそうにさえ見えた。
しかし、まさかの展開が待っていた。安在のオフサイドをうけての岐阜GK川口能活からの間接FK。距離のある正確なボールが前線に飛ぶと、東京VのDFラインの裏を抜けた形となった。受けた太田圭輔は、思い切って飛び出したGK佐藤優也を交わし、ゴールラインぎりぎりで態勢を崩しながらも粘ってクロスを入れる。これが、ゴールの逆側にいた難波宏明への絶好球となり、得意の頭で東京Vゴールに押し込んだ。金鐘必、安在と懸命にゴールの中に入って食い止めようとしたが、「ラインを越えたのは見ました」(難波)。貴重な先制、そして決勝ゴールとなった。
後半、森勇介、前田直輝、永井秀樹を投入し、流れを変えようと試みたが、それぞれの特長を生かせぬまま、劇的な変化なく試合終了のホイッスルを聞くに至った。
スコアや内容を見て、『惜敗』と言えば、言えなくもない。だが、「あの一瞬だけ」「集中力の問題」「先に点が取れれば」「練習でできたことができれば」という、あまりに同じ敗戦の弁の繰り返しに、「惜しい」「そこさえ修正できれば」といった小さな話ではなく、実は、非常に根の深い、改善困難な大問題なのではないだろうかと思えてならない。
試合後、三浦泰年監督は、「何かを少し変えなければいけない」とのコメントを発している。「継続していく部分と貫いていく部分と、また、ちょっとしたことを意識のところで変えなければいけない部分はあるんじゃないか」連戦だが、何を、どう変えて見せてくれるのか。次節の讃岐戦は、大注目だ。
勝ったものの、岐阜のラモス瑠偉監督は穏やかではなかった。会見では、「試合内容はひどすぎるし、けが人が多かったし、自分のゲームプランが崩れたし。やろうとしたことができなかったことが残念でたまりません」「こんな素敵な芝生の上で、こんなくだらないミスで良いサッカーができなかったら、J2の選手は土のグラウンドでサッカーをやらせればいいよ。申し訳ない。私はそう思っています」と、ラモス節が大炸裂した。
特徴ともいえる高地、太田の中盤でのボール保持がままならず、なかなか難波、ナザリトの2トップへ有効はボールが入らなかったため、シュートシーンはほとんど作れなかった。それでも、高地は語る。「今日は、全くと言っていいほど自分たちのサッカーができませんでした。ただ、内容が悪くても勝点3を拾えることは、シーズンを通してもすごく大事なことです。今日は、そういう試合でした」この言葉こそ、岐阜と東京Vの、現在の状況の差が表れているように思う。内容が悪くても勝点3を奪える岐阜と、内容が悪くなくても勝点を拾えていない東京V。結果がすべてを物語っていたのではないだろうか。
この試合は現在の国立競技場最後のゲームということで、1万2千人超の観客がかけつけていた。「その中でこのような結果となってしまって、本当に申し訳ないという気持ちしかありません」と、神妙な面持ちで語った田村主将にとっては、国立の思い出の最後は苦いものとなってしまった。
一方で、人一倍感慨深く語ったのがGK川口だった。高校サッカー、横浜マリノス、日本代表・・・話し始めたら枚挙にいとまがないほど数々の思い出を持つが、「良い思いも悪い思いもしましたが、国立には良い思い出しかありません」と、締めた。そして、最後に、その対戦相手がヴェルディだったことについて語ってくれた。「久しぶりに対戦して、やっぱり、相変わらずボールを大事にするサッカーは受け継がれているなぁと思いました。サポーターを見ても、『あぁ、ヴェルディだなぁ』と感じながら見ていました。マリノスでプレーしていた僕にとっては、ヴェルディは偉大なチームであり、子供の頃からの憧れのチームです。その思いは今でも変わりません」
読売クラブ時代から、ヴェルディを対戦相手として見続けてきたライバル守護神に、「当時から受け継がれるスタイル」を感じさせることができたことこそが、東京Vにとっては勇気となり、国立ラストマッチ最高の収穫となってのではないだろうか。
以上
2014.05.04 Reported by 上岡真里江
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