第10節の北九州との間で行われた福岡ダービーの敗戦で、今シーズンの「バトル オブ 九州」は３連敗。しかし、敗れた結果を悔んでいるだけでは何も始まらない。「意地と誇り」を取り戻すためには、まずは今シーズン４度目の「バトル オブ 九州」となる大分戦を制することがリスタートの第一歩だ。城後寿は次のように話す。
「下を向いていても仕方がない。今は大分戦のことだけを考えている。相手のサポーターをホームで喜ばせるようなことは絶対にしてはいけないし、うちのサポーターにそういう姿を見せてはいけない」

そして、大分との「バトル オブ 九州」の歴史を振り返る時、やはり、この試合には絶対に勝たなければいけない理由がある。初めて大分との間で九州ダービーを戦ったのは2002シーズンの開幕戦。この試合で敗れた福岡は、この後、大分に勝てない試合が続く。初めて勝利を手にしたのは対戦成績２分４敗で迎えた2010シーズン第17節。しかし、その後は再び勝てない対戦が続き、通算対戦成績は１勝４分５敗。同じ九州内にホームタウンを置くチームに対して、屈辱的ともいえる成績に甘んじているわけにはいかない。クラブと、クラブに関わるすべての人たちのために、福岡は勝点３だけを求めて大分との「バトル オブ 九州」に臨む。

迎える大分は、ここまで４勝３分３敗で福岡に並ぶ勝点15。得失点差により11位につけている。しかし、「大分は昨シーズンまでＪ１で戦っていたチーム。メンバーもそれほど変わっておらず、我々よりも経験値が高い。いいチームだと言える」とマリヤン プシュニク監督が話す通り、非常にバランスが取れている印象がある。現在３位につける長崎と戦った前節の「バトル オブ 九州」ではスコアレスで引き分けたが、その内容は、互いの高い集中力を発揮した緊張感あふれる好ゲーム。後半は押し込まれるシーンもあったが、最後までチームのバランスを崩すことはなかった。
ゲームをコントロールするのは末吉隼也と伊藤大介のダブルボランチ。両サイドには為田大貴、松本怜というスピードが武器のアタッカーが構え、トップ下を務める風間宏矢がゲームメイクを務める。10試合を戦って複数得点を上げたのは第９節富山戦だけという攻撃面に課題を残すが、それは数字上のこと。甘く見ることはできない。

さて、そんな大分との対戦でのポイントとなるのは、ただひとつ。福岡が自分たちのサッカーを表現できるかどうかの一点にある。自分たちのリズムでサッカーを展開するときは、アグレッシブさと強さを発揮する福岡だが、自分たちのリズムを刻めないと、まるで別のチームになってしまうのが、ここまでの福岡。思うようにならない時、あるいは相手に押し込まれた時に、自分たちのスタイルを表現するために何をしなければいけないのかが明確にできていない。それは目の前の相手に勝つためだけではなく、自分たちが、もうひとつ上のレベルに成長するために乗り越えなければいけない壁。それを乗り越えた先に、「バトル オブ 九州」での勝利があり、新しい自分たちが見えてくる。

すべてが思い通りに行くわけではないだろう。試行錯誤の中でリーグ戦を戦っているチームは、過去の試合と同様に苦しい時間帯に追い込まれることもあるだろう。場合によっては、それがチームに対するプレッシャーとして襲いかかってくるかも知れない。しかし、プシュニク監督は話す。
「プレッシャーがあるか、ないかという問題は大したことではない。問題の本質はプレッシャーをどのように捉えるかという点にある。意識、態度の問題だ」。
今の自分たちを乗り越える絶好のチャンス。そう捉えることで開ける道もある。

そして、ホームの利を最大限に生かして戦いたい。サッカーの勝負はチームの力だけでは決まらない。フロント、職員、ファン、サポーターをはじめ、チームに関わるすべての力の和が勝負を決する力になる。それがダービーマッチなら、なおさらのことだ。大分は、前節の長崎戦には約2,000人のサポーターが足を運んだと言われている。もちろん、福岡にも多くの大分サポーターが訪れることだろう。だが、ホームゲームでアウェイの力に負けるわけにはいかない。あらゆる力を結集して、レベルファイブスタジアムが福岡のホームであることを示したい。その時、勝利の女神は福岡に微笑みかけてくれるはずだ。

以上

2014.05.02 Reported by 中倉一志