苦境に最も効く薬は勝利である。たとえ内容が乏しくとも、勝利を得れば流れが変わる。第9節・鳥栖戦のショッキングな敗戦から中2日で臨んだF東京との一戦を無失点でものにした名古屋は、久々の勝点3を糧に少しだけ状況を好転させ、ゴールデンウィークの折り返し点を迎えた。相手は昨季リーグ戦で1分1敗という成績以上に悪いイメージがつきまとうC大阪だが、臆することなく挑むための最低限の条件を揃えることはできた。
最低限の条件とは守備面の整備だ。前節では大武峻が戻ってきたことで、本職のセンターバック不足に悩むディフェンスラインが一定の落ち着きを見せた。守備陣を束ねるキャプテンと守護神も大武の帰還を歓迎する。
「大武も帰ってきて、(矢野)貴章もサイドバックに慣れてきて、そういう些細な部分だけどチームに大きなものを与えてくれる。とにかく今は失点を減らすことが大事」(闘莉王)
「大武が戻ってきたのは大きい。やっぱり専門の選手がいないと難しい」(楢崎)
当の大武はF東京戦の前々日に宮崎での大学リーグの試合を戦い、日付が変わる頃にチームに合流。そのまま東京遠征に同行し、フル出場を果たす偉丈夫ぶりを見せつけた。右ふくらはぎの肉離れはいまだ完治には至っていないが、本人は平気な顔で次節の出場をアピールする。
「今回休みましたけど、本当はできたんです。ただ、ドクターに止められたので。普段からあまり痛いって言いたくないんですよね。多少の捻挫や肉離れなら、試合になれば痛みも忘れるので」
攻撃が信条の西野朗監督も今は守備にその力の多くを注いでいる状況だけに、楢崎正剛、田中マルクス闘莉王、大武と今季のレギュラーがゴール前に揃うことは朗報だ。鳥栖戦後には結果と自分のプレーの出来に「泣きそう」とこぼした楢崎は、彼らしい言い回しで状況の回復ぶりを表現する。
「F東京戦だって自分はそんなに仕事はしてないよ。自分はたまたま。みんながちゃんと仕事をすれば、(プレーも)みんなちゃんとなるんです。そりゃ自分の力でチームを救えればいいけど、全員で働いて、ああいう試合ができたことがよかった」
チームの不振を自分の責任と背負いこんでしまう男だけに、連敗中の悲壮感漂う表情は痛々しいほどだった。だが、自らのパフォーマンスを発揮できるだけの“環境”が整った今節は、前節同様の良い仕事をしてくれそうだ。
その名古屋の選手たちが警戒するC大阪だが、国内のリーグ戦では苦戦が続いている。AFCチャンピオンズリーグでは柿谷曜一朗がここまで4得点を記録しグループステージ突破を決めているが、リーグ戦では11位に低迷し、柿谷もいまだ無得点。フォルランこそACLで2得点、リーグ戦でも4得点と着実にその実力を発揮してきているものの、エースとチームは出遅れた感が否めない。ここ数試合でポポヴィッチ監督は3−4−3の新布陣へのトライも開始しているが、自慢の攻撃力が存分に発揮できているとも言い難い状態だ。サイド攻撃は活発であり、フォルランへのボールの収まりも悪くないが、柿谷はいまだそのバランスの中で動きを制限されている印象で、その点に関しては名古屋の永井謙佑も「ゲームを作る方に回っている。1トップのほうがいいのでは」と話していた。確かに昨季のホーム&アウェイの両方で名古屋が喫した2つの素晴らしいゴールは、背番号8が点取り屋に徹したからこそ生まれたものだった。その難敵との対戦を楽しみにしているのが大武だ。
「柿谷選手はリーグ戦ノーゴールなので、名古屋戦で初ゴールは決められたくないですね(笑)。去年のグランパス戦でのすごいトラップの印象が強いんです。あれは自分でもちょっと無理。ゴール前で守る時間が増えるとそういう場面も増えてくるので、ラインを高くして、どれだけゴール前に近づかせないかが1つのポイント。裏のスペースも怖いですけど、バランスを見て、下げないようにはしたいです」
試合はC大阪が3バックを継続するか否かによっても変わってくるが、いずれにしても攻撃型の指揮官を擁するチームの対決に、ガチガチに守り合う展開は考えにくい。ただし名古屋はいまだ負傷者の大半が戻ってきておらず、少ないオプションの中で実効的なものをチョイスするしかない点は改善されていない。だからこそ西野監督は、前節で見えた新たな連係に希望を見出す。
「今は攻撃にあまり高い要求はできない。シンプルにやるだけで、そんなオプションを構築していく段階ではないです。ただベースは縦に推進力を出していくこと。パスにしても動きにしても、前節のようなはっきりとしたショートカウンターを狙えればいい。全員で集中したディフェンスをした中でクイックに攻撃を仕掛けていくことを、ベースに置いてやる必要はあると思いますね。玉田と永井は2トップの関係はないけども、縦の関係で玉田が中盤に降りてタメができて、永井がスペースを見つけて攻略していくことはできる」
そうなれば玉田圭司や田口泰士など、ゲームを作り前線にパスを供給する選手たちの活躍は必須事項。山口蛍や扇原貴宏らC大阪が誇るハイレベルな中盤との主導権争いは必見である。
何より忘れてはならないのが、今季の豊田スタジアム開催試合で、名古屋は今のところ3戦全敗ということ。多くの来場者が見込まれるGW真っ只中のホームゲームであるだけでなく、これ以上ホームのサポーターに負けてうなだれる姿を見せるわけにはいかない。
「セレッソは攻撃が好きな選手がいっぱいいるから、逆にカウンターが効くかもしれないし、面白い試合になるかなと。それに今季、豊田スタジアムで勝てていないのが気になる」(小川佳純)
「なかなか豊田スタジアムで勝てていないし、ホームで良い形で試合ができていない。楽しい試合をできればと思う」(闘莉王)
選手の思いは1つ。ホーム豊田スタジアムでの今季初勝利で、再浮上の流れを加速させることだ。シンプルにできることの最大限を尽くし、まずはC大阪をねじ伏せる。
以上
2014.05.01 Reported by 今井雄一朗
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