どちらも今季は堅い守備を誇る両チームだが、試合は序盤から予想以上に攻め合いとなった。風上に立ったホームの清水が、3分に吉田豊、4分に六平光成がミドルシュートを放つなど、積極的に先制点を取りにいったのは当然だが、逆に守備の面でいつもより隙があったことも否めない。そのため鳥栖もカウンターなどで反撃に出て、「相手のDFはラインが揃っていない場面が多かった」(水沼宏太)ことと、向かい風で止まるボールを生かして裏への飛び出しに何度か成功し、チャンスにつなげた。
清水としては、鳥栖が1トップの豊田陽平に向けたロングボールとそのセカンドボールからチャンスを作る場面が多いことを相当警戒しており、中盤を今までの2ボランチから村松大輔の1ボランチに変えて、村松にセカンドボールを拾う役割を与えていた。その対策は狙い通り機能していたものの、水沼に指摘された通り裏への飛び出しにはうまく対応できていたとは言えない。そのため、12分に豊田、28分には池田圭にゴール前に抜け出されて決定機を作られたが、ここはセンターバックのカルフィン・ヨン ア ピンやGK櫛引政敏の身体を張った守備でなんとかしのぐ。
その一方で、前節までのボランチ、六平光成と竹内涼がひとつ高い位置をとったことで攻撃の厚みは増し、とくに前半は六平のパス出しが冴えて、良い形からゴール前にクロスを供給する場面も目立った。ただ、六平も竹内もシャドーストライカーのタイプではないため、ゴール前に入る人数は不足がちになり、鳥栖の守備陣としてもノヴァコヴィッチだけをしっかり抑えれば良いという状況になっていたのは、中盤を逆三角形にしたことのマイナス面でもある。それでも、31分と33分にノヴァコヴィッチがゴール前で決定的なヘッドを放ったのは、さすがというところ。そうした複数の要素が絡み合って、前半は観ていて楽しい攻撃の応酬が繰り広げられた。
そんな中で迎えた前半43分、右CKの二次攻撃から鳥栖がバイタルエリアでパスをつなぎ、最後は藤田直之が思い切りよくミドルシュート。これが本人も驚くほどのジャストミートになり、矢のようなボールがゴール右に突き刺さった。年末のスーパーゴール集にも間違いなく選ばれるであろう弾丸シュートに関しては藤田を称えるしかないが、セットプレーで相手に二次攻撃、三次攻撃を許してしまうのは、清水の大きな課題になっている部分。結果的に、前節の鹿島戦に続いてそのパターンで決勝点を奪われてしまった。
後半に入ると、リードした鳥栖の守備意識がより高くなり、19分には池田に代えて谷口博之を投入して中盤を3ボランチに変更。これで清水がボールを保持する時間はさらに増えたが、ゴール前をがっちりと固められ、チャンスはなかなか作れなくなっていった。高木俊幸(後半11分〜)、村田和哉(後半26分〜)と攻撃のカードを切った清水が何本クロスを入れても、鳥栖の守備陣が集中して粘り強く対応。ノヴァコヴィッチと身長差がある選手が競り合っても、身体をしっかりと寄せて自由を与えなかった。そしてゴールマウスに近いボールは守護神・林彰洋がきっちりと飛び出してキャッチしてしまう。
鳥栖陣内でのセットプレーもかなり多かったが、鳥栖の選手1人1人が高い集中力を発揮してチャンスらしいチャンスを与えず、時計の針だけがジリジリと進んでいった。後半37分にはDFの廣井友信を前線に入れて清水がパワープレーに出たが、これもやや中途半端な攻めになってしまい、なかなか良い形を作れない。それでも45分に村田の右クロスからようやくノヴァコヴィッチが決定的なヘディングシュートを放ったが、後半最大のチャンスもゴール上に外してしまい、無得点のままタイムアップ。
清水は1万7千人以上が応援に駆けつけたホームゲームで、ゴールも“勝ちロコ”も見せることができず、本当に痛い2連敗。鳥栖は、今季6度目の完封で清水戦でようやく初勝利を挙げ、トップ3に返り咲いた。
「これだけきつい日程の中で、どちらが集中力を生み出すかというところで勝敗は決してくる。その集中力を持つことと運動量という分で、今日は相手を圧倒できたと思う」と試合後に語ったのは、鳥栖の尹晶煥監督。
それに対して清水のゴトビ監督は、ハーフタイムに「相手を倒す強い意志、献身さが足りないし、ボールへの反応が遅い! 走れない奴はピッチから去れ!!」と選手たちに強い檄を飛ばしていた。8日間で3試合目、気温は公式記録では23.4度だが、日差しが照りつけるピッチ上はもっと暑かったはずだ。そうした厳しい条件の中、どちらが勝つためのエネルギーを出し切れたのか。それが大きく明暗を分けたことは、スタジアムで観戦していた人ならより生々しく実感できたのではないだろうか。
以上
2014.05.04 Reported by 前島芳雄
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off