愛媛の石丸清隆監督が「松本さんはゲームの入りは眠っていた」と指摘し、松本の反町康治監督が「手放しで喜べないゲームだった。集中力に欠け、残念ながら前節とあまり変わらない前半だった」と苦笑する。ホームの松本にとっては良い面と悪い面が顔を覗かせた試合だった。良い面とはサビアの復帰で、悪い面は監督の言葉通りの煮え切らない前半であった。

中３日という短いインターバルのなかで迎えた今節。前半に主導権を掴んだのは愛媛だった。後方からのフィードがサビアの頭上を通り過ぎるばかりで攻め手の少ない松本に対し、愛媛のスタイルは不変。特にシャドーの表原玄太と堀米勇輝が躍動。ボールを持てば果敢にドリブルで仕掛け、好機を創造する。松本守備陣はホルダーへの寄せが甘く、愛媛が試合を掌握。ゴールを奪うのは『いつか』という展開となった。

そのような状況で、先制に成功したのは松本なのだからサッカーは分からない。１９分、ロングボールに飛び出し、角度のない位置から放った船山貴之のシュートのこぼれ球にきっちり反応したのは「船山がシュートを選択すると分かったのでポジションを詰めたら、自分のところにボールが転がってきた」とその瞬間を振り返るサビア。巧みなポジショニングとゴールへの嗅覚。実に「らしい」ゴールで場内は沸いた。
しかし愛媛も主導権を逃さない。それまでは攻撃の形を作りながらもフィニッシュの精度に欠けていたが、２８分にバイタルのスペースに抜け出した堀米が持ち込みペナルティエリア外から左足を振りぬくと、これがゴールネットを揺らした。またも松本は先制直後の呆気ない失点で追いつかれてしまった。

１−１で折り返した後半、松本はようやく目が覚める。チーム全体の集中力が高まり、慌てふためく場面は明らかに減った。愛媛の攻勢をいなしながらチャンスをうかがうと、５６分に仕掛けたサビアがエリア内で相手ディフェンダーに倒され、主審がＰＫスポットを指した。船山のキックを一度は児玉剛がキャッチするが、副審の判定により蹴り直し。納得いかない愛媛選手が猛然と抗議するが判定が覆ることはない。２度目のキックを今度は船山もきっちり決め、松本が勝ち越しに成功。その後はお互いにチームの活性化を意図し、松本は塩沢勝吾、愛媛は河原和寿と負傷明けの西田剛を投入する攻撃的な交代策を見せるが、互いにゴールが遠い。結局そのまま試合は２−１のまま動くことなく終了。松本が連敗を阻止すると同時に、ホーム２連勝を飾った。

内容では敗れた松本だが、戦前から反町康治監督は「ボール保持率は、３５：６５くらいになるんじゃないか」と予想していた。ボールを持たれることは予想の範疇。そのなかでどれだけ相手の形にさせないかという試合になった。前半は緩慢な守備から失点を許したが、後半は運動量で上回り、愛媛のシュートを１本に抑え込んだ。だからこそ、気になるのは前半の戦いぶりだ。田中隼磨が試合後に「小さいところをもっと詰めていかないと、Ｊ１昇格は難しい」と口にするが、勝ったからこそ試合・時間帯ごとに見られる波の大きさについての修正が急務となりそうだ。
敗れた愛媛だが、今日の愛媛のベンチメンバーに３０代は村上佑介一人。メンバー１８人の平均年齢は２３．３６歳。若い選手が躍動するなか、表原は既に主力としての雰囲気を漂わせていた。悪い意味での若さもあったが、齋藤学、有田光希を覚醒させた実績を持つ愛媛に新たな才能の登場を感じさせた。

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2014.05.04 Reported by 多岐太宿